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離婚の慰謝料を不倫相手に請求できるのか

不倫(不貞)の慰謝料を請求したい……
不倫(不貞)の慰謝料を請求されている……
不倫をする夫・妻と離婚したい……

多治見さかえ法律事務所は、多治見・土岐・瑞浪・恵那・中津川、可児・御嵩・美濃加茂にお住まいの方の、不倫(不貞)の慰謝料に関するご相談を受け付けております。

今回は、不貞の慰謝料・離婚の慰謝料についてまとめました。

以下、

夫婦の一方が配偶者以外の第三者と肉体関係を持つこと=不貞行為
そのような肉体関係を持った配偶者以外の第三者=不貞相手

と定義した上で、解説していきます。

[1]不貞相手に請求できる慰謝料はどういうものか

最高裁は、不貞相手に対して、不貞行為そのものを理由とする慰謝料を請求できるとしています(最高裁昭和54年3月30日判決など)。

不貞相手は、自身の不貞行為により、他の配偶者の婚姻共同生活上の利益を侵害して、他の配偶者に精神的苦痛を与えた以上、その損害を賠償すべきと考えられているからです。

例えば、夫が妻以外の女性と不貞行為をした場合、不貞相手である女性は、妻を持つ夫との不貞行為により、妻の婚姻共同生活上の利益を侵害しており、妻に精神的苦痛を与えた以上、その損害を賠償すべきと考えられているのです。

さらに、不貞行為を理由に夫婦が離婚に至った場合、不貞行為をされてしまい離婚を余儀なくされた配偶者は、離婚の原因となった不貞行為そのものについて、不貞相手に慰謝料を求めることができます。

不貞行為そのものを理由として慰謝料の支払いを求める権利は、不法行為に基づく損害賠償請求権の一種であり、消滅時効は、夫婦の一方が他方の不貞行為を知った時から3年です(民法724条1号。最高裁平成6年1月20日判決)。

まとめ
不貞相手に対しては、不貞行為そのものを理由とする慰謝料を請求できる。

[2]離婚の慰謝料にはどのようなものがあるのか

離婚の慰謝料には、2種類の慰謝料があると考えられています。

1つは、離婚原因となった行為そのものによる精神的苦痛に対する慰謝料であり、離婚原因慰謝料と呼ばれています。

もう1つは、離婚という結果そのものから生じる精神的苦痛に対する慰謝料であり、離婚自体慰謝料(離婚慰謝料)と呼ばれています。

離婚原因慰謝料
離婚原因となった行為そのものによる精神的苦痛に対する慰謝料
離婚自体慰謝料(離婚慰謝料)
離婚という結果そのものから生じる精神的苦痛に対する慰謝料

例えば、妻が夫以外の男と不貞行為を行い、それが原因で離婚に至った場合、夫は理論上、妻に対して、2つの慰謝料を請求することができます。

1つは、夫以外の男と不貞行為を行ったことに対する慰謝料。離婚原因となった不貞行為そのものによる精神的苦痛に対するものであり、離婚原因慰謝料となります。

そして、もう1つが、離婚という結果に対する慰謝料、離婚自体慰謝料となります。

京大の潮見佳男教授は、離婚自体慰謝料の侵害される権利・利益は、婚姻共同生活を維持するか、婚姻共同生活を解消するかについての他方配偶者の決定権(自己決定権)であると指摘しています(潮見佳男「判例評釈 不貞相手である第三者に対する離婚慰謝料の請求の可否」『家庭の法と裁判第24号』P.114~)。

最高裁は、離婚原因慰謝料の消滅時効は夫婦の一方が他方の不貞行為を知った時から3年としていますが(最高裁平成6年1月20日判決)、離婚自体慰謝料の消滅時効は離婚時から3年としています(最高裁昭和46年7月23日判決)。

まとめ
離婚の慰謝料には、
А 離婚原因慰謝料
B 離婚自体慰謝料(離婚慰謝料)
がある。

[3]不貞行為が原因で離婚となった場合に、不貞相手に請求できる離婚の慰謝料は?

それでは、妻が夫以外の男と不貞行為を行い、それが原因で離婚に至った場合、夫は妻に対してだけではなく、不貞相手に対して、離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料、どちらも請求することができないのでしょうか。

さきほど、[1]で述べたように、不貞行為を理由に夫婦が離婚に至った場合、不貞行為をされてしまい離婚を余儀なくされた配偶者は、離婚の原因となった不貞行為そのものについて、不貞相手に慰謝料を求めることができます。

つまり、離婚原因が不貞行為であった場合は、離婚原因慰謝料を不貞相手にも請求できるのです。

それでは、離婚自体慰謝料も不貞相手に請求できるのでしょうか。

最高裁は、昨年、特段の事情がない限り、不貞相手に対して離婚慰謝料(離婚自体慰謝料)を請求することはできないことを明確にしました(最高裁平成31年2月19日判決)。

離婚原因が不貞行為であった場合、不貞相手に対しては、離婚原因慰謝料は請求できるが、離婚自体慰謝料(離婚慰謝料)は特段の事情がない限り請求できないということになります。

まとめ
ア 離婚原因慰謝料は、不貞相手に請求できる
イ 離婚自体慰謝料(離婚慰謝料)は、特段の事情がない限り、不貞相手に請求できない

[4]不貞行為が原因で夫婦が離婚してしまった場合、不貞行為そのものに対する慰謝料の額はどうなるのか

これまで、不貞行為により離婚に至った場合、不貞行為そのものに対する慰謝料の額は大きくなる傾向にありました。

最高裁の平成31年2月19日判決は、特段の事情がない限り、不貞相手に対して離婚慰謝料(離婚自体慰謝料)を請求することはできないことを明確にしましたが、これが不貞行為そのものに対する慰謝料の額の算定に何か影響を及ぼすのでしょうか。

答えは、NOです。この判例は、不貞慰謝料に関するこれまでの判例の考え方を変更するものではありません。

大塚正之弁護士の研究では、裁判で判決に至った場合の平均認容額は、婚姻共同生活の破壊の程度に応じて慰謝料額が増加するとされ、「破壊度が低い場合は100万円程度」である一方、「離婚に至る程度に破壊した場合は170万円程度」というように、夫婦が離婚に至る程度に婚姻共同生活の破壊の程度が大きい場合、慰謝料額も大きくなる傾向があると指摘されています(大塚正之「不貞行為車両に関する裁判例の分析(5・完)」『家庭の法と裁判第15号』P.51)。

平成31年2月19日の最高裁判決に関しては、最高裁の調査官によると思われる匿名の解説が出ています。

その中では、

「単純に、損害として離婚自体慰謝料を上乗せすることは許されないものと考えられる」が、「不貞行為の結果、婚姻関係が破綻し、離婚するに至った場合には、不貞慰謝料の被侵害利益である『夫又は妻としての権利』という人格的利益に対する侵害も大きかったものと評価することができるであろう」とし、「慰謝料の増額要素として考慮すること自体は許されるものと解される」

との言及があります(『家庭の法と裁判第22号』P.90、『判例タイムズ』No.1461 P.30~)。

したがって、これまで同様、不貞行為により離婚に至った場合、不貞行為そのものに対する慰謝料の額は大きくなると言わざるを得ません。

まとめ
不貞行為により離婚に至った場合、
これまで同様、慰謝料の額は大きくなる

以上、不貞の慰謝料・離婚の慰謝料についてまとめました。

多治見さかえ法律事務所は、多治見・土岐・瑞浪・恵那・中津川、可児・御嵩・美濃加茂にお住まいの方の、不倫(不貞)の慰謝料に関するご相談を受け付けております。

不貞の慰謝料に関する不安が解消できれば幸いです。


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