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書物紹介
久しぶりにnoteをアップしてみるが、最近、休日になると図書館に行くこともあって、今日はある書物を紹介したい。
昆虫学者、ジャスティン•O•シュミット氏の『蜂と蟻に刺されてみた』という本だ。
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長い間わたしは、タランチュラは、「蟲界」(ムシ界。昆虫ではない)最強だと思っていた。
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動物界で言えば、その頂点にいるライオン。同レベルの虎がいたとしても、上に位置する者がいない存在。ゲームで言えば、比類なきボスキャラ。
しかし、事実はそうではなかった。
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オオベッコウバチ(ドクグモオオカリバチ)は、タランチュラを専門に狩ることで知られる南北米大陸に生息する世界最大のハチである。
このハチはタランチュラを射止めた後、卵を産み付け、孵化した幼虫のエサにしてしまう。つまり、タランチュラより完全に上位の昆虫である。では、どのように殺してしまうのか。答えは、その「最凶」の針にある。
ジャスティン・シュミットは、刺されると痛い昆虫の、痛みの度合いを示す「シュミット指数」を作り上げた。
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世界最大のハチ、オオベッコウバチについて、シュミット氏はこう記述している。「目がくらむほど凄まじい電気的な痛み。泡風呂に入浴中、通電しているヘアドライヤーを浴槽に投げ込まれたみたいだ」。シュミット指数4.0。
また、主にアマゾンに生息しているサシハリアリについてのシュミットの表現がコレだ。「かかとに三寸釘が刺さったまま燃え盛る炭の上を歩いているような」シュミット指数4.0+。
(※筆者はこのサシハリアリの毒針を地球上で最も痛みを与える針と結論付けている)
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これら表現が面白く、ハマってしまう。人が痛みの度合いを表現するには、「数値」ではなく、ほかの何かに喩えるしかない。読んでいくうちに、なんとも文学的だと思えてくる。
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「海神ポセイドンの三叉槍が胸に打ち込まれたような」…もはや詩以外の何物でもない。
しかし、自身を実験台にするのは危険であり、研究者として一番やっちゃいけないことのようにも思える。とはいえ、痛みの度合いをその種ごとに記録として残すには、自分が刺されるよりほかに方法がない。
誰にもマネ出来ない、いや、マネしてはいけない研究方法を行うという点で、この人は最低にして最高の学者だと思う。