(小説)笈の花かご #36 #37
14章 万葉の世界へようこそ(2)
娘からの「多くの人が混同しやすい歴史上の人物」という記事を読み、疑いながら、ここでようやく、イチョウは、電子辞書の逆引きで「オオキミ」と打ち、ついに、2人を見比べることに成功、納得した。
更なる問題はこれまでに、半端な万葉の知識を話して回った事である。
(しまった! 正確でない話だったとは、これはまずい)
イチョウは反省し、訂正して回るはめになった。
ところが、である。2度目のその話題となると、誰しも
「え、それがどしたん?」
とりつく島もない反応。
その上、
「額田王? 誰それ?」
「ヌカダかヌカタか、ガタガタ言うな!」
という強者まで現れる始末。
「百人一首など興味ない」
「夢見たいな話、付き合い切れんわ」
更には
「そんなんを聞く暇ない」
とピシャリ。イチョウにとって散々な次第となった。
(はなから、誰も万葉時代の話など、チャンと聞いてなかったの? 人気者のヨシキタPTから、愛のサインを貰ったと舞い上がり、袖振る歌をしゃべりまくった。今思うと、聞かせられた人は、迷惑千万やったろぅ、赤っ恥や……目も当てられん。しかし悲しいような。助かったような)
半端な知識をひけらかし、失敗と大後悔のイチョウ。しかし実際には誰もかれも大して気にしていなかった。心配は体力を浪費しただけで無用な物だった。
(他人にしてみたら、意外と自分が思ってるよりどうでもいいって事は、よくある事じゃない、イチョウ。体操*の省略に文句を言う人はなし、場合によって省略するもよしとホワタさんに伝えた私なのに自分事ではやはり懸命になってしまう)
長年の思い込みへの新発見にやや興奮冷めやらぬイチョウの境地に反し、どうも、身近な人物とはそれを共有し楽しむ事はできずじまいで終わった。
(時代は移り、万葉の歌をめでる人は少なくなった)
今回の事で少しだけ、イチョウは再び学び直し、万葉の歌がいかにロマンがあり楽しいか伝えて行きたいと考えるようになった。
(小説)笈の花かご #36 14章 万葉の世界へようこそ(2)をお読みいただきましてありがとうございました。
引き続き、15章 雲隠れの巻 をこちらへ掲載いたします。
この章からスイデンが(笈の花かご)から消えます。
(小説)笈の花かご #37
15章 雲隠れの巻
*この章には本文がありません。
(小説)笈の花かご #37 15章 雲隠れ をお読みいただきましてありがとうございました。
次の章は 4階食堂のイチョウのテーブルメイトの話。個性豊かな4人組が誕生します。モクレン館は笑顔がたえません。
→(小説)笈の花かご #38
16章 モクレン館食堂の席替え へ続く
2023年10月21日#1 連載開始
著:田嶋 静 Tajima Shizuka
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