歌舞伎町で知らない人にもらった《ラムネ》の話
知らない人からもらったものを食べてはいけません。
小さい頃、近所で飴玉を配るおばあさんが出没した時期があり、学校からはそのように指導を受けました。その時は「飴玉くらい大丈夫っしょ」と思っていましたが、その恐ろしさを肌で理解する日がついに訪れたのです。
さて、私はアイドル運営という仕事柄しょっちゅう歌舞伎町をウロウロしているのですが、昨日のこと。Tさんという馴染みのお客さんと久々の再開を果たし、その喜びからしばらく道端で話し込んでいました。
「おいニイちゃんたち。ここで何やってんの?」
振り返ると50歳くらいの男性が私たちに話しかけてきました。
「絶対に刺激してはイケないタイプ」だと私の直感が告げていました。
おそらくTさんも察知したのでしょう。
「あにぃ、元気?」
などと気さくに返して、話を盛り上げ始めました。一見すると和やかなひと時。しかしその実現場に張り詰めた緊張は、爆弾処理班のそれ。
「そうだ、ニイちゃんたちにいいものあげるよ」
突如男性が満面の笑みで《白い粒》を渡してきました。
「ラムネだよ」
その瞬間、あのTさんがちょっとひるんだ顔をした(ように思えました)。
(…これ、食べたらヤバいやつじゃないの?)
とっさに時間を稼ごうと、私はこの時手にしていた激辛のポテトチップスを男性に差し出しました。
そして閃きました!
もし、この激辛ポテチを拒むようなそぶりを見せれば、私たちもこのラムネを食べなくて済むはず。何故ならば、撃っていいのは撃たれる覚悟があるヤツだけだ!(byルルーシュ)だからです!
激辛であることをとにかく強調して説明する私。
しかし男性は躊躇するそぶりも見せずバリバリと食べて見せたので、覚悟を決めた私はその《ラムネ》を口にしたのでした…。
しばらくは食べたフリをしてTさんが飲み込むまでは様子を見ようと待ったのですが(←最低)、飲まなきゃ大丈夫かと嚙んで味を確かめたら、確かに懐かしいあの味がしたので、安心してTさんと顔を見合わせました。
教訓。
知らない人からもらったものを食べてはいけません!
そしてあれから24時間。
どういうわけだか今無性にあのラムネが食べたくて仕方がありません…。