東北・ダルビッシュ有にどう立ち向かったのか? 遊学館・山本雅弘前監督の思い出の試合

 世の中には、こんなすごいヤツがいるんだ――。
あの衝撃を山本雅弘監督は忘れない。

 2004年夏、遊学館は創部4年目で早くも3
度目の甲子園出場を果たしていた。翌年のドラフ
トで広島に1位指名される鈴木将光を主軸に据え
た強打線。1、2年生だけでベスト8に進出した
02年の印象もあって、上位進出が期待されていた。

 初戦は県岐阜商を6対3で破り、迎えた2回戦。
相手はダルビッシュ有(現パドレス)、加藤政義
(元日本ハム他)ら前年夏に準優勝したメンバー
が多く残る東北だった。全国屈指の評判を取るダ
ルビッシュだが、山本監督は打線に自信を持って
いた。石川大会はチーム打率4割1分1厘。初戦
でも14安打を放っていた。

「ダルビッシュのビデオは4試合ぐらい見たんで
す。球は速い、変化球は鋭い、超高校級だという
のはわかっていたんですが、印象としてはそんな
にすごいとは思わなかった。特にけん制やフィー
ルディングはそんなにうまくない。けん制は一切
ないし、ランナーへの注意力もそんなにない。細
かいことをやる能力はないと感じたんです。言葉
は悪いけど、こんなうぬぼれた選手はひと泡吹か
せてやろう、鼻を明かしてやろうと思いました」

 当時のダルビッシュといえば、手抜きで有名。
練習は他の選手より早く上がり、打たれればどこ
が痛いと言い出す。審判の判定にあからさまに不
服そうな態度をとるのも日常茶飯事だった。試合
前のミーティングで、山本監督は選手たちにこう
指示を出した。

「とにかく塁に出たら走れ。一か八かでもいい。
相手ピッチャーに走ってくるんだと警戒させよう」

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