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藤田桜の戯曲ポスト感想編

このnoteは2023年1月1日から同月31まで開催されていた企画
藤田桜の戯曲ポスト - カクヨム (kakuyomu.jp)に投稿された作品計6作の感想を述べるものです。

『愛する罪びとたちの輪舞曲〔ロンド〕』戯曲もどき 楠本恵士

ご参加ありがとうございます。
高校演劇でファンタジー作品ってあまり見ないので、全編を通して新鮮な気持ちで読めました。面白かったです。
登場人物たちの「熱に浮かされた感」が巧みに表現されていて良かったですね。この戯曲からは「物語は非現実であるという常識」を越えた先にある「神聖なる儀式」的なものを感じられました。演劇って元々祭事から発展したみたいな説もあるくらいですから。
素敵な作品をありがとうございました。

あたしは空白少年 ポテトマト

ご参加ありがとうございます。
一体、どこからどこまでが「戯曲」なのでしょうね。フローベールの『聖アントワヌの誘惑』やマヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』など小説か戯曲か判断に悩む作品は文学史上多々あります。そもそも戯曲の書き方なんて作家ぞれぞれであり、正しい形式はなくて良いのかもしれません。
これだけだと話にならないので「戯曲としての」こちらの作品に感想を書かせていただこうかと思います。
戯曲って、あくまで文学作品なので舞台にかけることを前提としなくてもいいんですよね。本作は音声としての言語から解き放たれた戯曲だと感じました。でも、その上で、文章の音楽性という「実演」の部分にも細心の注意が払われている貪欲さが素晴らしかったです。
あと、作品の七割くらいが「最高潮の部分」に使われるような文章で書かれていて、それなのにバランスが崩れていないのも良かったです。
素敵な作品をありがとうございました。

戯曲「1972年のアプリオリ」(全一幕四場) 葛西 秋

ご参加ありがとうございます。
登場人物たちの台詞のキザっぽさがこの作品ならではの雰囲気を作り出す一助となっており、ワクワクしながら読み始めることができました。また、戯曲と言うこともあってなのでしょうか、かなり説明ゼリフが多いのですが、物凄く丁寧で堅実な筆致で書かれており、不自然さは全く感じなかったんですよね。こういうアプローチもあるのかと興味深く読ませていただきました。一万字にも満たない文量で豊かな作品世界を作り上げた秘訣なのでしょうね。また、見せ場や盛り上がりが分かりやすかったのもよかったです。
素敵な作品をありがとうございました。

戯曲「天狗の子」 バルバルさん

ご参加ありがとうございます。
昔話風戯曲。一組の親子の物語を、シーンのピックアップや語りのスケールの拡大・縮小など様々な技巧を用いて四千字にも満たない圧縮された文章で最初から最後まで描き切った作品でした。
硬派で丁寧に練られた文体が心地よかったです。
道徳観に支えられたハッピーエンド、そして天狗との決着をつけないままの閉幕が良い風味を出しており、楽しめました。
あと、最後に現代へと視点を移していくという締め方も良かったです。人々が伝承に解釈をつけようとする営みだとか、そういったものを背景に感じられて……。
素敵な作品をありがとうございました。

【戯曲】ウェルカム・ザ・ワールド! 紫陽_凛

ご参加ありがとうございます。
祝福の物語。誰かへの思いが込められた作品ってやっぱりいいですね。むしろ私が読ませてもらってもいいのか不安になってしまいました。そのくらい良かったです。
『不思議の国のアリス』を思わせるようなナンセンス文学めいた雰囲気がありながらも、その寓意するところは不過足なく分かる、という作者様の手腕が光る作品でもありましたね。それは恐らく、サブプロットの回収の丁寧さやテーマをしっかりと明言する書き方などによるものなのでしょう。「自分は何者か」という主題を示すこの物語に最も相応しい書き方であるように思いました。
素敵な作品をありがとうございました。

マイン・フューラー 偽教授

ご参加ありがとうございます。
言われて読み返してみると確かにずんだもんですね喋り方。
キャラクターや歴史物としての切り取り方、語り口の見事さなど、魅力に尽きない作品でした。
一見するとかなりライトな雰囲気で描かれているのですが、それでいて質実かつ緻密な筆致で書かれており、ストーリーの魅力も含めてこの優れた作品全体をしっかりと支えています。きょうじゅさんの良さと作品の良さがシナジーを発揮してとてもとても良き……。あと間の取り方もすっごい美しいんですよね。丹念に作られた達人の逸品という感じがしました。終盤とかもう噛みしめる度に目の端が潤んできます。
そもそも藤田がこういう話に弱いのもあって、本当に、本当に……!
「青年」と「友人」のコンビの魅力によって、最後の切ないエンドが際立っているのも好みです。
素敵な作品をありがとうございました。

感想まとめ

今回の企画では、六人の書き手さんに参加していただくことができました。企画を開いた場所がカクヨムということもあり、小説や詩の技法を活かした作品が多かったように思います。
「戯曲読みたい」と衝動的に開いた企画でしたが、みなさまのおかげで個性豊かかつ魅力的な作品をいくつも摂取することができたので大満足です。
ありがとうございました。



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