第四回偽物川評議員ピックアップSIDE:マヤその1
どうもみなさんこんにちは。偽のマヤです。このタイミングでピックアップその1だなんて不思議な気分ですね。今回はシンプルに桜ちゃ……ゲフンゴフン、偽のマヤの好みで取り上げる作品を選ばせていただきました。
どこまでも、どこまでも 赤井風化
こじらせ感情がたまらない作品でした。
キャプションから何となく察せてしまうように、いわゆるバッドエンドの作品で、読んでてすっごく苦しかったんですけど、とても上質な苦しみでした。凄くよかったです。言葉遣いとか登場人物の取る行動の至る所に「どうにもならなさ」というか「希望のなさ」というか……そんなものが巧みに散りばめられた作品でしたね。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の台詞が何度か用いられるのですが、透明感のある引用元に反比例するかのような、どこか濁りや雑駁さのある語りや内容も印象的でした。
写真の中の、花嫁事情 白里りこ
ハワイに移民した男性がお嫁さんを貰うお話です。
手紙のやり取りとか色々なエピソードはあったりはするんですが、文字通り「男性がお嫁さんを貰う」過程だけを描いた作品です。最初はここで終わるのかとびっくりしちゃいました。
普通は、これから俺達の物語は始まるぜ――! っていう感じの終わり方をする作品って、予告編でしかなかったなっていう類の感想を抱きがちだと思うんですが、逆にこの作品はこの終わり方が後味の良さと言うか魅力になっているように思いましたね。素敵な作品でした。
成就 頭野 融
何でも言うことを聞いてくれる彼氏くん。
文字数は下限の三千字に近く、小説の構造も語り口もストレートでシンプルな印象を受けるこちらの作品ですが、どうしてか、物凄く惹かれるものを感じました。参加作の中でもかなり印象に残っています。恐らく、この淡々とした文体で、このオチを描いた点が凄く刺さったのでしょう。
いやぁ……いい作品でした。短い時間ですぐに読めるので、ぜひ皆さんもどうぞ。
朝の儀式 辰井圭斗
この小説はまるで、誰かの大切な記憶の欠片がひらひらと舞い落ちるのを目の当たりにするかのような――。
私の最推し作家さんである辰井さんの作品ですね。今回偽物川に作品を寄せてくださるということで、どんな小説で来てくださるのだろうとワクワクしていましたが、読めてよかった(感動)……!
他にご紹介させていただいた三作と比べてかなりレトリックの華やかな構造をしているんですが、その配置がとても巧みで「ああ、小説って、三千字でこんなこともできるんだ」という感想を抱きました。
あとですね、文章のリズムや思い浮かぶ情景が凄く好きなんです。何でしょうね、現代ものの小説って、歴史物とかファンタジーみたいにエキゾチックな装飾性のある文体に走れないので、よっぽど上手い人でない限り地味な文体になってしまいがちなんですが、こちらの作品においては絢爛ささえ感じるんです。使っている語彙は平易なもののはずなのに! 凄かった……。
という訳で、偽のマヤによる評議員ピックアップその1でした。
やっぱり、良い小説を読むとお肌にツヤが出ますね。なので皆さんも偽物川参加作品をじゃんじゃん読みましょう読んでくださいピックアップされたされてないに関わらずどれも魅力的な作品ですので。
……それでは、ここらで切り上げましょうか。
体調にはお気を付けて。ばいばい、まったねー。