体操の技を覚えよう【つり輪01】振動技・振動倒立技
つり輪という種目は、男子体操6種目の中で最も"力"を必要とする種目です。
腕力はもちろん、胴や下半身の力も鍛えなければなりません。
その花形となるのが力技。
2つの輪っかを握りながら、空中でピタッと止まるその相貌は人間離れした至高の領域。
今回からは、体操6種目の中でも異質と言えるつり輪の技について、4つのチャプターに分けて覚えていきましょう。
つり輪も他の種目と同様、技グループが4つ設けられています。
グループⅠ:振動技・振動倒立技
グループⅡ:力技
グループⅢ:振動力技
グループⅣ:終末技
といった具合です。
こちらも各グループに属する技を必ず1つずつ演技構成に入れることが要求されています。
今回はその内のグループⅠ:振動技・振動倒立技についてまとめています。
その前に、これからつり輪の動きについての説明で理解しやすいように、つり輪における状態をあらわす単語を覚えておきましょう。
◆懸垂
輪を握ってぶら下がっている状態をいいます。すべてのつり輪の演技は必ずこの状態から始まります。
◆逆懸垂
輪を握って、頭を下、足が上を向いてぶら下がっている状態をいいます。
◆支持
輪の上に体があり、足を下に向けて腕で体を支える状態をいいます。
◆倒立
こちらは輪を握り、腕から足先までをまっすぐ上向きに伸ばした状態をいいます。
これらを頭に入れたうえで振動技を一つひとつ見てみましょう。
グループⅠ:振動技・振動倒立技
力技をアイデンティティとするつり輪ですが、力技だけで演技を構成することはできません。
力を使わずにスイングを使った振動のみで行う技があります。見ていきましょう。
▼振動技
①前方伸身懸垂回転【A難度】
前方へと振動する技群の基本となる技。
振動を使って前方に1回転、次の振動技へと繋げる事が出来ます。
②前方車輪倒立経過【B難度】
①前方伸身懸垂回転の振動による円運動をより大きくして倒立と同じ位置まで足先を持っていく技。
前方伸身懸垂回転よりも強い振動を生み出せる事から、高難度の終末技へと繋げるための助走の役割で使われることが多いです。
③前方翻転逆上がり支持〔ホンマ支持〕【B難度】
後ろ方向へのスイングの振動を使って鉄棒の前回りのような動きをする技です。
通常後ろ方向へ行う逆上がりとは逆方向ということで「前方翻転逆上がり」という表記になっています。
この動きには日本人選手の「ホンマ」の名前が付いています。
④前方伸身翻転逆上がり支持〔伸身ホンマ〕【C難度】
③〔ホンマ支持〕の動きを膝と腰を曲げない「伸身」姿勢で行う技です。
⑤前方抱え込み2回宙返り懸垂〔ヤマワキ〕【C難度】
つり輪を演技する選手が十中八九実施するのがこの「ヤマワキ」という技。
こちらも日本人選手の名前が付いています。
ホンマの動きをより大きくして支持局面を経過せずに、輪を握りながら抱え込み姿勢で前方2回宙返りのような動きをして、最終的に懸垂状態に収めます。
⑥前方屈身2回宙返り懸垂〔ジョナサン〕【D難度】
抱え込み姿勢だった⑤〔ヤマワキ〕を、膝を伸ばした屈身姿勢で行うとひとつ難度が上がって〔ジョナサン〕というD難度の技になります。
⑦前方伸身2回宙返り懸垂〔伸身ヤマワキ〕【D難度】
⑤〔ヤマワキ〕を膝と腰を伸ばした伸身姿勢で行うと〔伸身ヤマワキ〕になりますが、こちらは屈身姿勢の⑥〔ジョナサン〕と同枠扱いでD難度です。
⑧後方伸身懸垂回転【A難度】
こちらは①前方伸身懸垂回転とは反対方向、後ろ方向への振動技の基本となるもの。
⑨翻転逆上がり支持【A難度】
振動を使って鉄棒のように逆上がりをして支持局面に収める技です。
前方に逆上がりする③〔ホンマ支持〕は屈身姿勢でB難度、伸身姿勢でC難度でしたが、こちらは伸身姿勢での実施でA難度。
⑩後方車輪倒立経過【B難度】
⑧後方伸身懸垂回転をより大きな円運動で倒立の位置まで足先を持っていく技。こちらは後方系の終末技への助走の役割で使われる事がほとんど。
⑪後方抱え込み2回宙返り懸垂〔グジョギー〕【C難度】
⑤〔ヤマワキ〕は輪を握りながら前方向に2回宙返りをする技でしたが、
〔グジョギー〕は輪を握りながら後ろ方向に2回宙返りをする技です。
ヤマワキと対照的に、現代では使う選手はほとんどいません。
⑫後方屈身2回宙返り懸垂〔屈身グジョギー〕【D難度】
⑪〔グジョギー〕を膝を伸ばした屈身姿勢で行うとひとつ難度が上がってD難度になります。
⑬後方伸身2回宙返り懸垂〔オニール〕【E難度】
⑪〔グジョギー〕を膝と腰を伸ばした伸身姿勢で行うとさらに難度が上がってE難度になります。
前方に回る⑤〔ヤマワキ〕と後方に回る⑪〔グジョギー〕の大きな違いとして挙げられるのが、⑦〔伸身ヤマワキ〕がD難度なのに対して⑬伸身グジョギー=〔オニール〕はE難度が取れること。
⑬〔オニール〕はつり輪のグループⅠで唯一E難度が得られる技です。
これらの振動技はつり輪の花形である力技とは違い、振動のみで技を簡潔することが求められるます。ゆえに、力を使うような実施は減点対象となってしまいます。
▼振動倒立技
グループⅠは単純な振動技のほかにも、振動から倒立に収める技も含まれます。
振動倒立技の類は、グループ要求とはまた別の特別な要求として演技に必ず1つは入れなければなりません。
⑭後ろ振り上がり倒立【C難度】
先に挙げた②前方車輪倒立経過
これを倒立姿勢で静止させる技が後ろ振り上がり倒立です。
倒立姿勢で2秒の静止画が求められます。
同じ方向同じ動きなのに②前者は前方、⑭後者は後方となっていてややこしくなっています。
本当うちの体操がややこしくてすみません。
前者の「前方」は「車輪」にかかっているので、輪っかを中心とする車輪の運動の方向を指します。
一方で後者の「後ろ」は「振り」にかかっているので、これは振動させている方向を指しているわけです。
⑮翻転逆上がり倒立【C難度】
こちらは⑩後方車輪倒立経過と同じ動きで倒立に収める技です。
こちらは「翻転」とあるので、⑨翻転逆上がりで逆上がりをせずに足が上を向いたまま倒立に持って行いって倒立に収める技になります。
⑭後ろ振り倒立、⑮翻転倒立ともに⑤ヤマワキ、⑥ジョナサンと同じく、つり輪を演技する選手は十中八九実施している技です。
⑯ホンマ支持後ろ振り倒立【C難度】
③〔ホンマ〕と同じ動きで支持局面に持ち込み、振動の勢いのまま倒立まで持ち込む技です。
先に出した⑭後ろ振り倒立と⑮翻転倒立が使われることがほとんどなため、この技を使う選手は滅多にいません。
⑰伸身ホンマ支持後ろ振り倒立【D難度】
⑯ホンマ倒立を伸身姿勢で行うとD難度になります。
要求として必ず実施しなければならない振動倒立技の中では最高難度であり、唯一D難度が取れる技です。
以上がグループⅠ:振動技・振動倒立技の主な技です。
つり輪が得意な選手がつり輪でDスコアを稼ぐためには価値点の高い力技を多用します。
これらの振動技は高難度の技が少なく、演技全体をとっても印象に残る技ではありません。
しかし、力技を得意とする選手の中には、振動技が苦手で、振動技でミスをしてしまったり減点が大きくなってしまう人もいます。
振動技・振動倒立技はつり輪の演技を構成するうえで決して蔑ろにできない部分なのです。
さて、次回はお待ちかねの力技に入ります。
画像出典
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?