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体操の技を覚えよう【あん馬06】2025年から追加・変更された規則
今回はあん馬における新ルールの変更点を押さえましょう。
ゆかほど大きな改革はありませんが、「特別な繰り返し」と呼ばれる、演技内に複数実施できる要素については制限が厳しくなったので、それを知ることで選手がどんな対応をしているのかが分かってくると思います。
それでは見てみましょう。
※2025年から変更された箇所は引用内で太字で示しています。
▼ウ・グォニアンのさばき
ウ・グォニアンは、両手の支持があん部馬背に達するまでに360°の転向を完了していなければならない。
馬端から馬端までロシアン転向を2周(720°)回しながら移動する技であるE難度の『ウ・グォニアン』。
従来は「両手の支持があん部馬背に達するまでに360°の転向を完了」の前に「片手または」の表記がありました。それが削除され、両手支持であん部馬背に着手するまでに360°転向を完了しなければならなくなりました。
片手のみがあん部馬背に達するまでに360°の転向を完了しているウ・グォニアンというのがこちら。

こういったさばきは認められず、ウ・グォニアンを実施するときはあん部馬背を両手支持で経由するさばき方でないといけません。
とはいっても、上の画像のようなウ・グォニアンのさばきはレアケースなので、多くの選手が下の画像のようなさばき方をしています。
「両手の支持があん部馬背に達するまでに360°の転向を完了」するさばきがこちら。

なかなか両手支持までに360°を完了するさばきは難しそうですが、一見綺麗なさばきに見えてもあん部までに360°回り切ってないと減点になるのでしょうか。
▼シュピンデル系の移動技
すべてのシュピンデルを伴う移動技は、技の開始となる支持部分で旋回を1回以上回してから始めなければならない。
「シュピンデルを伴う移動技」に代表されるのがウルジカ2という技です。この技は馬端外向き旋回から始まるのですが、これを横向き旋回から縦向きに1/4転向してからすぐにウルジカ2に入るというやり方をする選手がいました。

これをやりたいとき、一度外向き旋回を1周回してからウルジカ2に入らなければならないと言う規則です。
下の画像では、横向き旋回から1/4転向をして外向き背面支持~外向き正面支持~外向き旋回1周~ウルジカ2という流れになっています。
この流れだとこの規則に抵触しませんね。

これが、ほかのシュピンデルを伴う移動技にも適用されるわけです。
例えば…
・ニンレイズ ・ニンレイズ2 の場合はスタート位置での馬端中向き旋回を1周
・ケイハ4 の場合はスタート位置での馬端外向き旋回を1周
・横向き旋回移動1/2ひねり の場合はスタート位置での横向き旋回を1周
アイヒホルンは移動技には含まれないのでこの規則には含まれません。
▼交差倒立技
一把手上のすべての交差倒立技は、逆交差入れで完了しなくてはならない。
一把手上のすべての交差倒立技というのはつまるところ正交差倒立と逆交差倒立の2つになりますが。
これは、倒立に上げた後、脚をどう下ろすかについての規則になります。
交差技で脚を交差させてから再び開脚支持をするときに正交差入れ、逆交差入れという要素があります。
・正交差入れ
お腹が下を向いた状態で体を下ろして開脚支持

・逆交差入れ
背中が下を向いた状態で体を下ろして開脚支持

一把手上での交差倒立技を実施するとき、従来は正交差入れで下ろすことも認められていましたが、これからは正交差入れは認められず、逆交差入れのみが認められることになりました。
これは「交差」という要素が脚を前後入れ替えるというものであるためで、正交差入れの場合、脚が前後入れ替わらないケースがあります。
交差という技の価値を保持するためにも、このような規則が設けられたのでしょう。
例えば下の画像のような場合、逆交差の入りと正交差入れで脚の位置が前後入れ変わっていません。
これは脚が交差していると言えるでしょうか。

ロスルールでは、正交差倒立・逆交差倒立ともに、逆交差入れで下ろさなければなりません。
・正交差倒立逆交差入れ

・逆交差倒立逆交差入れ

▼開脚フロップ
開脚旋回で実施するフロップ技の難度の格上げはない。
一把手上で3つまたは4つの旋回技を連続させることでD難度またはE難度が得られるフロップという技ですが、これを開脚旋回で実施すると一段階難度が格上げされるというルールがありました。
あん馬において、同じ技を開脚旋回で実施することで難度が格上げされる唯一の例だったわけですが、これがロスルールでは難度の格上げが無効となりました。
フロップを開脚で実施しても難度の格上げはありません。
・開脚Fフロップ
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なぜこんな貴重な技術を失くしてしまうのか甚だ疑問です。
それまでまったく実施例がなかったところに、時代の流れとともに開脚旋回が普及して、パリルール下でようやく実施する選手が現れたのに、すぐ消してしまう意図が僕には分かりません。
▼特別な繰り返し
あん馬の演技内で、同系統の技には技数の制限がかけられています。
従来の規則に比べて回数が減らされたものや、対象となる技に追加・変更があったものなど複雑になっています。
変更のないものもありますが混乱するといけないので、あん馬における特別な繰り返しの要項に含まれているものをすべて記載します。
◆縦向きでの3部分移動
縦向きでの3部分移動は、最大2回まで認められる。
マジャールやシバドに代表される縦向きの前後移動は最大2回までの実施が可能です。
ここのポイントは前移動が1回、後ろ移動が1回とは書かれていないところ。
例えば前移動を2回やっても、後ろ移動を2回やってもルール上は良いという事です。
とはいえ、そんな演技をする選手はいませんがね。
この規定に該当するのは以下の技です。

・ 縦向き前3/3移動(馬端~ポメル~あん部~ポメル~逆馬端)〔マジャール〕(D)

・ 縦向き前移動(馬端から両ポメルを超えて逆馬端)/縦向きとび前移動(馬端~馬端)〔ドリッグス〕(E)
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ABU AL SOUD Ahmad (JOR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
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【第76回全日本種目別選手権 あん馬 決勝】杉野正尭 北園丈琉 石澤大翔
馬端~馬端へ直接移動する前移動と、とび前移動(ドリッグス)は同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。
・ 縦向き後ろ移動3/3(馬端〜把手〜把手〜馬端)(C)
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・ 縦向き後ろ3/3移動(馬端~ポメル~あん部~ポメル~逆馬端)シバド(D)
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・ 両把手を越えて縦向き後ろ移動〔クルバノフ〕/両把手を越えて縦向きとび後ろ移動〔リード〕(E)
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KURBANOV Nariman (KAZ) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
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THE REID - 2023 World Cup in Doha (QAT) - MAG new PH
馬端~馬端へ直接移動する後ろ移動(クルバノフ)と、とび後ろ移動(リード)も同枠扱いの技なので、演技中どちらか一方しか使うことはできません。
注意すべき点は、2回までの制限がかかっているのは「縦向き」での「3部分移動」であること。
横向きの3部分移動や、縦向きの2部分の移動はここでは対象外です。
例えば、前移動・後ろ移動と縦向きの3部分移動を2回実施した後に横移動をしたり、縦向きでの2部分の移動をすることは認められています。
・横移動
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・縦向きでの2部分の移動
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◆ロシアン転向技
ロシアン転向技は、終末技を含めて最大2回まで認められる。
あん馬におけるこの特別な繰り返 しは拡大解釈され、2つ目の馬端馬背ロシアン転向技(終末技を含む)や、2つ目のあん部馬背ロシアン転向技は、繰り返しとしてみなされる。
なお、コンバインに含まれる一把手上のロシアンは、この規定を適用しない。
移動を伴わないロシアン転向技というのがありましたね。
馬端で1周~3周回る、もしくはあん部で1周~3周回ることでひとつの技とする技です。
実はこの馬端でのロシアン転向技は終末技として使うこともできるのですが、終末技を含む移動を伴わないロシアン転向技は演技中に2回までの実施が可能です。
この規定に該当する技は以下の技です。
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・馬端馬背ロシアン 360°転向おり(A)
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・馬端馬背ロシアン 720°転向おり(B)
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・馬端馬背ロシアン 1080°転向おり(C)
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このロシアン転向技の繰り返しに関しては規定がややこしいです。
これら9つの技のうち、演技中2つの技を実施できるわけですが、同じ位置で回る回数が違う技を2つ実施することはできないのです。
例えば、あん部での1080°ロシアン転向(E難度)を成功させた後にまたあん部で360°転向(C難度)を実施しても、繰り返しとみなされて、難度の低いあん部360°転向(C)はカットされてしまいます。
これが馬端になると、終末技も含まれるのです。
馬端でロシアン1080°(C難度)【グループⅡ:旋回技】を成功させた後に、終末技として馬端ロシアン720°おり(B難度)【グループⅣ:終末技】を実施すると、これも繰り返しとみなされてしまいます。
同枠でもなければ、技グループもそれぞれ違いますが、これが繰り返しとみなされるだけでなく、この場合は難度が高い方ではなく、終末技が優先されるのです。
Dスコアを算出する際の優先順位として、①終末技→②難度の高い技→③難度が同じの場合、選手に有利になる技 という順位があるので、どれだけ中技の方が難度が高くても終末技が優先されます。
よって、この場合は終末技の馬端ロシアン720°おり(B難度)が採用され、先に実施された馬端でロシアン1080°(C難度)は繰り返しとみなされカットされます。
また、移動を伴わないロシアン転向を使う技として、コンバインという技があります。
コンバインはひとつのポメル上で2回(1回でも可)旋回を回してから、直接ポメル上でロシアン転向を半周~3周(以上)回す技でしたね。

この技は複数の旋回技を組み合わせてひとつの技としており、この技を構成する要素としてポメル上でのロシアン転向があります。
このコンバインは、この規則には該当せず、馬端ロシアン・あん部ロシアンとの併用が可能です。
以上のことを踏まえて可能な演技の例を挙げるとしたら、
例1:Eコンバイン(E)→あん部ロシアン1080°(E)→馬端ロシアン1080°(C)
例2:あん部ロシアン360°(C)→Dコンバイン(D)→馬端ロシアン1080°おり(C)
こんな演技が可能になりますね。
◆倒立技
交差または(開脚)旋回からの倒立を経過する技は、最大2回まで認められる(終末技を除く)。
倒立の要素を含む技は演技中2回まで実施できます。
あん馬において倒立の要素を含む技は少なく、セアによる倒立と、ブスナリのような旋回から倒立に上げて下ろして旋回に戻るタイプの技が挙げられます。
ここではロシアン転向とは違い、終末技としての倒立技は対象外となります。
この規定に該当するのは以下の技が考えられます。
・正交差倒立〔リーニン〕/〔ブライアン〕(D)
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JARMAN Jake (GBR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
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正交差倒立とブライアンは同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。
・逆交差倒立/逆交差ブライアン(C)

Alex Naddour - Pommel Horse - 2017 P&G Championships - Senior Men - Day 1

van den KEYBUS Luka (BEL) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
逆交差倒立と逆交差ブライアンは同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。
・ステパニヤン(C)

・(開脚)支持から後ろ抜き倒立、下ろして開脚支持(B)

・ブスナリ系の技

REGINI-MORAN Giarnni (GBR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
ブスナリのほか、様々な要素から倒立に上げて旋回に下ろす技すべてが当てはまります。
例えば、正交差倒立(D)→逆交差倒立(C)→ブスナリ(F)→DSA倒立おり(C) という風に演技をした場合、倒立技の連続の規則に該当する正交差倒立、逆交差倒立、ブスナリは繰り返し規定に抵触し、最も難度の低い逆交差倒立(C)はカットされてしまいます。
今では交差倒立を2つ実施する選手は少なくなっているので、この規則によって構成を変えざるを得ないような選手はあまりいないのではないでしょうか。
確かに、旋回が主な要素であるあん馬において、力技が得意な選手が倒立技ばかり入れてはあん馬の持つ特性が失われるでしょうね。
◆移動を伴うロシアン転向技
移動を伴うロシアン転向技は、最大2回まで認められる。
移動を伴うロシアン転向技は演技中2回まで実施できます。
この規定に該当する技は以下の技です。
まずはロシアン転向をしながら馬端~あん部~馬端と3部分を経由して移動する「ウ・グォニアン系」の技から3つ。

・ 馬端横向き支持からロシアン630°(以上)転向移動(3/3部分)(D)
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・ ロシアン720°(以上)転向3/3移動〔ウ・グォニアン〕(E)
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そして180°~360°転向をしながらあん部を経由しないで馬端から馬端まで移動する「トンフェイ系」の技から3つ。

・ 下向き正転向(ポメルまたは両ポメル間に着手なしで馬端~逆馬端)〔トンフェイ〕(D)
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・ 両ポメルを越えてロシアン360°正転向〔バンメン〕(E)
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バンメンに関しては行って戻ってきているので移動していませんが技グループⅢ:移動技に属し、この制限にも該当します。
◆ひねりを伴う3部分移動技
ひねりを伴う3部分移動技は、最大2回まで認められる。
ひねりを伴う、いわゆるシュピンデルを伴う移動技も最大2回まで実施が可能です。
この規定に該当する技は以下の技。
・ 正面横移動ひねり、背面横移動ひねり(馬端〜馬端)(E)
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・ ニンレイズ/チトフ(D)
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KURBANOV Nariman (KAZ)_2023 Artistic Worlds, Antwerp (BEL)_Qualifications_Pommel Horse
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TITOV - 2021 World Challenge cup in Osijek (CRO) - MAG new PH Element
ニンレイズとチトフは同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。

ABU AL SOUD Ahmad (JOR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
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https://www.instagram.com/p/CO7OzowBXeP/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
ニンレイズ2とケイハ4は同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。
・ウルジカ2/バークハート(E)
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【第76回全日本種目別選手権 あん馬 決勝】杉野正尭 北園丈琉 石澤大翔
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Taylor Burkhart - Pommel Horse - 2023 Xfinity U.S. Championships - Senior Men Day 2
ウルジカ2とバークハートは同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。
こういったシュピンデル系の技は同枠扱いの技が多いので技選びが大変です。シュピンデルで1回ひねりをする技も半分ひねりをする技も同系統の技として括られています。
◆シュピンデル系の技
シュピンデル(1回ひねり)技は、最大2回まで認められる。
こちらは移動を伴わないシュピンデル系の技。
この規定に該当するのは以下の技。

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・ ケイハ1/ケイハ5(F)
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ABBADINI Yumin (ITA) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
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ケイハ1とケイハ5は同枠扱いのため、演技中どちらか一方しか実施できません。
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Robert SELIGMAN (CRO) - 2018 Artistic Gymnastics Europeans, qualification pommel horse
・ あん部馬背縦向き旋回1回ひねり(F)
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・ ベルキ(E)
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移動を伴わないシュピンデル系の技の場合は、1/2シュピンデルの技は含みません。なので、これらの技を2回実施するのとは別に1/2シュピンデルを実施することは可能なのです。
◆ショーン・ベズゴ系
ベズゴ系およびショーン系の技は、フロップやコンバイン、倒立技を含め、合わせて最大2回まで認められる。
従来は、ショーン系の技が2回まで、ベズゴ系の技が2回までとされていましたが、ルール変更後はショーン系とベズゴ系合わせて2回までと統合されました。
単純なショーン(D)とベズゴ(E)に加えて下位技であるベルトンチェリ(C)とダフチャン(C)さらにフロップやコンバインの要素として使われるベルトンチェリ、ダフチャンもこの規定に該当します。
◆ロシアン転向技の規定では、コンバインの要素として使われる片ポメル上ロシアン転向は該当しないとされていましたが、コンバインの要素として使われるベルトンチェリ/ダフチャンは、ショーン・ベズゴ系の規定に該当するのです。
なかなかややこしいです。
この規定に該当する技は以下の通り。
ショーン系
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・ベルトンチェリを使ったフロップ
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・ベルトンチェリを使ったコンバイン
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・ベルトンチェリから直接倒立に上げる技
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ベズゴ系
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・ダフチャンを使ったフロップ
・ダフチャンを使ったコンバイン
・ベズゴの動きから直接倒立に上げる技
「倒立技を含め」と書いていますが、◆倒立技の規定に書いてあった「(終末技を除く)」の記述がここではありません。
ベルトンチェリから直接倒立に上げる終末技が2024年末に発表され、難度価値が認められています。
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このおり技はショーン・ベズゴ系の繰り返し規定には抵触しますが、倒立技の規定には抵触しないというややこしいことになります。
◆開脚旋回
開脚旋回で実施される技は最大4回まで認められる(終末技を除く)。
なんと、開脚旋回で実施される技すべてが対象となる繰り返し規定が新たに設けられました。
2017年あたりから開脚旋回による実施が増え始め、演技全てを開脚旋回で通す選手も現れる中、こんなにも早く開脚旋回に制限がかけられるとは思いませんでした。
この「開脚旋回で実施される技」には、ブスナリも含まれます。
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REGINI-MORAN Giarnni (GBR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
開脚旋回で実施された技は難度が高い順に4つまでしかカウントできなくなりました。
ブスナリ系の倒立技は開脚旋回技に含みますが、ここでも終末技は該当しません。
開脚旋回のみで演技を通したい場合は…
セア系の技を3つ→開脚旋回技を4つ→終末技
とすれば、ルール上はすべて開脚旋回で通すことは可能です。
しかし、より高い難度を稼ぎたい選手にとっては、閉脚旋回技を取り入れざるを得ないでしょうね。
◆ブスナリ系の技
ブスナリ系の技は1回のみ実施することができる。
◆倒立の要素を含む技が2つまで、◆開脚旋回の技が4つまでの制限がかけられている中、ブスナリ系の技は1つしか実施できなくなりました。
これももちろん終末技は該当しません。
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REGINI-MORAN Giarnni (GBR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
ブスナリ系の倒立技は、チャプター04「終末技、倒立技」の中で紹介していますが、これらの技すべてがこの規定に該当します。
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これに最近発表されたベルトンチェリから直接倒立に入る技も含まれることになるわけですね。
◆移動を伴う同系の技
さて、ここからはこれまでの繰り返しの規定とは少し異なり、既に同系の技として括られているものをさらに同系の技で括っています。
移動を伴う技について、同系の技は1回だけ実施することができる。
2回目からは繰り返しとみなされ、最も高い難度のみカウントする。
まずは◆移動を伴うロシアン転向技に括られていた6つの技をさらにグループ分けしたものです。
◆移動を伴うロシアン転向技に括られている6つの技からは2つまでしかカウントされないという規則でしたがそれをさらに「ロシアン転向3/3部分移動技」と「トンフェイ系の技」で分けています。
そのそれぞれのグループから1回ずつしか実施できないという規則です。
ⅰロシアン転向3/3部分移動技
先の「移動を伴うロシアン転向技」の規定の中で「ウ・グォニアン系」としてまとめていたのがこの「ⅰロシアン転向3/3部分移動技」です。
この規定に該当する技は以下の3つ。
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・ 馬端横向き支持からロシアン630°(以上)転向移動(3/3部分)(D)
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・ ロシアン720°(以上)転向3/3移動〔ウ・グォニアン〕(E)
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新しいルールではこの3つの中から1つまでしか演技中に実施できません。
ⅱトンフェイ系の技
そして、「移動を伴うロシアン転向技」の規定の中で「トンフェイ系」としてまとめていたのが、以下の3つ。
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・ 下向き正転向(ポメルまたは両ポメル間に着手なしで馬端~逆馬端)〔トンフェイ〕(D)
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・ 両ポメルを越えてロシアン360°正転向〔バンメン〕(E)
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新しいルールではこの3つの中から1つまでしか演技中に実施できません。
◆移動を伴うロシアン転向技の規則にある「移動を伴うロシアン転向技は演技中2回まで認められる」という記述は、◆移動を伴う同系の技の規則がある以上、「移動を伴うロシアン転向技は演技中2回までしか認めることはできない」とも言えます。
とすると、「移動を伴う同系の技」の規則内におけるⅰロシアン転向3/3部分移動技の規則と、ⅱトンフェイ系の技の規則がある以上、「移動を伴うロシアン転向技」の規則についての記述は果たして必要なのでしょうか。
記述の順番を考えると、この「移動を伴う同系の技」をより理解させやすくするための前説としての「移動を伴うロシアン転向技」という事なのでしょうか。
さて、同系の移動技の制限はもうひとつあります。
ⅲニンレイズ系の技
この規定に該当する技は以下の2つ。
・ニンレイズ(D)
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KURBANOV Nariman (KAZ)_2023 Artistic Worlds, Antwerp (BEL)_Qualifications_Pommel Horse
・ニンレイズ2(E)
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ABU AL SOUD Ahmad (JOR) - 2022 Artistic Worlds, Liverpool (GBR) - Qualifications Pommel Horse
この2つの技は「ひねりを伴う3部分移動技」の規則に該当する4技(同枠含め7技)に含まれていました。
そのうちの2つが同時に実施できないとなると、4分の2が3分の2になってしまうのかと言われたらそうではありません。
「ひねりを伴う3部分移動技」の規則に該当するのは以下の技でしたね。
①正面横移動ひねり、背面横移動ひねり(馬端〜馬端)(E)
②ニンレイズ/チトフ(D)(2技は同枠)
③ ニンレイズ2/ケイハ4(E)(2技は同枠)
④ウルジカ2/バークハート(E)(2技は同枠)
これらの技のうち2つまでが演技にカウントできるのですが、もちろん同枠扱いの技、(例:ウルジカ2とバークハート)2つを演技にカウントすることはできません。
しかし、上記の番号違いの技ならば2つ実施できるわけです。
例えば③ケイハ4と④ウルジカ2の2つならば、演技にカウントすることは可能です。
しかし、ここで言われているのは、②ニンレイズと③ニンレイズ2に関しては演技内にこの2つの技を一緒にカウントできないということ。
この画像のような動きをしても、難度の高いニンレイズ2の方しかカウントされないわけですね。
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つまり、②と③の技を併用したい場合は、それらと同枠である②チトフと③ケイハ4のどちらかが有効になるんです。
演技内で②ニンレイズと③ニンレイズ2の塀用はNGですが
②ニンレイズと③ケイハ4、②チトフと③ニンレイズ2の場合だと②と③の併用が可能になるというわけです。
もちろん②チトフと③ケイハ4の併用は何も問題ありません。
これらの特別な繰り返しの条件をまとめるとこのようになります。
(間違っていたらすみません。読みづらいところは拡大してください。)
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これを見ると、まだ発表されていませんが、ベルトンチェリ倒立からのブスナリという技には、①開脚旋回、②倒立技、③ブスナリ系、④ショーン・ベズゴ系の4つの要素が混じる技になってしまいますね。
なかなか複雑で理解しにくい特別な繰り返しですが、選手たちはこの複雑な条件をクリアして演技構成を組んでいます。
これだけの規定があると同じ難度の中でも、難度とは別の価値、うまみのある技ない技が生まれてきます。
見た目にも理解するのが難しいあん馬が、そのルールすらも理解が難しいものなんです。
理解するにはとにかく演技を数多く見ることです。あん馬を好きになるコツはとにかく色んな演技を見ること。
【体操の技を覚えようシリーズ:あん馬】
チャプター01 交差技
チャプター02 旋回技(旋回/開脚旋回/ロシアン)
チャプター03 旋回移動技(旋回/開脚旋回/ロシアン)
チャプター04 倒立技、終末技
チャプター05 フロップ・コンバイン
画像出典
https://youtu.be/XPFkGJwv_zI?si=ek309GwyPs_PQDGb