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体操の技を覚えよう【つり輪05】2025年から追加・変更された規則
ここではつり輪における、2025年度版採点規則で追加・変更になった項目を残していきます。
つり輪はルール改正の度に、技の正確さがより重視されていきます。
肩の位置はここ、体はまっすぐ、握り方はこう、腕の角度はここまでと厳格に決められます。
今回のルール改正でも、より正確な実施がが求められています。
※2025年から変更された箇所は太字で示しています。
ヤマワキ・ジョナサン
ヤマワキまたはジョナサンから直接後ろ振り上がり倒立(2秒)を実施した場合には、ヤマワキまたはジョナサンの難度が1段階格上げされる。
なお、その振動倒立技はカウントされる8技に含まれていなければならない。
ヤマワキとジョナサンは、此度のルール変更によって難度が一段階格下げされています。
・ヤマワキ(B難度) ・ジョナサン(C難度)
しかし、これを直接後ろ振り倒立(C)へと繋げることで難度が一段階格上げできるというものです。
ヤマワキ~後ろ振り倒立と連続させることでヤマワキはC難度に
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ジョナサン~後ろ振り倒立と連続させることでジョナサンはD難度の価値を得ることができます。
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ただし、この後ろ振り倒立(C)はDスコアにカウントされる8技に含まれていなければなりません。
もし、ひとつの演技内に、
・ヤマワキ~後ろ振り倒立 ・ジョナサン~後ろ振り倒立
という流れを実施したとします。
この場合、2回目の後ろ振り倒立は繰り返しによりカウントされないため、2回目の後ろ振り倒立に連続させているジョナサンの難度の格上げがなくなります。
よって、この場合はヤマワキ(C)~後ろ振り倒立(C)、ジョナサン(C)となります。
つまり、演技内に難度の格上げが可能なのはヤマワキかジョナサンのどちらか一方でしかないという事です。
ジョナサン~ヤマワキ~後ろ振り倒立と3つ繋げた場合は、
ジョナサン(C)~ヤマワキ(C)~後ろ振り倒立(C)となります。
力技における肩の位置
振動や引き上げからの力静止技において、最終静止姿勢よりも肩や体の位置が5°を超えて上がってはならない。
最終静止姿勢からの逸脱が45°を超える場合は、その価値は認められず、0.50の減点となる。
その後、最終的な静止姿勢がみられた場合はその技は認められる。
例1 : 肩角度が45°を超える高さから持ち込まれたホンマ十字懸垂は0.50減点され、静止時間が満たされていれば十字懸垂のC難度が与えられる。
従来の規則では、「力静止技へ持ち込む際の振動や引き上げは、肩や体の位置が静止する最終姿勢の位置よりも上がってはならない。」となっていました。
新しい規則ではこれに具体的な角度(5°)が追記されています。
つり輪の力技では、握り手と肩を結ぶ線の角度が重要になってきます。
ここで記載されている5°というのは、最終静止位置の力技における腕の角度の話ではなく、その最終静止姿勢に持ち込むまでに振動や引き上げ系の動きを伴った場合の、最終静止姿勢に収めるまでの動作に対する規則です。
例えば、振動の要素であるホンマから力技である十字懸垂に収める「ホンマ十字」を例に見てみましょう。
最終姿勢である十字懸垂の肩の角度ではなく、ホンマの動きから十字懸垂に収めるまでの瞬間に注目してみてください。
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この実施だと確実に5°は超えているでしょう。
このように肩角度が5°を超えた場合は実施減点が施されます。
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角度が開いていく=肩の位置が輪よりも高くなるごとに最大0.5の減点になります。
この角度が45°を超えてしまった場合は、振動力技として実施された技は不認定となってしまいます。
しかし、最終静止姿勢となる技が単発の力技として認められた場合は、その力技の難度を得ることができます。
もしも、ホンマ十字を実施して肩の位置が高くなり、腕の角度が45°を超えてしまった場合、「ホンマ十字(D)」としての難度は認められないうえに0.5の減点。しかし、十字懸垂が認定要件を満たしていれば力技としての十字懸垂(C)は認めらレルということです。
この減点とは別に、力技の最終静止姿勢も完璧な姿勢からの逸脱度合いによって減点が施されます。
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例として十字懸垂の技を挙げましたが、ほかの力技、十字倒立や中水平にも角度による減点は施されます。
懸垂からの引き上げ技
懸垂からの引き上げ技は、振動からの力静止技に分類されないように、腕と体を伸ばし、ゆっくりと実施しなければならない。
引き上げは、腕と体を垂直に真っ直ぐに伸ばした姿勢から始めなければな らない。
腕や体のまがりが 45°を超えていた場合、その価値は認められず0.50の減点となる。
いわゆるバランディン系と呼ばれる、懸垂状態から引き上げて任意の力技に収めるタイプの力技についての規則です。
引き上げる過程で肘が曲がるのはもちろん減点の対象ですが、体も伸ばさなければいけません。
今回のルール改正では、技を始めるときの姿勢に関する記述が追記されました。
バランディン系の技に係るいかなる瞬間でも腕や体の曲がりは認めないという念押しの意味もあるでしょう。
バランディン系の技を実施する際には、腕や肩の位置だけではなく、体の曲がりもチェックされます。
こちらの実施では、腕と体はまっすぐ伸ばされていますが、肩を起点に体が前に傾いています。この場合も減点がなされています。
引き上げる際は、体はまっすぐに、マットに対して垂直なまま引き上げるのが理想です。
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こちらの場合は、引き上げる際に下半身がほぼ90°近く曲がってしまっています。引き上げの時もそうですが、引き上げたあと、十字倒立に持ち上げる際にも、肩の位置が輪よりも高くなっているのでこちらも減点対象です。
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高橋一矢 つり輪【第61回NHK杯体操】
この実施における減点は、
1.引き上げの際の肘曲がり
2.引き上げの際の体の曲がり
3.十字倒立に持ち込む際の肩の位置が輪よりも高くなる
4.十字倒立に持ち込む際の腰曲がり
5.終末姿勢の十字倒立の肩の位置が高くなる
以上の点が挙げられます。
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僕が理想的だと思うバランディン系の引き上げはこの実施です。
この実施なら引き上げに関する減点はないのではないでしょうか。
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ナカヤマ
ナカヤマはゆっくりと実施され完全な背面水平懸垂を経過しなければならない。
不完全な場合は実施減点となり、不認定となる場合もある。
振動を使わない力技は、力を使って表現するという技の性質上、どの技もゆっくりと実施されることが基本的な要求ではあるのですが、ナカヤマという技に関しては、このように「ゆっくりと実施され」と念押しされています。
ナカヤマという技は任意の姿勢から背面水平懸垂を経過して十字懸垂に引き上げる技です。
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ナカヤマは多くの選手に使われる技ですが、別の水平姿勢から背面水平に下ろした反動を利用して十字懸垂に持ち込むようなさばきが頻繁に見られることがありました。
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近年はこういった特定の技のさばきについての規則も増えてきて改善されていますが、完全になくなるわけではないのでこういった念押しが必要なのでしょうね。
個人的にこのナカヤマの実施はとてもゆっくりと実施されていて好きです。
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力技から力技への引き上げ
力静止技から力静止技への引き上げを行う際には、体の明確な動き(体幅以上)が求められる。
もし引き上げが完璧な静止位置から始まらなければ、その技は減点の対象となる。
最小限の体の動きしかない場合は、最後の静止技の難度のみが認められる。
例1:背面水平懸垂から引き上げ中水平支持
例2:中水平支持から引き上げ水平支持
「力静止技から力静止技への引き上げ」とは書かれていますが、水平姿勢から別の水平姿勢へ引き上げる際の規則でしょうね。
例に挙げられている技も水平姿勢から水平姿勢への引き上げ技です。
例1:背面水平懸垂から引き上げ中水平支持
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例として規則に追記されているのが中水平から上水平に引き上げる技。
例2:中水平支持から引き上げ水平支持
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これらの技に限らず、水平姿勢から水平姿勢へ引き上げる技では、体ひとつ分引き上げて最終静止姿勢に収めなければなりません。
中水平から肩だけが上がって脚が引き上げられていないような実施もあるので、そういった実施に対する警告といったところでしょうか。
つり輪についての大きな変更点はヤマワキ・ジョナサンの扱いについて。
それ以外は力技の正確な実施がなんたるものかが、よりつまびらかになったといったところでしょうか。
これまでつり輪で最も使われていたヤマワキ・ジョナサンの難度変更により、つり輪の演技の様相は変わるでしょう。
それだけこの2つの技はつり輪では重要な技なんですね。
【体操の技を覚えようシリーズ:つり輪】
チャプター01 振動技・振動倒立技
チャプター02 力技
チャプター03 振動力技
チャプター04 終末技
画像出典
https://youtu.be/cuJTNqPPYhI?si=qfDFn9obV5LA1FOw