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尤浩(中国)の平行棒/2020年W杯バクー大会予選の演技
2015年世界選手権種目別平行棒世界チャンピオン、中国の尤浩です。
2016年リオ五輪の代表でもあり、団体銅メダルを獲得しています。
尤浩の平行棒はとにかくDスコアが高く、多少の緩みはあっても演技を通し切れば金メダルを狙えるという程のものでした。
前年チャンピオンとして迎えたリオ五輪の種目別平行棒決勝では、終末技の着地で後ろに転倒してしまいます。
以降、中国には怪物の鄒敬園が現れ、鄒と得意種目が丸かぶりの尤浩は世界選手権の代表から外れることとなります。
しかし、2年半に渡って行われた種目別ワールドカップ予選を勝ち抜き、平行棒での出場権を得たのです。
リオの悪夢を払拭する絶好の機会が巡ってきました。
さて、尤浩の平行棒は、ほかの選手とは外れた演技構成を持ちます。
近年では【マクーツ】や【バブサー】といった技が流行り、見た目にも派手な演技が少なくなっています。
そんな中、尤浩は棒上での2回宙返り系の技を連発してくれます。
今回はその中から3つの2回宙返り技、【モリスエ】【ベーレ】【ドミトリェンコ】を紹介します。
まずは【モリスエ】という技。日本の森末慎二選手の名前が付けられています。
その内容は「後方棒上かかえ込み2回宙返り腕支持」というものでD難度です。
バーの横にずれて宙返りをする終末技と違い、真上に宙返りをして腕支持で受ける技です。
日本選手が良く使う技ですね。
あとの2つの技も2回宙返り系の技で、【モリスエ】と見分けがつきにくいと思うので見分け方も含めて紹介します。
何が違うかというと、2回宙返りを行う前の過程に違いがあるのです。
ひとつずつ見てみましょう。
続いて【ベーレ】という技。
【ベーレ】は「懸垂前振り後方かかえ込み2回宙返り腕支持」でD難度です。
これは車輪のように、倒立から懸垂状態まで体を落として振り上げた時に2回宙返りを仕掛けます。
【モリスエ】よりも勢いをつけやすいことから、【ベーレ】には発展技も多いです。
次に【ドミトリェンコ】ですが、こちらは「前振り上がり後方かかえ込み2回宙返り腕支持」というE難度の技です。
「前振り上がり」とは腕支持から脚を前方向に振り上げる技でした。
つまり腕支持状態から2回宙返りを仕掛けるという難しい技です。
それぞれ違いが理解できたでしょうか。
尤浩はD難度の【モリスエ】と【ベーレ】を屈身にすることで、それぞれE難度を稼いでいます。
①ホンマから入って②番目の技が【ドミトリェンコ】、その次が③《屈身モリスエ》、⑥棒下宙返り倒立の後に⑦《屈身ベーレ》をやっています。
追記:平行棒のスペシャリストとして代表に選ばれた尤浩ですが、種目別はつり輪と平行棒で決勝に進出。つり輪はファイナリストの中で最高Dスコアを実施してきました。着地で大きく動いたのでそこを改善できればメダル獲得も夢じゃありません。
平行棒では鄒とのワンツーフィニッシュは叶うでしょうか。