体操の技を覚えよう【跳馬04】ロンダートから入る技
これまでは前転とび、側転とびと、よく見られるとび方の種類の技を紹介していきました。
ここではロンダートから入る3つのとび方を使った技についてまとめています。
▼ユルチェンコとび
ロンダートから入る技の中にもとび方は3種類あるのですが、中でもよく使われるのがユルチェンコとびです。
ユルチェンコとびとは、
ロイター板を踏む前にロンダートを経ることで進行方向とは反対向きにロイター板を踏み切り、バック転のような動きで進行方向にお腹を向けた倒立位で跳馬に着手する跳び方のことでしたね。
「ユルチェンコ」とはそもそも女子選手の名前が付けられたもので、女子の跳馬ではこのユルチェンコとびが主流だったりしますが、男子選手の間ではそれほど使い手は多くないです。
このような方法で着手するとび方にも、1回宙返りでのひねり技、2回宙返り技があります。
それぞれ見ていきましょう。
※これから紹介する技名は、必ずしも正式名称ではなく、一部わかりやすく書き換えているものもあります。
➀ロンダート後転とび後方伸身宙返り〔伸身ユルチェンコ〕【D:3.2】
ロンダート~後転とびで跳馬に着手後、伸身姿勢で後方宙返りをして着地する技。
このように、後転とびで着手後に宙返りを伴う技を〔ユルチェンコ〕と呼び、伸身姿勢のユルチェンコは〔伸身ユルチェンコ〕と呼びます。
ここにひねりを加えることで技が発展していきます。
②ロンダート後転とび後方伸身宙返り1回ひねり【D:4.0】
①〔伸身ユルチェンコ〕に1回ひねりを加える技。
前転とび・側転とびと同じように、ユルチェンコとびの場合も、宙返りを伴う跳躍技は半ひねりを加えるごとにDスコアが0.4上がります。
この場合は①〔伸身ユルチェンコ〕(D:3.2)に1回ひねりを加えているので、+0.8でDスコアは4.0となります。
ひとつ前の記事で紹介した側転とびでは、1/4ひねって横向きで着手している特性ゆえに3/4ひねりと表記していましたが、ユルチェンコとびの場合は踏切から着手までにひねりを加えていないので切りの良い数字でひねりを表記できます。
③ロンダート後転とび後方伸身宙返り1回半ひねり【D:4.4】
①〔伸身ユルチェンコ〕に1回半ひねりを加える技。
④ロンダート後転とび後方伸身宙返り2回ひねり【D:4.8】
①〔伸身ユルチェンコ〕に2回ひねりを加える技。
⑤ロンダート後転とび後方伸身宙返り2回半ひねり〔シューフェルト〕【D:5.2】
①〔伸身ユルチェンコ〕に2回半ひねりを加える技。
内村航平さんも得意としていたこの技には〔シューフェルト〕と名前がついています。
⑥ロンダート後転とび後方伸身宙返り3回ひねり〔シライ/キム・ヒフン〕【D:5.6】
①〔伸身ユルチェンコ〕に3回ひねりを加える技。
白井健三さんが発表した技で、側転とびで同じ後方3回ひねりの〔ロペス〕を使い手とする選手は多いですが、このユルチェンコ3回ひねりを使い手とする選手は世界的にも稀です。
⑦ロンダート後転とび後方伸身宙返り3回半ひねり〔シライ2〕【D:6.0】
①〔伸身ユルチェンコ〕に3回半ひねりを加える技。
こちらも白井健三さんが発表した技。
Dスコアは最高の6.0。ユルチェンコとびでは唯一の6.0です。
3回ひねりの使い手も少ないので、3回半ひねりの〔シライ2〕は発表されてから白井さん以外に使い手は現れていません。
⑧ロンダート後転とび後方抱え込み2回宙返り〔メリサニディス〕【D:5.2】
側転とびにおける〔ヨー〕のように、ユルチェンコとびからも2回宙返り技があります。
この技は前転とびの〔ローチェ〕、側転とびの〔ヨー〕と同じく、Dスコアは5.2、〔メリサニディス〕と名前がついています。
⑨ロンダート後転とび後方屈身2回宙返り〔ヤン・ウェイ〕【D:5.6】
⑧〔メリサニディス〕を屈身姿勢にした技。
抱え込み⇒屈身へと姿勢が変わっているのでDスコアが0.4上がって5.6。
▼ロンダート半ひねり前転とび
そして、ユルチェンコとびをグレードアップさせて、ロイター板を踏み切った直後に1/2ひねりを加えて前転とびになる、「ロンダートから1/2ひねり前転とび」というとび方があります。
チャプター02で紹介した前転とびの技と同じ動きをロンダートひねり前転とびにすると、0.2だけDスコアを上げることができます。
⑩ロンダート、半ひねり前転とび前方屈身宙返り半ひねり〔ネモフ〕【D:3.4】
ロンダート入りで半分ひねって前転とびで着手、そこから屈身姿勢で前方宙返りに半ひねりを加えています。
こちらには〔ネモフ〕と名前がつけられています。
前転とびを紹介した時にも第二局面で同じ動きをする技がありましたね。
前転とび前方屈身宙返り半ひねりがそれです。
シンプルな前転とびからの屈身前宙ハーフはDスコア3.2ですが、これをロンダートひねり前転とびから行うと0.2だけDスコアが上がります。
つまり、この技のDスコアは3.4となります。
⑪ロンダート、半ひねり前転とび前方伸身宙返り半ひねり〔ハッチェオン〕【D:4.2】
ロンダート入りで半分ひねって前転とびで着手、そこから伸身姿勢で前方宙返りに半ひねりを加えています。
⑩〔ネモフ〕と同じ動きを伸身姿勢で行うこの技は〔ハッチェオン〕という名前がついています。
ロンダートで半分ひねって、踏切から着手までで半分ひねって、宙返りでも半分ひねって、忙しい技ですね。
⑫ロンダート、半ひねり前転とび前方伸身宙返り1回半ひねり【D:5.0】
ロンダート入りで半分ひねって前転とびで着手、そこから伸身姿勢で前方宙返りに1回半ひねりを加えています。
⑬ロンダート、半ひねり前転とび前方伸身宙返り2回ひねり【D:5.4】
ロンダート入りで半分ひねって前転とびで着手、そこから伸身姿勢で前方宙返りに2回ひねりを加えています。
⑭ロンダート、半ひねり前転とび前方伸身宙返り2回半ひねり〔リ・シャオペン〕【D:5.8】
ロンダート入りで半分ひねって前転とびで着手、そこから伸身姿勢で前方宙返りに2回半ひねりを加えています。
〔リ・シャオペン〕と名が付いたこの技。内村航平さんが跳馬の最終到達点としていた技です。「命懸けで跳んでいた」とも言っていましたね。
▼シェルボとび
さらに、ロンダートでロイター板を踏み切った直後に1回ひねりを加えて後ろ向きに着手するとび方も存在します。
それが「シェルボとび」と呼ばれるとび方。
今も昔も滅多に見られないレア技です。
ユルチェンコとびの技をシェルボとびで同じ第二局面の技をやると、ユルチェンコとびに比べて0.6、Dスコアが上がります。
例えば、ユルチェンコとび後方伸身宙返り1回ひねりはDスコア4.0ですが、シェルボとび後方伸身宙返り1回ひねりだと+0.6でDスコアは4.6となります。
⑮ロンダート、1回ひねり後転とび後方伸身宙返り1回ひねり〔シェルボ1回ひねり〕【D:4.6】
ロンダート入りから1回ひねって後ろ向きに着手、そこから伸身姿勢で後方宙返りに1回ひねりを加えています。
ユルチェンコとびでの伸身宙返り1回ひねりはDスコア4.0ですが、シェルボとびを使った伸身宙返り1回ひねりは+0.6となり、Dスコアは4.6となります。
⑯ロンダート、1回ひねり後転とび後方伸身宙返り2回ひねり〔シライ3〕【D:5.4】
ロンダート入りから1回ひねって後ろ向きに着手、そこから伸身姿勢で後方宙返りに2回ひねりを加えています。
ユルチェンコとびでの伸身宙返り2回ひねりはDスコア4.8ですが、シェルボとびと使った伸身宙返り2回ひねりは+0.6となり、Dスコアは5.4となります。
ちなみに、白井さんはゆかと跳馬で3つずつ、計6つ「シライ」と名の付く技を発表しています。
このように、
・ユルチェンコとび
・ロンダート半ひねり前転とび
・シェルボとび
この3つのとび方は、「ロンダートから入る技」としてひとつの技グループにまとめられています。
次回チャプター05では、これまで紹介した跳躍技がどのようにグループ分けされているのかについて紹介します。