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李智凱(台湾)のあん馬/2019年世界選手権予選の演技

今回は台湾の「開脚王子」こと李智凱選手を紹介します。

8歳の時に台湾の体操チームを取り上げたドキュメンタリー映画に出演したことがあるそうで、そこで「市場の凱ちゃん」と呼ばれていたそうです。
幼い頃からメディアにも取り上げられていたほど将来を嘱望されていた選手。

彼が一躍有名になったのは、2017年に台湾で行われたユニバーシアード(現:ユニバーシティゲームス)という大会。
この大会は2年に1度、奇数年に行われる大会で、「学生のためのオリンピック」とも呼ばれる大会です。(念のためですが「学生」とは大学生のことです。)

この大会の種目別あん馬で初めから終わりまですべての旋回技を開脚旋回で行う独特な演技を披露して優勝しました。
そこから台湾では英雄のように取り上げられ、台湾のトップである蔡英文総統からも祝意を貰っています。
そこから李智凱は勢いに乗り始めます。
2018年のアジア大会の種目別あん馬で優勝すると、同年世界選手権では種目別あん馬で銅メダルを獲得。
翌2019年の世界選手権では銀メダルを獲得しています。
東京オリンピックでの目標は「金メダルを取ること」だとしています。

さて、彼のあん馬は初めから終わりまですべての旋回技を開脚旋回で通す珍しい演技です。
今回は開脚旋回で行う技を3つ紹介します。

前回、オマル・モハメドの演技で【横向き旋回シュピンデル】という技を紹介しました。
今回はそれの発展技です。
【横向き旋回シュピンデル】をどう発展させるのかというと、手を着く位置を変えているのです。
その場で1回ひねる【横向き旋回シュピンデル】と違い、旋回をしている馬体の反対側の部分も使って横に移動しながらシュピンデルをする(1回ひねる)という技です。これは【アイヒホルン】というE難度の技です。

横向きシュピンデルのおさらい

横向きシュピンデル

そして【アイヒホルン】がこのような技です。

アイヒホルン

違いが分かりますか?
手を着いてる位置に注目してみてください。
このように、半分ひねりながら横に移動、もう半分ひねりながら元の位置に戻るという技です。「往復シュピンデル」とでも言いましょうか。


そしてもう2つ開脚旋回の技を。

以前、同じく台湾の蕭佑然選手のあん馬の演技を紹介した記事で、あん馬の超頻出技、前移動の【マジャール】と後ろ移動の【シバド】というわざを紹介しました。
実はこの【マジャール】【シバド】という技は開脚旋回で実施すると難度が上がるんです。

普通の旋回を開脚旋回にすることで難度が上がる技は、この前後移動とフロップの2種類のみです。
ほかの旋回技は開脚旋回で実施しても難度は変わりません。

D難度の【マジャール】【シバド】を【開脚マジャール】【開脚シバド】にすることで両方E難度になります。

動画の李智凱の演技では、0:40~【アイヒホルン】から【横向き旋回シュピンデル】を連続しています。
0:48~は前移動の【開脚マジャール】後ろ移動の【開脚シバド】を続けています。

手足が長く、スタイルも良く、開脚旋回の質も高く、何度でも見たくなるような華のある演技です。

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台湾はリオ五輪後に頭角を現し、ついには団体で五輪出場の権利を獲得しました。
ここ数年の台湾の成長ぶりには瞠目するものがあります。

台湾を五輪に導いたのは日本人の浜田監督の指導の賜物でした。
⇒「台湾体操を五輪に導いた浜田氏、肉体操る術が美しさ」

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追記:台湾チームは団体で決勝には進めませんでしたが、李智凱は個人総合と種目別あん馬で決勝に残りました。
特にあん馬は予選トップ通過です。
公式練習ではあん馬でもミスをして全体的にうまくいかなかったそうですが、予選本番では見事トップ通過を決めました。2016年リオ五輪で失敗した雪辱を晴らしました。


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