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(5) 女性間の内なる抗争、勃発。 (2024.12改)

選挙結果の出た翌日の月曜日、新たに衆院議員となった9名が国会に集い、人々の注目を集めていた。
衆院の税務審査会では共栄党の杜 亮磨がアイヌの衣装を纏い、社会党の前総務大臣の阪本と並んで座っていた。同じく衆院の防衛予算会議では、琉球王朝時代の正装を纏った亮磨の父親のモリが、社会党の元外相の前田と座っていた。モリに至ってはドジョウのように長い2本のチョビ髭を付けており、琉球王朝といっても属国であった清王朝の官位服を誂えたので、単なる怪しい中国人にしか見えなかった。隣に座った前田が、時折横を見ては笑っているという映像が度々取り上げられた。
国会前に社会党と共栄党の9人の新人議員が初登院した際、共栄党党首の杜 亮磨も嘗てのアイヌ男性の如く長い顎髭を付けていたのだが、髭で顔が隠れてしまい、「誰だか分からない」と国会警備の守衛さんに言われ、已む無く付け髭を外した。父親のモリに至っては、「顔は見えてますよね?」と言いながら、表情で守衛さん達を視線で威嚇したので、そのままセキュリティを通過して今に至っている。

社会党と共栄党の新人衆院議員の9名が、2台のワンボックスカーで国会に到着した際と、参加初日の議会の日程を終えた後で記者に囲まれ、お約束の様に何回も9人の集合写真を記念に収める。国会閉廷後には、越山元厚労大臣が9人を代表して取材に応じた。そして、9人の議員で両党の同一会派「しらさぎ」を結成した旨を報告する。
会派のリーダーを元厚労大臣の越山議員が務め、副リーダーにDeep Forestバンドマスターの由布子議員が就くと明かした。
その正副のリーダーの後方で杜親子が髭面のまま無反応で立ちつくしており、他の6人が腹を抱えて笑っているという映像を各局のメディアが放映する。マイクに向かっている越山も笑いを噛み殺しながら、何とか最低限の情報を伝えたのだった。            
既に議会に出席している議員にすれば、杜親子の出で立ちは礼を失しており、許し難いものだった様で「舐めている」「フザケ過ぎだ」と苦言を呈す議員が続出し、これも9人の新人議員の昼のニュースの中で放映された。
しかし、沖縄県民と北海道道民の圧倒的な支持を集めて、この場に居る父と子は意にも介さず譲らない。実際、議会の昼休みが終わり、午後の部の審査会や会議に出てくると、黒い油性マジックで顔に髭を書いて、典型的なコソ泥の様になりながら、クソ真面目な顔で出席していた。前田元外相と阪本元総務大臣が午前中以上に、隣のバカ親子と話す度に噴き出し、笑いを堪え続けることになる。
「腹が痛い。お願いだから、明日はヤメてほしい」と頼んだので、翌日の火曜は普通のスーツ姿に戻っていた。

メディアはモリのコメントを得ようと執拗にマイクを向けるが、マイクに向かうのは3人の元大臣の社会党議員か、党首の杜 亮磨議員ばかりとなり、モリは取材に応じようとしない。大人びたネイビースーツを纏い、化粧を施したサラとセーラが9人の議員の前に立ち塞がるので、2人の臨時秘書ばかりが映像に映り込む事態となる。
ネット民は見栄えの良い女性には直ぐに反応する。「あの美少女は何者だ?」と単独ニュースにまでなってゆく。連休が開ければ以降は成人秘書に変わるので、サラとセーラが人目に触れることも無くなるのだが。

ーーー

国会はGW連休の為に火曜日で閉廷し、5月6日から再開となる。大臣経験者3名を除く「しらさぎ会派」の新人議員の6人は、議員バッチを受け取って国会衆院内をレクリエーションしていた2日間となった様なものだった。
国会が連休で中断となった夕刻、富山から新幹線で駆けつけた妻の蛍と秘書の諏訪結子をサラとセーラが東京駅丸の内北口改札でピックアップすると、モリ議員が待つワンボックス車に乗り込み、出発する。モリ自らが運転席に座って居るのだが、実はハンドルに手を添えているだけでAIが操作している。道路交通法違反にならないが為の措置で、意識は後部座席の妻たちとの会話に集中していた。
蛍たちが上京した理由は、来日中のブルネイ国王夫妻を歓迎する皇室主催の晩餐会に夫婦として出席するためだった。一旦赤坂の議員宿舎に戻ると、夫妻は新調したタキシードとドレスを議員宿舎で纏い、蛍の秘書の結子もスーツ姿から華やかな衣装に着替えると夫妻の秘書として同行となり、3人で歓迎式典が行われる赤坂の迎賓館に向かう。未成年者である護衛役のサラとセーラは、労働時間超過となるので議員宿舎で留守番となった。                    タクシーで到着した迎賓館に初めて臨む3人は、上下左右を見回しながら移動し、完全にお上りさん状態となる。諏訪結子は関係者控室でPCを拡げて待機となり、夫妻は参列者と共に宴会場となる部屋に導かれる。
首相夫妻を始め、ブルネイと関係のある石油会社等の企業の会長、社長などの面々が列席している中で、背の高い杜夫妻が視線を集めてしまう。視線の矛先から開放されたのは、天皇皇后両陛下とブルネイ国王の一行が部屋に入ってきた際となる。                    ところが第五王女のカリアが、モリと蛍に手を振るならまだしも、あろうことか歩きながらピョンピョン跳ねるので、再び目立ってしまったのだが。
沖縄でゴールデンウィークを過ごす予定でいた第五王女のカリアは、モリに説得されて、上京し月曜からブルネイ大使館に身を寄せていた。
歓迎式典参列を渋っていたカリアが提示してきた上京の対価が「一日デート拘束権」だったので、仕方なく要求を飲んだ。王妃である母親とブルネイ大使館の護衛担当も今後は共に行動するので、デートと言ってもたかが知れているだろうとモリは踏んでいたのだが、後に、想定外の状況に追い込まれることになる。       

天皇陛下の乾杯の挨拶で会が始まると、寿司屋か居酒屋やエスニック料理店くらいしか訪れた事の無い夫婦なので、初めての本格フレンチなるものに舌鼓を打っていた。暫くすると、王太子に天皇皇后両陛下の対応を任せた国王と第三王妃と娘のカリア王女が、杜夫妻に後ろから近づいて来たので、夫妻が慌てて立ち上がり、談笑する様が放映される。
「王女殿下は富山の県立高校に留学中で、杜家の子女とご学友という関係であらせられます。今回の来日の目的の一つは、王妃様も娘の王女殿下と共に日本に滞在して、留学中の王女殿下を生活面で支えたいという母親としての願いを実現する為なのだそうです。フライトアテンダント職のご経験のある王妃様は、航空部門と海運部門を持つサザンクロス社の名誉会長として就任され、事業家として活躍されます・・」的なコメントと共に。ブルネイ王家から皇籍離脱をして、杜家に輿入れする第三王妃だと知っているのはこの場では5人だけ、となる。蛍は王妃のドレスを褒め、王妃は蛍が初めて誂えたドレスを・・といっても、既製品を購入しただけなのだが・・「慎ましいあなたらしく、とても似合ってます」と言って王妃の頭のティアラを蛍に被せながら言う。

「今日からあなたは私の上司です。不束者ですが今後とも宜しくお願い致します。これは私からのお礼です」と、突然ダイヤモンドが散りばめられた冠を頭に載せられた蛍は慌てる。
「お待ち下さい、王妃様。この様なものは私には不要です。そもそも、身に付けるような場がございません」と少々大きな英語で捲し立てたので、会場内に聞こえてしまう。  

「ホタルさんはアジアの英雄の妻君なのです。今後アジアの王室に招かれることもあるでしょうし、その際にお使いになられると宜しいのでは?」
「そういう場面が生じた際には、王妃さまが参列なさってください・・」
そう言ってしまってから、蛍は有り得ない発言だったと即座に思い返す。夫は国王とこちらを見て驚いている。王妃が王籍降下して、杜家に輿入れするのは内密の話なのだ。ワインで火照っていた蛍の頬は真っ青になる。

「あら、ホタルさんはご冗談がお上手なんですね。そうですねぇ、英雄の奥方のポジションを私に譲っていただけるのでしたら、喜んで列席致しますけど・・」 
王妃が片目を瞑りながら、そうフォローし終える前に、娘のカリア王女が合いの手を入れる。
「待ってママ。英雄の妻としてのお役目は私が担います。ねぇ、良いでしょ?ホタルママ?」
「・・そうですね、母娘間で冠等の宝具を継ぐのが自然なのでしょう」       
蛍はそう言いながらティアラを手に取って、カリア王女の頭に被せる。       

カリアがこの場に居て良かったと、国王もモリもホッとする。自らのティアラを蛍に譲ろうとした王妃の行動も去ることながら、蛍の失言をフォローした王妃の発言がジョークだったとする為には、娘へのティアラ譲渡という決着がこの場では最善策だった。
四方八方丸く治めたばかりか、密かに狙っていたティアラを得て得意になったカリアは調子に乗る。モリの腕を取って蛍に向き合うと、
「では、そういう事で。私めが第二夫人で宜しいですね、ホタルママ?」と言ってのける。
国王は苦笑いするが、蛍は応えられずに笑うしかない。
カリアが組んだ腕を締め付けてドレス越しの下着を感じない柔らかな胸を押し付けてくるので「正気か?」と警戒しながらも、モリは微笑むしかなかった。    

王族と杜家の寸劇をメディア各局が放映する。「ブルネイはイスラム圏でもあるので、複数の妻を持つ家庭もある」と注釈を付けて。
カリア王女の可愛らしい振る舞いに、微笑む周囲という格好で放映されたが、最も影響が出たのはモリを取り巻く女性陣だった。     
カリアが発した「第二夫人」の位置を王妃が担うのは確実だろうと受け取る。これまで御三家をはじめとする既存のモリの愛人達には順位は存在しなかった。しかし、第二夫人という地位が生じた以上、愛人枠での「順位付け」に、今更ながらだが焦点が集まる様になってしまう。江戸期の大奥での女性間の抗争までとはいかないまでも、互いの中で疑心暗鬼が少なからず生じ、様々な駆け引きや出し抜き行為が頻繁に起こる可能性を女性陣の誰もが想像した。

翌日の水曜の午後、富山に戻る蛍と諏訪結子を見送ったモリは、北品川のビルマ大使館に移動してビルマ大使と会談し、続いて、赤坂の料亭で米国大使とオーストラリア大使と会食をしたと報じられる。会談や会食した際に何が話し合われていたのか、日本の記者は追求せず、憶測するだけだ。議題や内容を知ろうと政府関係者や外務省職員がビルマ大使館員とオーストラリア大使館員、米国大使館員に聞き込みにゆくが、「友人同士の夕食会なので、今後も継続的なものとなるだろう」と3箇所から同じように躱されてしまう。

翌木曜は、帰国の途につく国王と王太子の見送りの為に王妃と王女の側使えとして羽田に向かい、国王一行を見送った後、第三王妃と第五王女一行と大学生と高校生の養女達と共に、プライベート機のプロペラ機SAABb800改良型に乗り込み、那覇空港へ向かった。この連休中、新人の9議員はそれぞれの選挙区内に滞在することになっていた。 

ーーー

社会党・共栄党の知事や市長、そして今回補選で当選した議員達の秘書にはAIが組み込まれた各種端末が割り振られている。このAIは、県庁や市役所の各部門に配属されている臨時職員が利用しているAIをベースとしている。臨時職員は正規の公務員ではない。平成期に跋扈した契約社員と同じ扱いで、各役所からすれば正規の職員の給与体系ではない。しかし、臨時職員はプルシアンブルー社員でもあるので、福利厚生面に関しては正規の公務員よりも上回る。役所向けのAIが進化する上で利用者でありながら「開発者」に準ずる扱いになるので、年2回、プルシアンブルー社から潤沢な賞与が提供され、正規の公務員よりも多い収入を得ている。
県と市の地方行政に精通したAIを得た社会党と共栄党の知事、市長、そして国会議員が、秘書にAI端末を施せば、極端な話、秘書は誰でも務まるという状況になっている。
知事や市長にすれば、勝手知ったる人物に秘書をして貰ったほうが好ましい。それ故、富山市長の杜 蛍はママ友の2人を秘書に据え、富山県知事の金森鮎は娘が富山市長になったので、新たな秘書を迎えた。モリの第2秘書・安東咲子の姉の咲実と、咲実と気仙沼工場の同僚で従姉妹の、進藤夏美だ。杜家と金森家、そして村井岐阜県知事と小此木名古屋市長の4ポジションで秘書をローテーションする発案を鮎と娘の蛍がしたのも、大奥の女性陣が求めるモリの秘書の座を公平なものとするためだった。具体的には半年おきに秘書をローテーションして、モリと接する時間をそれなりの内容とするという主旨だった。

愛人枠を考案した2人が決めたルールなので、モリ自身は従うしかない。
妊娠が判明したモリの第二秘書の安東咲子は産休期間に交代するとしても、第一秘書の屋崎由真は内心穏やかでは無い。若い学生の養女達を除けば、30代に差し掛かった由真は40代前半のママ友達より一回り若い世代とされ、妊娠は後回しとされてきた。        
そこへ来て、この10月にはモリの傍から離れてしまうと聞けば、どうしても焦ってしまう。更に30代後半の王妃が”メンバー”に加わり、ビルマの山岳民族の女性達が加わるので、”夜のお勤め”に変化が生じると見ていた。
今回特例とは言え、ブルネイ国王夫妻の来日も兼ねて、国会滞在中のモリの秘書に連休前までの第5王女の侍女のユリカと、護衛も兼ねてシャン族のサラとセーラが臨時秘書として上京した。
英語も堪能なAIが秘書業務を仕切るので、3人でも違和感無く出来てしまうし、既に3人共”愛人枠”でもあるので、夜間の公務上の問題も無かった。つまり、秘書は誰でも担えるという危機感が、公設秘書である由真のプレッシャーとなっていた。
秘書の交替制が本妻からアナウンスされるのと同時に、由真の妹の麻央が島根2区の補選で議員になったのを受けて、「次は妹の秘書を勤めるのが良いのでは?」というアドバイスも女性陣からあった。国会開催中は議員会館と議員宿舎で、モリとも時間を共有できるだろう、という計らいが込められていた。
同時に、由真はモリの公設第一秘書という肩書は想像以上の役職であると痛感していた。地域内では非常に強い影響力のある肩書となったからだ。実際、豊見城市の議員事務所兼住居となった元ホテルには、企業や民間団体がひっきりなしに陳情に訪れる様になった。前職の与党議員が取り続けてきた陳情スタイルを踏襲しているからなのだろうが、とてもではないが安東咲子との2人の秘書体制では捌ききれないと判断していた。
急遽、ビルマの山岳民族の研修講師役として沖縄滞在中の岐阜県知事の妹の村井志乃と”御三家”次女の平泉理子の2人を第三秘書、第四秘書として手伝って貰い急場を凌いだ。  

社会党と共栄党の事実上の棟梁だとモリが見做されているのもあるだろう。共栄党党首の亮磨の北海道事務所やDeepForestのメンバーの各事務所でも、少なからず陳情に来る人々が居るという。共栄党がそれだけの党となり、認知度も高まった、というのもあるのだろう。議員が国会にいて主が不在期間であっても、各地の事務所は大忙しだったのだ。      

一同が揃った夕食時、沖縄入りした高校生・中学生がモリを囲みながら食事を摂るが、夕食後の飲酒タイムとなると、酒が飲める大学生達が中心となってモリを囲むようになる。  
由真はその場で唐突に進言する。      

「公設第一秘書としての役割を私に担わせて下さい。沖縄の事務所は私が責任を持って守りますから」と真剣な顔で言うので、第二秘書の安東咲子も、臨時秘書の村井志乃と平泉理子も驚く。
由真が「正妻以上」と言っても過言ではないポジションをモリに要求したからだ。「確かに、国会議員となった彼に最も近い存在と言えるかもしれない」と、岐阜県知事秘書の村井志乃は思ったし、由真に先行されて悔しかった。第一秘書である由真だからこそ直訴出来る話であり、「モリの傍に居続けたい」という彼女なりの本能的な欲求だったからだ。    

「由紀子さんが出産後に戻ってきたとしても、第一秘書の役割は譲らないって顔してるよ。由真ちゃんさ、第二秘書であらせられる咲子さんには相談したの?咲子さんも突然の発言で驚いた顔してるよ・・」
モリが真顔で返すと、公設第二秘書の咲子から、衝撃の発言が飛び出した。

「あの・・午後にお時間もらって産婦人科に行ってまいりました。妊娠2ヶ月でして、11月末に出産予定です・・あ、蛍ちゃんには妊娠した旨、伝達済です・・」第二秘書の安東咲子が恥じらいながら報告すると、女性達から歓声が上がる。咲子の高校生の娘のミカとサキは呆気に取られた顔をした後、姉妹で顔を見合わせて互いに涙が出てきたので抱き合っている。
「御三家」と言われていた一角に、新たに安東家が加わったからだろう。咲子の突然の妊娠話に、新たに”認知”の必要性を感じた男は、動揺している様に女性陣には見えた。

「先生、第一第二の秘書はともかくとして、沖縄事務所には秘書の肩書を持った者が4名は必要です。国会期間中の秘書も含めると、6名は最低でも必要になると考えます。由真っちは先生に付き従って沖縄と国会間を移動する専任秘書で、由紀子さんは筆頭秘書として、この沖縄事務所をご担当いただく方が良いのではないでしょうか?で、他の4名の秘書は交替制とするんです」宮城から助っ人としてやってきた平泉理子が提案する。

「秘書6人体制は予想もしなかったなぁ・・あ、咲子さん、後で会話しましょうね」苦笑いした顔でモリが言う。

「4人のうち、一人もしくは2人はサラとセーラみたいに護衛役が可能なメンバーにした方が良いと思います。と言っても、サラとセーラは来月から学校ですから、成人女性の方がいいでしょうね。 
護衛役も固定とせずに、例えば1ヶ月おきに4交代制にするんです。護衛って結構激務だと思うんですよね」
 狩猟の弟子でもある村井志乃に言われ、モリも頷く。そして、隣りに座って居るサラに英語で尋ねる。護衛とは言わずに「メイド係を隔週交代制にするって言ってるけど」とモリが訳してしまうので、意味が大きく変わってしまう。問われたサラが嬉しそうに発言する。         

「それでは、夏休み等の長期の休日期間、私達シャン族の学生組で順番に担当します!」と喜んだ顔で言うので、「やっぱり夜専任メイドと勘違いしている」と女性陣は顔を見合わせて苦笑いする。誰もが主の寵愛を受けたいのだ・・・

「いずれにしても、鮎先生と蛍先生に沖縄事務所の状況をご報告して、事務所のスタッフの見直しを提言します。陳情の方々が今後も増える様ですと、志乃ちゃんと理子クラスの人材が秘書として必要となります。
事務所にとってはメンバーを固定した方がいいんでしょうけど、メンバーを固定するとなると、やっかみますからね。特に女子大生と女子高生が」
由真が姪っ子で、養女筆頭の源 玲子を見据えながら言うと、玲子は由真に向かって中指を立て、目を瞑りながら可愛く舌を出してみせた。

この場で唯一の男は微笑むだけで何も言わず、黙っていた。

(つづく)




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