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ひきこもり状態の青年が葛藤した自立と自尊心【30歳発達障害男性】
※事例に関しては個人が特定されないよう一部脚色して作成しております
先日、ありがたいことに、株式会社ウチらめっちゃ細かいんでの代表取締役社長の佐藤啓氏にお話を伺う機会をいただくことができました。
株式会社ウチらめっちゃ細かいんでは、ひきこもり状態にあった方々が、在宅ワークを主体として自ら運営・業務を行う、日本でも稀有な組織です。佐藤氏の著書「ウチらめっちゃ細かいんで」を拝読すると、会社の運営にあたり紆余屈折しながらもその一貫した思いや、取り組みにあたってのご苦労やそれらの課題に立ち向かうスタッフそれぞれのプロセスが描かれ、大きな感銘を受けました。詳しい内容はぜひ一読いただきたいと思いますが、印象的だったのは「ひきこもりを否定・治す」のではなく、ありのまま受け入れること、そして、ビジネスという形を保持しつつも、彼らの「居場所」作りを最優先に考えられていることでした。そこへ描かれている思いは我がCOCOLOLAの基本理念である「共感・共有・安心感」に確かにつながる思いでした。
さて、私も新鮮な気持ちでこの名著を読み進める中で、かつてサポートさせていただいた一人の青年のことを思い浮かべました。
以前就労支援事業所の責任者として業務していたころ、他の相談機関から紹介された、一人の青年H。彼は「軽度の発達障害」と言う診断名がついていましたが、状況としては言うまでもなく「ひきこもり状態」でした。そんな彼がふとしたきっかけで「このままではいけない」と思ったのか、たった一人で相談機関に相談に訪れ、自立に向けた訓練が必要と言うことで私に託されました。
本人から話をうかがうと、将来に向けた自分のライフプランをしっかり胸に秘めているものの、心と体がアンバランスで、なかなか外へ足を向けることができないという。それでもその思いは確かなものであったと同時に、「軽度発達障害」と言う診断が下されたのはつい最近と言うこともあり、ぬぐいきれない自分自身のプライドも感じました。私はまず彼のプライドを尊重しつつ、自ら行動に移せたことを高く評価。彼が思い描く未来に向かう準備のため、現状昼夜逆転している生活をまず立て直すべく、毎日就労支援事業所に決められた時間に通うことを共通の課題に設定しました。
ここで数多くある福祉支援事業所がしてしまいがちなことが一つ。
たとえば「毎日就労支援事業所に決められた時間に通うこと」を目標として設定する際に、そこに本人の意思が汲まれているか。私が就労支援を行っていた頃、常に疑問に感じていたのは「働くこと」=「毎朝6時に起き毎朝9時に会社に出勤し17時まで働く」と言う既成概念です。確かに日本の多くの「就労場所」ではそのような生活が求められます。だからと言って、それに合わせた生活リズムを支援者側で当たり前のこととして強制するのは若干の違和感を感じます。例えば私自身も障害福祉という分野で長く働いてきたこともあり、日々出勤時間も異なるし、それにあわせて朝起きる時間も夜寝る時間も変わります。社会には夕方からお仕事を始める人もいれば、夜通しお仕事をされ翌朝帰宅する人もいます。休日も必ずしも土日とは限りません。ライフスタイルによっては週3回ほどの会社勤務プラス自営をされる人もいることでしょう。大切なことは、そのライフスタイルを「自分自身」が決め、それに向けた目標設定をすることです。
先述の株式会社ウチらめっちゃ細かいんでの佐藤社長は、ひきこもり状態の人に対し、「在宅ワーク」というシステムを大いに生かし、「ひきこもってても良いんだよ」といういわば逆転の発想で、多くのひきこもり者の潜在的な意欲を汲み、そのスキルをビジネスに生かしつつ、彼らの「居場所づくり」に貢献されました。まさに「既成概念」にとらわれず、本人たちの想いに寄り添った考え方でしょう。
私がお預かりした青年Hは自分自身で将来の未来図を描いてこられたため、まずそこに向かうために必要不可欠な要素として「決められた時間毎日出勤する」ことを目標としました。実際に自分自身で必要と感じ、その方法としての具体的な行先であったため、彼も納得し、必死で取り組んでくれました。
「朝起きて、来ることが目標」仕事を目指すうえでそんな簡単な課題で良いのかと言う声もありましたが、それまでの生活状況から、彼には何よりも「難しい」課題でありました。そのため、彼の評価として、まずこの目標を達成できたかどうかを最も大きなポイントとし毎日フィードバックし続けました。自分自身がその根拠に納得し取り組むこと、そして「起きること・来ること」を自分なりに必死で頑張ったことに対し、ありのまま受け止め評価してくれる、そのことが彼の生活状況をグーンと向上させたのは言うまでもありません。
もちろん、時として達成できなかったこと(起きれなかった、来れなかった)こともなかったわけではありませんが、そのようなときは、何時になったとして必ず電話連絡することを求めました。起きれなかったのを咎めるのではなく「報告」も一つの評価ポイントと換算することで、結果無断欠席は皆無でした。
もともと仕事上のスキルはそれなりのレベルを持っていたため、そこについてはあまり追求せず、①生活状況の改善②自分の努力に対する評価・フィードバックを繰り返すことで、何年もひきこもっていた彼が毎日しっかりと事業所に来所できるようになりました。彼にとっては画期的なことだったと思います。
ところが、組織という壁が彼自身の歩む方向にも影を落とします。
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