「サービス管理責任者が足りない」その声の裏側にある現実【part2】
以前同様のタイトルでコラムを投稿したところ、適度な反響があった。
サービス管理責任者(以下サビ管)が足りない理由として、要件のハードルの高さなどを指摘したコラムである。
同じ悩みを抱える障害福祉事業所が多く存在するということを痛感する。
もちろんサビ管不足の理由はそれだけではない。
ここ半年ほど、私のところにも頻繁にサビ管(あるいは児発管)を紹介してほしいとの相談が寄せられるようになった。
私の事業ココロラは人材バンクではないので実際に紹介することはできないのだが、その切実な悩みはデバイスを通しても痛烈に伝わってくる。
私自身もサビ管が必要な事業所のマネジメントを経験していることから他人事とは思えず、何とかしてあげられないものかという思いは偽りない。
はっきり言うと、私がこれまで受けたどの相談においても誤った募集の仕方をしている事業所は皆無であり、現段階に行きつくまでに様々な募集の取り組みを施してきたにも関わらず反応が乏しい(というかまったく反応がない)。
正直、私の方でもその焦りに耳を傾けつつ「人事を尽くして天命を待つ」くらいの助言しかできないのが現実であり、強く無力感を感じる。
サビ管は本当にいないのだろうか。
私の知っているとある組織ではそこそこの頻度で次々と新たな事業所を立ち上げ続けているが、聞くとサビ管自体はなんとかその都度確保できているとのこと(そもそもできなければ立ち上げることもかなわないが)。
毎年行われる公的なサビ管研修では地域中の事業所から多くの応募があり、定員を超え参加できない支援者も存在する。
この状況は私がサビ管を最初に取った10年以上も前からそうであった。
そう考えると、決してサビ管自体がいないわけではないが、例えば「あなたも福祉事業で年商〇〇、必要なのはサビ管だけ!」みたいな、理想だけで煽る広告などたまに目にすることもあり、業界未経験の経営者はサビ管の採用を安易に考えてしまうこともあるかもしれない。
では求人をかけても応募がない理由はどのようなことが考えられるか。
①給料が低い
②事業所に魅力がない(交通が不便、建物が古い/狭い 等)
③運営会社に魅力がない(怪しい・聞いたこともない企業で不安 等)
④求人自体が見られていない(活用求人媒体が少ない・目立たない)
ざっとこのあたりはなんとなく思いつく。
この4つの理由が発生する根拠として、競合他社との兼ね合いがある。
昨今は多くの民間会社も福祉事業に参入してきており、会社規模自体がかつて独占状態だった福祉法人格よりスピード感をもって拡充している。
つまり、ライバルが増え続けているということ。
給与面や職場環境・組織の規模など、あらゆる面で比較がなされると思って良い。
ただでさえサビ管は引く手あまたであり、その中でより良い条件へ傾くのは必然的な流れである。
一方で、特に経験のあるサビ管はそういった条件よりも、「自分にとって働きやすいか」を重点的に探ることも多い。
何をもってして「働きやすいか」は個々に異なる。
なので、企業体力がないからとあきらめる必要はなく、「いかに働きやすい職場か」をPRしていくことも効果的だ。
まずは経験者サビ管が転職を決めるその思いを読み解くことが必要であろう。
サビ管業務の苦労は経験者であれば身をもって体験している。
彼らの転職理由はそれまでサビ管を務めた職場において何かしらの不具合があったからこそであり、だからこそもし次もサビ管としての役務を選ぶならば、その眼はより厳しく業務環境を探ることと思われる。
あくまで私の印象に過ぎないが、
「新規立ち上げ」→人手不足に陥りやすく自分が仕事を抱え込まされる
「運営会社が福祉業界ではない」→何かあっても専門的に頼れる人がいない
このあたりは経験サビ管からよく聞かれる不安である。
つまりこの不安を解消する具体的なシステムがあると少なからず印象は良くなるだろう。
特に新規立ち上げの事業所に関しては経験のあるサビ管に越したことはない。
やはり未経験のサビ管に1人で一から始めさせるのはかなりハードルが高い。
前回のコラムでも述べたが、サビ管の実務に関しては正直サビ管研修では教えてくれないことがほとんどだ。
要は、個別支援計画の作り方や支援会議の運営方法等が中心で、その他は「サビ管とはこうあるべき」の抽象的な話が占める。
だからこそサビ管研修自体に「運営」についての講義、例えば「常勤換算」「各種加算」「サービス実績記録」「区分認定調査」などについても、実際現場に配置されてから「初耳だ」というサビ管が多く、研修時にこのあたりからもっと深く教え込むべきだと思うのである。
これらは”管理者”の業務だと言っても、サビ管も知っておくべき事項に違いない。
サビ管研修についてはお店で一杯飲みながら語り合えば多分きりがないだろう。
私がもう少し人脈が広く、先立つものを持っているならば「サビ管(児発管)バンク」なるビジネスでも立ち上げてみたいと思う。
そのくらいこの領域にはニーズがあり、よほど制度が大きく変わらない限りしばらくはこの状態は続くであろう。
現状は地道に求人を仕掛けていくほかなく、加えて知り合いからの紹介や、運営者自身がサビ管をとってしまうという方法が現実的であろう。
なかなか近隣の事業所に「サビ管いませんか」と言って回りづらいこともある(他の事業所もサビ管は手放せない資源)。
藁をもすがりたい気持ちは十分理解できるものの、だからといって応募さえあれば誰でも良いから採用してしまうというものではあってはならない。
前回のコラムで述べたようにサビ管はその事業所の「顔」になるべき存在である。
一筋の希望という点では、現制度ができてからもう10年以上経過し、サビ管自体はそこそこ全国にそれなりの数で存在している。
いわゆる潜在的サビ管の数も計り知れない。
であれば彼らにいかにアプローチできるか、アプローチしてもらえるのか。事業所スタートアップの最初にして最大の課題であるが、辛抱強く乗り越えてほしい。
その為にも、未来のサビ管が安心していかんなく力を発揮し、安定して任務を行い続けられるよう、環境整備に力を注いでほしい。
結論のぼやけたコラムになってしまい大変恐縮だ。
今はあきらめず粘り強く、ただ分析も忘れずに、ということくらいしか言えない。
多くのサビ管が多くの事業所で活躍し、この業界の未来をもっと明るくしていくことを願ってやまない。