子どものネット利用について保護者はどのタイミングで学ぶのが最適か
「子どもたちのネット・ゲーム利用」については、最近では小学校段階でも、保護者向けの情報提供が当り前になりつつあります。日々変化していくインターネットについて、保護者はどのタイミングで学ぶのが最適なのでしょうか。
学ぶべきことはかなり曖昧かつ幅広い
子どもたちのネット利用について、保護者はそもそも、どんなことを学べば良いのでしょう。
たとえば新型ウイルス禍に絡めたこちらの記事では、子どもの利用に関わるリスクとして
知らない人と性的な画像を交換したり公開されたりすることや、ネット上のいじめに巻き込まれること、不適切な動画に触れることなど
という、三点(ネット利用経由の性暴力被害・ネットいじめ・子どもにふさわしくないコンテンツの閲覧)を挙げています。
その上で、保護者に求められるアクションとしては
ネットを安全に使うための手段に精通することやネット上のリスクを知ること、それに子どもと十分に話し合うこと
という、やはり三点が挙げられています。
あっさり書かれていますが、
◎ネットを安全に使うための手段を知る(しかも精通する)
◎ネット上のリスクを知る
◎子どもと十分に話し合う
というのは、なかなか相当に幅広な表現です。
また、現実的な取り組みの順序としては、
1「リスクを知る」→2「対策を知る(=安全に使うための手段を知る)」→3「子どもと十分に話し合う」
という感じでしょうが、多くの保護者にとっては、そもそも1の段階から、「ボンヤリとしか分からない」とか、「たぶんこんな感じだと思うが自信が持てない」というのが実情でしょう。
まあユニセフとしては、新型ウイルス禍で「子どものネット利用時間が伸びる→その分リスクも高まる→保護者にそのことを知らせたい」といった問題意識からの、最低限の働きかけということなのかもしれませんが。
少なくともこれだけでは、もともと不安を持っている保護者をさらに怖がらせるだけで、そのまま「子どもと話し合って」も、あまり実効性は高くなさそうです。
ネット上のリスクは一様ではない
しばしば「ネット上のリスク」と簡単に一言で表現されてしまいますが、実際には子どもの利用内容や利用時間によって、上記記事に挙げられている三点以外にも、いろいろなリスクを考慮する必要があります。
たとえば、利用時間そのもの(「長い時間使いすぎる」)ですら、多くの保護者にとって、ごく身近なネット利用リスク(「健康や学習、心身の発達に悪い影響があるのではないか」)と感じられるものでしょう。
そして、利用内容と利用時間を大きく左右する要因としては、年齢(学齢)・性別・周囲の子どもの利用内容などが挙げられます。
たとえば男子であれば、「ゲーム(最初は専用機)」→「YouTube」→「LINE」→「TwitterやInstagram」のような流れで、利用が広がっていきます。女子ではゲームよりもYouTubeが強く、「TikTok」なども加わってくるでしょう。
年齢の方は「未就学〜小学校低学年」→「小学校中学年〜高学年」→「中学生」→「高校生」くらいに分けることができます。この区分に、利用機器や利用内容を当てはめていくことになりますが、学校ごと地域ごとに、ずいぶんと差がある部分です。
年齢に合わせて複数回の学びが必要
したがって、保護者が子どものネット利用について学ぶのであれば、少なくとも、学齢別の典型的な利用内容に基づいた形であるべき、ということになります。
子育てに突入する時期に、それらをまとめて学習できればもっとも効率的なのでしょうが、なにしろネット上での大人と子どもの区切りにあたる18歳までの長期間にわたる内容ですから、かなりの分量になります。
しかし、いざ目の前に課題が見えてこないと、学習の意欲など湧かないのが普通の人間です。人気サービスや機器も刻々と変化するのがいまのインターネットですから、その意味でも10年以上先を見越した学習というのは難しい。
それぞれの節目ごとに、その少し先に直面するであろうリスクと対処を学ぶというのが現実解になりそうです。
たとえば、「子育て開始期」「小学校入学前」「小学校中〜高学年期」「中学校入学直前」「中2になる前」「高校に進む前」くらいの節目で、それぞれふさわしい学習の機会を見つけるのが理想的といえるでしょう。
保護者の役割はリスクと対処を学ぶことだけではない
実のところ、冒頭のNHK記事の元になったであろう、ユニセフの報告書(PDF全文がダウンロード可能)を紹介するためのブログ記事
では、「子どもたちのオンラインでの安全」のための、具体的なアクションとして、
1. Keep them safe with open communication
2. Use technology to protect them
3. Spend time with them online
4. Encourage healthy online habits
5. Let them have fun and express themselves
の5つが列挙されています。(英文の読解がシンドイ場合は、Googleの翻訳機能などを使うとラクに文意を把握できます。)。
ここではそのいずれもが、日本で子どもとネットについて言われがちな「保護者がリスクを学び、対処(子どもを保護)する」という一方通行の文脈とは異なるところに注目したいと思います。
一貫して「Work with your child(子どもと協力して)」「Help your child learn(子どもが学ぶのを助ける)」「Spend time with your child(子どもと一緒に時間を過ごし)」「Encourage your children(子どもたちを励ます)」のような表現が繰り返し使われているのです。
インターネット利用では、たとえ子どもであっても、自己決定が常に求められます。知識だけでなく、実地の利用経験を通じて、その力を伸ばしていくべき主体は一人ひとりの子どもです。
保護者にはリスクの理解も対処(予防)も必要ではあるものの、最も期待されている役割は、わが子の監視や保護ではないということを、あらためて強調しておきたいと思います。子どもたちと、日々一緒に学ぶ、一緒に楽しむことが期待されているのです。