太陽トーク《制作チーム編》vol.2|それぞれの「得意」を活かしながらも一体感をもって進む。
連載【太陽トーク】では、映像制作現場の話を中心とした太陽企画の社員インタビューを紹介しています。
今回は、某清涼飲料水メーカーから発売される新商品の広告を手掛けたチームのインタビュー。海外のアニメスタジオともコラボした大規模プロジェクト。多々ある難関をくぐり抜け、オリジナリティに溢れる映像を作り上げたプロデューサー島田、PMチーフの大竹(現在はアシスタントプロデューサー)、同じくPMチーフの久保田に話を聞きました。
(※このインタビューは弊社リクルートサイトで公開している記事を展開したもので、2022年2月に実施しました。)
── プロデューサーの島田さん、このお仕事の概要から伺いたいと思います。
島田:某外資系飲料メーカーが手掛ける新商品のアルコール飲料を、周知させるための映像制作でした。CMに加えてブランドムービーにSNS動画など、ボリュームの大きな案件でした。各技術スタッフの手配にキャスティングなど準備段階から大忙しです。今回はチーフが2名の体制を組み、CMを大竹くん、ブランドムービーを久保田さんに仕切ってもらいました。新商品なので売れて欲しいなって想いもあり、そのためにもみんなが一枚岩になって取り組んだ案件でした。
── それぞれの担当でどのようなチャレンジがありましたか?
大竹:
CMとブランドムービーそれぞれに監督が付きますが、世界観は共通しています。同じ美術を使い、同じキャストで撮影をしたりと、足並みを揃える必要もあって進行管理が大変でした。
島田:
実写とアニメーションをミックスした演出アイデアと、クリエーティブにもこだわっていました。アニメーションに関しては、監督からの指名でブラジルのスタジオに依頼することに。コミュニケーションはもちろん英語になるので、大竹くんのスキルがとても活躍したよね。
── 大竹さんは海外在住経験があって、日英のバイリンガルPMですね。
大竹:
小学校を卒業するまでアメリカに住んでいたこともあって、海外のプロダクションが日本で撮影する案件に関わることが多いです。時差を考慮した進行管理をしなければいけないので、サンパウロと日本の2つの時間軸で進行表をつくり、しっかりと進行管理ができるように一番気を使いました。
島田:
限られた時間の中で段取り良くすすめるのは、PMとしてのスキルが求められます。
大竹:
ブラジルのスタジオに加わってもらう狙いは、クリエーティブの面でのキーワードの一つ「西海岸」を演出することでした。ブラジルのスタジオが加わることで使う色や動きなど、日本的ではないエッセンスを加えることができたと思います。ブランドムービーはどうだった?
久保田:
ブランドムービーで描くのは、CMの世界のバックストーリーでした。基本はCMの世界観を受け継ぐのですが、担当する監督の個性もでる映像に仕上げたいですよね。監督と相談をしてエモーショナルな部分を前面に出した演出方向に舵を取りました。ストーリー作りはもちろんのこと、16mmフィルムでの撮影に挑戦しています。デジタルではないフィルムの質感が懐かしさを掻き立てる映像になったと思います。それと飲み物が出てくるシーンが多いのですが、美味しそうに見えるように炭酸の質感をはじめ数々のテストをしました。
── 限られた時間でもクオリティを諦めない姿勢が伝わっていきます。試行錯誤も多かったと想像します。
久保田:
私は、入社して初めに配属されたのがWeb系のプロジェクトが中心の部署でした。扱う種類も多岐に渡り技術的にも日進月歩な環境で、みんなで知恵を絞り課題解決をする能力が身についたんじゃないかと思います。美大を出ていることもあって、ちょっとした小道具や仕掛けを作ることが大好きで、テスト段階の試行錯誤でもそういうスキルが役に立ったと思います。
島田:
この仕事には制作部にとって必要なスキルがすべて詰まっていると言っても過言ではありません。その上にタイトなスケジュールという時間の足かせも。そんな時こそ制作部の知恵が効いてくるし、チームが一枚岩になって向き合うことで乗り越えられる。結果、商品に合ったユニークな映像が作れたと思います。
それぞれの立場で仕事をし、連携していく。
有機体のようなチーム
── それぞれの立場でしっかりと仕事をしながらも、一つの有機体のように連携していくのがとても印象的です。PM、アシスタントプロデューサー、 プロデューサーの仕事をどう捉えていますか?
島田:
PM は現場の一番の旗振り役。監督やカメラマン、スタッフらと密にコミュニケーションを取りながら指揮していく役割です。プロデューサーはプロジェクト全体のクオリティ・進行・予算の管理をしていくので、視野を広く持つ必要があります。携わるスタッフの労働環境などに注意を払うことも仕事の一つですね。それぞれの役割があって、それらが上手く噛み合って回っていくことが、いい作品づくりにつながるのだと思います。
大竹:
PM は技術者ではないので、実際にカメラを操作したりすることはありません。プロの技術者と連携して現場を回していく役割だと考えています。伝え方ひとつで関係性も変わってきます。自分が直接的に手を動かさないけど、技術スタッフとの責任はフィフティフィフティ。みんなが一つの方向に向かって一丸となれるように環境を整え、円滑なコミュニケーションを築くことがPMの大きな役割だと思っています。
久保田:
制作部はPMチーフがいて2nd、3rdという体制が組まれています。年次が低い社員は2ndや3rdから入り経験を積みます。撮影の準備や打ち合わせの準備だったり、チーフのサポート業務がメインです。撮影現場では、チーフが監督の横に付き、2ndがカメラ横で対応をし、PM同士連携を取って進めていく、そんな役割分担になっています。チーフになると監督との距離感もぐっと近くなるので、監督が作りたいものを理解して、どうすれば実現できるのか予算とのバランスを考えます。制作陣の「こうしたい」という想いとクライアントからのリクエストの板挟みになりながら(笑)、折衷案を考えたり頭を使う業務が増えてきたと感じています。
島田:
監督やカメラマンとは PM 時代にすごく仲良くなるんですよ。それは後々の自分の財産となります。プロデューサーになるとクライアント・代理店とのコミュニケーションも大事になるので、意識が向く方向が変わってきます。
── アシスタントプロデューサーはどのような役割を担うのでしょうか?
島田:
PM から プロデューサーになるための助走期間のような位置づけです。それまでは現場の方向だけを見ていればよかったけれど、もっと視野を広げてものごとを考えなくてはいけません。一朝一夕にできるものではありませんね。プロデューサーに必要なマインドセットや仕事の流れを習得していく期間と捉えています。どういう話し方をすればクライアントやクリエーティブチームに安心してもらえるのか。そしてしっかりといいものを作れているかといった視野を育む期間だと思います。
── 近年は SNSの登場やテレビ離れなど、映像の視聴環境も変わってきています。変化の激しい時代においてプロデューサーとしてPMとして求められることは何でしょう?
島田:
間違いなく広告を取り巻く環境は変わってきています。プロデューサーはこれまでのやり方に頼るだけではなく、柔軟性が求められると思います。多様なアウトプット全てに対応できればいいのですが、時には解決が困難なこともあります。そういうときに、自分がどうアプローチできるのか、そんなことを日々考えています。
大竹:
そのプロジェクトの輪郭をはっきりとさせて、押さえるべきところを整理し、明確にチームに伝えることを特に心がけています。最初にここがウヤムヤだと後でトラブルが発生したり、みんなにとっていいモノが出来なかったりする。そこの労力は惜しまないようにしています。コミュニケーションのズレは致命傷になりかねない。基本的なことだけど文章化するのもすごく大事。言葉だけだとその時の状況でブレたり、誤解が生じてしまうから。
久保田:
最近はリモート撮影が増えましたが、モニター越しだと空気感は伝わりづらくて、コミュニケーションにはより気を使います。私は映像制作は「みんなでやっている」っていう意識を忘れないようにしています。
島田:
予算の割り振りにしても、着地点をPMチーフと一緒に決めることで、進めていきやすくなる。最終的にはプロデューサーが決める責任があるけれど、そこまでのプロセスがあるかないかでモチベーションも違ってくるのはありますね。
久保田:
それはすごくある。予算は機材の選び方、スタッフィングに影響するので、着地点を意見交換した上で決めることで、納得しながら進めることができます。大竹さんが言ったように、みんながハッピーになる環境って私もすごく大事だと思っていて。そのために困ったことがあれば、先輩にも後輩にも進んで相談するようにしています。経験の浅い頃は抵抗があったんですけど、確かにテーブルの上に課題や問題点を並べて、みんなで解決した方が早い。相談することで信頼関係も築けますし、全体のクオリティも上がります。
島田:
PMとプロデューサーも、頼り頼られながらの関係性。私はPMからも意見をどんどん言って欲しいと思っているし、逆に相談もしたい。私一人で解決できることなんてほとんどないと思っています。こんな考え方や解決策があって、こんな人いるんだって発見がある。情報はあった方が絶対有利ですからね。
こんな瞬間に感じる
仕事の醍醐味
── みなさんにとって、このお仕事の醍醐味とは?
久保田:
私はいろいろと悩む性格なんですが、やっぱりPMの仕事って飽きないんですよね。
仕事内容が多岐に渡るから、簡単な小道具を作ったりすることも。そういう自分の特技を活かせられるのは楽しい。悩みも映像が完成すれば達成感とともに昇華されるし、普段から同期に支えられているという安心感があるのも大きいかな。
大竹:
僕にとってのPMの醍醐味は、映像制作の全工程を見られること。A4用紙1枚に描かれた企画コンテが演出コンテにジャンプして、それが撮影と編集によって実際の映像となっていく。ずっとプロジェクトに並走していますが、僕はオフライン編集が上がった瞬間に一番感動します。特に1年目に携わった飲料水のCMは感動したのを覚えています。ロケ地は険しい山で、自分は山頂で撮影している撮影隊には同行せず、ベース(固定された撮影基地)を担当していました。必要な機材や物資があったら届けたり、食事の準備をしたり、山という慣れない環境の中で体力的にも大変だったし、全体像がわからないので右往左往するばかりでした。撮影が終わってオフライン編集が上がってきた時、めちゃくちゃ綺麗ですごく感動しました。こんな素敵な映像作りに少しでも貢献できたんだって思うと嬉しくて。
── プロデューサー職の醍醐味はどうでしょう?
島田:
クライント側からの視点を理解すると、映像がもっと多角的に見えるようになります。そうすると、クライアントの要望や考えていることもわかるので、コミュニケーションがもっとよくなって、面白いことが提案できる。私達の仕事は言われたものをただ作ることではなくて、クリエーティブを提供すること。このチームらしさを求めて発注してきてくれるクライアントもいます。クライアントとフラットに会話できるようになってくると、仕事がすごく面白くなってきます。
── 最後に皆さんの夢を教えてください。
久保田:
オタクでミーハーな夢ですが、憧れのタレントさんたちと一緒に仕事をすることが当面のモチベーションです。お仕事をしたい人はたくさんいるのでコンプリートするのに時間がかかりそうです。
大竹:
僕は、Amazon プライムビデオやNetflix のオリジナルコンテンツで、日本撮影のプロデュースをしたいです。自分の"得意"を活かせるし、国を超えたチームで取り組むモノづくりに興味があります。
島田:
プライベートでの夢は海辺の近くでのんびり家族とすごすこと(笑)。仕事面では、男性が育休をとる社風にすること。男性が休まないと女性も休まないんですよ。性別に関係なく、それぞれの家庭が自分たちにあった選択をしやすい世の中になるといいなって思います。