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ドラマ「探偵物語」でSHOGUNが起用された理由とは

希代の俳優・松田優作さんの代表作、ドラマ「探偵物語」。

劇中で使用される音楽(テーマソング、BGM)は基本的に全てSHOGUN(ショーグン)というバンドが演奏しています。

今回はそのSHOGUNが探偵物語の音楽を担当することになった経緯について解説します。

動画でも語っているのでこちらもどうぞ。

内容的にはこのnote記事の方が濃いです。

企画当初はジャズ路線だった

当時の日テレプロデューサー山口剛さんによると、企画当初の音楽はジャズ路線でした(NTV火曜9時、p.294)。

理由としては、企画当初はドラマのテイストが「正統派ハードボイルド」だったことが挙げられます。

ハードでクールな作品にはジャズが合う、ということだったのかと思います。

ここではあまり深く語りませんが、今でこそあのコミカルさがウケている「探偵物語」、最初はクールなハードボイルド路線だったのです。

これに関してはまた別の記事で語ります。

ジャズ路線:大野雄二

ジャズ路線として、最初に選ばれた作曲家は大野雄二さんでした(松田優作伝説、p.47)。

ルパン三世のテーマで有名な大野雄二さんですね。

彼が選ばれた詳しい経緯は述べられていませんが、おそらく「大野雄二×松田優作」の相性が良かったのでしょう。

というのも、このコンビは多くの作品で共演(作曲家×役者)を果たしています。

「人間の証明(1977)」、「遊戯シリーズ(1978-79)」、「乱れからくり(1979)」と、計5作品。

探偵物語は1979年スタートの作品ですので、大野雄二さん起用は当然の流れと言えるかもしれません。

渡辺貞夫さんへオファー

番組の企画会議が進み、大野雄二さんの案は流れます

そして次に候補に挙がったのは渡辺貞夫さんでした(NTV火曜9時、p.294)。

1978~79年ごろと言えば渡辺貞夫さん全盛の時代。

「カリフォルニア・シャワー」の大ヒット、草刈正雄さんとのCM出演などもあってお茶の間での認知度も高かったそうです。

そして山口プロデューサーのオファーも通り、音楽は渡辺貞夫さんに決定します。

具体的には、「多忙のためドラマの全楽曲は難しいが、メインテーマ曲のみならOK」という契約だったそうです。

渡辺さん起用に関しては松田優作さんも「いいですね!」と好感触だったようです。


「ノンコが泣いてますよ、SHOGUNで行きましょうよ」

大野雄二さん→渡辺貞夫さんと晴れて音楽が決まったわけですが、ある日突然この決定は覆ります。

それは松田優作さんの「ノンコが泣いてますよ、SHOGUNで行きましょうよ」という一言でした。

ここでいきなり件のSHOGUNが登場し、ノンコという聞きなれない名前も出てきます。

詳しく見ていきましょう。

ゴダイゴを売り出した凄腕プロデューサー、飯田則子

いきなり登場した「ノンコ」とは、日本テレビ音楽社員の飯田則子さんの事でした。

当時、彼女はドラマ『西遊記』で「ゴダイゴを売り出した凄腕プロデューサー」として名を馳せていたそうです。

そして「太陽にほえろ!」、「俺たちの勲章」、「俺たちは天使だ」などの日テレドラマの音楽を担当したのも彼女でした。

ドラマにバンド音楽を採用する

飯田さんの特徴として、ドラマにバンド音楽を採用する、ということが挙げられます。

太陽にほえろ!=井上堯之バンド

俺たちの勲章=トランザム

西遊記=ゴダイゴ、という具合です。

そしてゴダイゴの次に飯田さんがプロモートしていたバンドこそ、SHOGUNだったのです。

1979年には「俺たちは天使だ」のテーマ曲「男たちのメロディー」が50万枚のヒットを記録し、幸先のいいスタートを切っていました。

一旦却下されていた、探偵物語=SHOGUN案

SHOGUNの更なるプロモートを計画していた飯田さんは、探偵物語のプロデューサー山口剛さんに営業をかけます。

探偵物語にSHOGUNを使ってください、ということですね。

しかしその時点で渡辺貞夫さんの起用が決まっていたため、SHOGUN案は却下されてしまいます。

これに関しては飯田さんも「全然ダメだった」と語っています。

ではなぜそれを覆してSHOGUN起用が通ったのか。

そこには飯田さんと優作さんの喧嘩沙汰が深く関係してきます。

飯田則子×松田優作、レディージェーンで喧嘩沙汰

飯田則子さんによると、一度松田優作さんと喧嘩沙汰になったことがあるといいます(芳野藤丸自伝、p.112)。

ある日、松田優作さん含め数人でレディージェーンで飲んでいた時のこと、彼のレコードジャケット撮影に関して口論になったといいます。

原因は、ジャケット撮影でサングラスを外すか否か、ということだったそうですが、ヒートアップした松田優作さんは飯田則子さんを殴ろうとします。

それに対して飯田則子さんは「女を殴るなんて結構じゃないの」と反抗し、さらには松田優作さんに飛び乗って逆に殴り返したといいます。

この状況を見ていた人によると、この時、飯田さんは泣きながら大暴れしていたそうです。

いやあ、凄い話ですね。

松田優作さんの優しさ

泣きながら大暴れする飯田則子さん。

そうです、この状況こそが先述の優作さんの言葉「ノンコも泣いてますよ、SHOGUNでいきましょうよ」に繋がってくるのです。

これは飯田さんの解釈ですが、おそらく松田優作さんはこの時泣かせてしまったことを申し訳なく思っていたのではないか、と言います。

それに対する詫びの意図もあって、当時彼女がプロモートしていたSHOGUNを自身が主演するドラマに起用したのではないか、ということです。

それを飯田さんは松田優作さんの優しさと表現しています。

これに関しては、当の松田優作さんのコメントが存在しないので真偽の確証は取れません。

しかし、とても丁寧で義理深いことで有名な松田優作さんならあり得ることかなと思います。

まとめ

ドラマ「探偵物語」SHOGUNの経緯、いかがでしたでしょうか。

今でこそ探偵物語の音楽と言ったらBad City、Lonely Manとなっていますが、その前には大野雄二さん、渡辺貞夫さんという候補がおりました。

ひょんなことから物事は決まるものですね。

ちなみに当のSHOGUNのメンバーは、ドラマの放送まで自身の楽曲が使われていることを知らなかったそうです。

おおらかな時代ですね。

これからも松田優作さん周辺の事について沢山書いていきたいと思います。

ではまたお会いしましょう。


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