見出し画像

マカロニ時代⭕️最優秀作品 第48話「影への挑戦」シンコが 昔愛した男が生きていた!第一ステージ

第48話「影への挑戦」

1973.6.15 放送
脚本:小川英、鴨井達比古 
監督:土屋統吾郎 この回が最後の作品

CAST

尾沢康彦(村野武範)
高田公夫(磯村昌男)
高田祥子(松井紀美江)さちこ、と読む
七曲署部長(幸田宗丸)
鑑識課高田助手(北川陽一郎)
内田宗吉(ハナ肇)
組織影の首謀者?謎の声(大平透)


ストーリー概略 
最初のコマーシャルまで。
第一ステージ

冒頭のウェディングマーチ。
場面は教会の結婚式。

シンコは
親友の高田祥子(松井紀美江)と
その夫高田公夫(磯村昌男)の結婚式に出席し、


いま他の招待客からの祝福の様子を
カメラ撮影をしている。

※ 祥子は、さちこ、と読みます。


何枚か撮影するが、
覗いたファインダーのなかに、
結婚式を遠目に見つめる、かつて
シンコが恋慕った尾沢康彦(村野武範)を発見。

◆ここは、大好きだった彼の感化を受け、
カメラでの撮影が上手い、という光景か?

「康彦さん?!」

教会から退却しようとする彼を追いかけて
直ぐに結婚式の教会とは逆方向に
シンコも追随していく。

彼はブルーイッシュグリーンの4ドアセダン、
(73年型二世代目トヨペットコロナマークII)に
乗って式場から逃走したが、さらにシンコは
外の道まで追いかけていき、

※当時はトヨタコロナマークIIとは
 呼びません。トヨペットコロナマークIIです。
 トヨタコロナマークIIと呼び名が変わるのは
 モデルチェンジ後の三世代目途中からです。

シンコはシャッターを切る。
車のNo.プレートを撮影することが出来た。

撮った車のNo.プレートから
もう現像できた写真が、クローズアップされ
捜査一係のシンコの机に既に置かれている。

その写真から、場面が代わる。
自席でシンコの顔がアップされる。


◆今回の第48話では、
これまでの撮影手法から
違った撮影が試験的になされている点も
皆様、ご注目ください。
これだけではありません。
土屋統吾郎監督は色々なアングルを
試されます。

🟠「オシンコ刑事誕生」の回から、
 髭の二代目署長に推薦され
 少年係の肩書を外れて、四月からは
 司法捜査官、所謂 刑事を拝命されたシンコは
 一係室内に自分の席が用意されている。

シンコの向かいはマカロニ。
73.7.20からはジーパン席に。
入り口に最も近い席が新人席である。
ジーパン以降は新人がここに座る。


◆刑事たちの席の蘊蓄話

※番組開始当初はマカロニが新人で、
 マカロニ席の向かいが元新人の殿下席
 →シンコが刑事になってからは
 殿下は無線機の近くのボスに背を向けた席に。
 その向かいがゴリ席。
 →シンコ退職後は再度殿下は元席に戻る。
 80年7月に殿下が交通事故死したあとは
 ドックの席に、と このように変遷します。

 山村、野崎席は殆ど固定です。
 初期の数話だけ、山村、野崎席が
 前後に交代しています。

 尚、80年スコッチ再加入時には、
 若手はロッキー、スニーカーが居るが、
 番組では「初の8人体制」ですから、
 ボス席を含め7つしかありません。
 スコッチ席を確保するために、
 なんと最年少のスニーカー席が
 用意されません。文字通り欠席となり、
 可哀想な五代潤。
 ラガーに交代した彼も同じ事。


物語に戻ります

「似ている。三年も前に(70年頃)
 死んだ人が生きているなんて?!」
 シンコの心の声。

「そんな馬鹿な事がある筈がないわ?」
「でも、、、」

その時、七曲一係の荒くれ野郎たちが
入室してくる。

壁時計が何時を指しているかは不明だが、
「おはようございます」とシンコ

一係。この48話では
欠場の野崎を除いた皆が、
シンコの撮った現像が出来た写真を取り、
それを見て茶化している。

「これかー、シンコの親友ってのは?」と殿下

「こりゃー美人だねー」と淳
「そりゃーシンコより先に嫁にいくね」

「なんで、俺に紹介してくれねーんだよ!」

「失礼しちゃうわねー、側に
 アタシっていう者がいるのに、、」とシンコ

「あ、あれっ!
 俺そんな趣味悪くないよ」と淳

「マカロニ君!」

怒るシンコを宥める石塚。

「おいおいシンコ、シンコ。
 お前さんもね、
 少し考えないと売れ残っちゃうぞ」
と体育会系ゴリ。

「アタシの事より、
 ご自分の事を心配なさったら?」

「はーっは?、
 違げーねーや!」と山村
 ※まだ時代劇撮影口調が残っている露口さん。

「またまた、山さんもー」とゴリ


「何だこりゃ?」と鬼が、
マークIIの写真を手に取り質問した。

◆ここで、一瞬だが、
鬼の左手の指で掴んだ写真が、
即座に画面が変わった時点で
右手の指に持ち手が代わっていますね。
お気づきですか?
ほんの一瞬です。
※撮影が撮り直しになった証拠です。
もしくは手を持ち替えたその部分は
カットされたか?

慌ててボスの手から取り戻すシンコ。
「あっ、それ何でもありません」

その時、シンコ席の電話が鳴る。
「はい、捜査第一係」とゴリが取る。

「えっ!殺し?」

♪ 驚愕のジングル!
鬼の顔のクローズアップ。

場面は代わり
殺人現場の団地。

井上堯之バンド
♫ 「サスペンスII 」現場検証
3分05秒から、48話のこのシーンに。
後半がII2#2です。

◆今回は、下川辰平氏は欠場である。
たった6人の捜査員。
だから現場に鬼が赴く。
※こんな場合、
誰が一係の電話を受けるのでしょうか?
誰もいない筈の捜査一係。
不思議です。他に事件は起きないのかな?
または二係に頼んでいるのか?


団地の現場では、

「凶器は拳銃。至近距離から
 心臓へぶち込まれてます」と山村
「時間は昨夜10時頃です」

「殺しの現場はここじゃ無さそうだな」と鬼

「ええ、害者が靴を履いてないところからみて
 多分部屋ん中で殺して、
 ここに運んだんでしょう?」とゴリ

野次馬を掻き分け
シンコが鬼ボスの元に。
近所の奥さんの証言を持ってきた。
その奥さんも同行で、鬼の元へ。

「この人が、夕べ
 変な二人連れを見ています。」シンコ。

「ほう? 話して貰えませんか」と鬼

「一人は裸足で、凄く酔ってて、
 もう一人の人が抱き抱えて
 運んでいました」と主婦。

◆本当に酔ってたのか?
 薬で眠らされていた?または
 もう死んでいたのか?

場面は、立ち入り禁止の外周。
張られているロープの向こう側に
カメラは向く。

「ほーら、やっぱりシンコよ。」
「シンコーっ」


新婚旅行の帰りに
自宅新居のこの団地に
戻ってきたばかり、のようだ。

◆この頃70年代初頭には、
新たな団地が建設ラッシュの時代。

下の台詞のように38棟なんて?
東京だからか?
狭い京都市で、しかも郊外でも考えられない。

当時は現代のようなマンションよりも
比較的な安価な団地住まいを選択する
若者が少なくは無かった。

◆しかも、新婚旅行の帰りに
ネクタイ、スーツとは。帰宅なのに。
現代令和では可笑しな格好ですな。
そう思うでしょ、若い皆さんは。
でも70年代はこれが普通だったのです。

「さちこ(祥子)ーっ。そうかアナタたち
 この団地に住むんだったんだわねー」

「ええっ。38号棟の五階」と紹介する。
「ほら、あの白いカーテンの、、」と公夫。

シンコは高田夫妻の自宅に
招待されて、上がる。

 (シンコ!まだ捜査の途中やで。
  鬼は許可したんか?)と、筆者は思う。

「わあーいいなあ?
 ああ素敵ー!
 スィートホームかあ?」とシンコ

「さあ座ってて、いまお茶を淹れるから。
 公夫さん、買ってきたお菓子を出して」

シンコは開けたスーツケース荷物の中に
聖書が入っていたことを、

「公夫さん、クリスチャンなのお?」

「そうだよ?
 こりゃねー誰かの結婚祝なんだけど、
 差出人不明でね。
 俺の友達、慌てん坊が多いからねー。」

「ふーーん」とシンコ

「あら?お砂糖の壺が無い!
 公夫さん、知らない?」
「いや」と公夫

「あっ!あったわ。」

「でも変だなー、どうしてこんなところに?」

「なんか変よ!何もかも
 私が置いた場所が少しずつ違っている。
 誰かが、この部屋に
 入ったんじゃないかしら?」

「だってさちこ(祥子)、鍵をちゃんと、、」

何かに気を取られて
右を振り向くシンコ。

井上堯之バンド
♫ 「サスペンスII 2♯2」ピアノソロ

シンコは和室畳についている血痕を発見。

◆しかし僅か数十分前に
 血がついたように見える。しかも
 染み込み始めたばかりのようだ。

「血だわ」シンコ

「血?」公夫
「待って、触らないで。

   私に任せて!触らないで
 じっとしてるのよ、いいわね」


画面は代わり、

現場のボスに通報し、鬼と鑑識課員数人。
そしてゴリが部屋に居る。
鑑識課員で皆さんにも有名なのは、
太陽!準レギュラー高田助手。
これだけの人間が部屋で検証を始めていた。

◆高田助手を演ずるは
準レギュラー北川陽一郎。
以前41話「ある日、女が燃えた」で
自分の上司鑑識主任の不正を告発し、
山村に報告した彼です。
この事で山村は降任にならずに済んだ?か。

太陽にほえろ!初登場の北川陽一郎は、
「拳銃とトランペット」で通行人役。
 さらに喫茶店に電話を借りにきた設定で、
 山村と対峙し、初台詞もあり。
ジーパン時代も継続出演します。

ジーパン時代の北川陽一郎

畳にルミノール反応を調べるために
液体を掛ける。

「係長。血痕に間違いありません。
 一応拭き取ってありますが、床からも反応が。」

「よーし、血液の照合と指紋の検出を
 急いでくれ!」

「ボス!ダストシュートから
 靴が一足発見されました。
 血痕が付着してます。」
                     と殿下が 報告しに部屋へ。
報告して靴は鑑識に渡す。

◆ここでは現場検証であるが、
手袋をしていないのは、
シンコと鬼だけで、鬼は両手をズボンに
突っ込んだまま。それでも絵になる裕次郎。

※刑事コロンボ「二枚のドガの絵」を
 思い出します、筆者は。

   ポケットに手を入れて、最後に犯人を
 落とす時にポケットから手を出す、
 あのシーンを。


「何か盗まれたものは?」と公夫に
問いかける鬼。

「現金は置いて無かったし、
 預金通帳もそのまま残っていますし、
 別に何も?!」

場面変わって一係。
ボス席を向いて、テーブルを囲み
立っているのではなく、
座ったままの捜査ミーティング。

それを天井から撮影した
珍しいアングルの絵。

第53話「ジーパン刑事登場!」でも
このような捜査ミーティングは
撮影されてますが、

土屋統吾郎監督としては、
天井からミーティング中の捜査一係を
撮影するとは、太陽にほえろ!初のアングル。

日活出身の斎藤光正監督風ですな。
しかも一瞬しか映りません。


第16話「15年目の疑惑」のように
初期の金谷稔監督も上空からの撮影も

よくされていました。これは全員の動きが
掴みやすかった。視聴者には。

「害者は推定35歳くらい。
 名前は自称北川志郎。
 指紋照合の結果、前科はありません。
 夕刊を見た妻の証言によりますと
 自動車会社のセールスマンをしている
 と言う事ですが、会社を調べた所、
 北川という人物は社員の中にはいません。」
と殿下。

※殿下の台詞としては、かなり長い。
しかし殿下はメモを見ながら
台詞を喋っている。
※これはチョン暴露れ?

通常なら巡査部長野崎が話す台詞の筈だが、
この48話は長さん欠場のため。

※またこの絵で捉えられるのは、
 ボス席のデスクマットが少し小さい事。
 (第一話ではデスクマットが無かった事に
 皆さんお気づきでしたか?)

第一話 マカロニ刑事登場より

 これと
 第一、第二話では用意された本庁直通の
 「緊急発令用の通信機」が
 無くなっている事がハッキリわかりますね。
 第二話では、鬼が緊急発令をこの通信機から発しました。

「で、それから本籍地に照合した結果、
 北川志郎なる人物は三年前に
 死亡しています。」と山村


◆以降の太陽!では、

既に死んだと思われた人間が生きていた話が
何度も生まれます。その話と主役は↓

 ジーパン期「蒸発」第57話 柴田純
 テキサス期「顔」第158話 ゴリ石塚
 スコッチ、ボン期「孤独」第231話 ゴリ石塚
 ボン、ロッキー期「朝顔」第321話 山村
 

 ※但し「朝顔」は息子を殺しての成りすましの男が
  長く生き続け、これを老婆の直感を信じて山村は、
  その名推理で逮捕します。成りすましを見破る決め手が
  過去の太陽!に無かったトリック崩し。名作選の所以。


 上記の4作品は
 全て太陽!「絶対名作選」に入ります。

 少し趣は異なるが、
 タイトルはずばり。これは
 犯した殺人の身代り、という意味です。
 ボン、ロッキー期「身代り」第277話 山村
 この話をも含めて、
 いずれ蘊蓄話に取り上げる予定です。

    さらにドック、ラガー期
 「二度死んだ女」第641話では
  戸籍上でも死亡したと思われていた女が
  実は生きていて、今度は本当に殺された話。
  本人は死なずに長く名前を偽り生きていたのだ。
  
  二つの疑問。なのに何故殺されたか?
  何故、死をそうまでして隠していたのか?


物語に戻ります。

「指紋と血液型から、死亡したのが
 あの部屋である事は間違いありませんが、
 もう一人の人間。つまり犯人の指紋は
 検出されておりません。」と山村

「名前も職業も偽って
 結婚生活五年間していた
 なんて、とんでもない奴ですね」とは淳
 ※また淳の舌打ちが少し映像に入っている。

「拳銃弾のライフルマークは?」と鬼

「ええ。それも調べましたが、使用された
 拳銃には前科はありません。」とゴリ

「祥子(さちこ)さん夫婦の話ですと、
 盗まれたものは何もないそうです。
 殺された男は何の目的であの部屋に
 忍び込んでしょう?」とシンコ

「どうもそんな単純なヤマじゃ
 無さそうですね。
 ボス。実は妙な聞き込みがありましてね、
 あの39号棟の一階に住む早起きの 
 お婆さんの話なんですがね、
 今朝もいつもの様に5時前に起きて
 草取りをしていたらしいんです。
 そしたら、、、」

救急車が乗り付け、

救急隊員が3人38棟に向かって
行ったらしい、と。

「どうしたね?ケガ人でもいるのかい?」

例の小さなアベノマスクのような
マスクをした男たちは

我が家に国から届いた安倍のマスク。一度も未使用です。

お婆さんを見て、そそくさと
救急車に戻り、その場から離れて行ったと。

「救急車?」と鬼

「ええ、直ぐに消防庁に問い合わせみたら、
 今朝あの団地に救急車が出動した事実は
 ないそうです。」



苦虫を噛む山村。

「この事件、奥が深そうだな」と鬼

「どういう事ですか?」と淳

「そのお婆さんが居なかったら、
 闇から闇へ葬られて
 しまったかもしれないな」と鬼

「じゃあ、その救急車の連中っていうのは?」
とゴリ

「死体処理班だったんだろう。
 害者の仲間か、それとも犯人の仲間か知らんが、

    兎に角現場を中心に明日から、
 徹底した聞き込みだ!
 救急車に関する情報も集めてくれ!
 いいな?」

と鬼の指示に頷くゴリ

※つまり死体処理班到着の前に、
その場から死体を移した奴がいるのだ。
しかしそれは何のために?


捜査ミーティングを終え、
夜にはシンコは、祥子夫婦を訪ねた。

「結婚式の時の写真、、」と手渡すシンコ

「あら、もう出来たの?」と祥子

「はい、」と公夫に写真を分けて渡す。

写真を見て戯けて笑う顔が、少し曇る。

その変わった顔を見逃さないシンコ。

「ねえ、公夫さん。この人。
 死んだ兄さんに似てるみたい?」
と公夫に写真を見せる。

「貴女もそう思う?」とシンコ

「まーさか?
 だって兄さんは3年前に
 ベトナムで死んだんだろ?」と公夫

「そうよ、だからちょっと似てるって、
 言っただけよ」

「でも見た時は一瞬、康彦さんじゃないか、と
 思ってハッとしたわ」とシンコ

手を口元に当ててクスッと笑う祥子。

「馬鹿ねー。
 いくら死体が発見されなかったからって、
 生きてたらとっくに帰って来るわよ。
 ベトナム戦争も終わったんだし、
 貴女もお葬式に来てくれたんじゃないの!」


◆しかし、この台詞は
そのまま受け取ると間違であり、
表現が不足しています。

48話の放映は1973.6月で、
マカロニ死亡の1ヶ月前。

◆1973.1月のパリ協定で米軍は撤退するも、
和平協定は破棄され、さらに1975.4月まで
戦闘は続けられている。
参加した兵士、民間人含め
およそ813万人が生命を落としている。
Wikipedia調べ
大変な戦争だった。

1975.4月に戦争終結し、
翌年に、南北ベトナムが統一された。

だから、48話の放送時点では、
あくまで1973.1月の
パリ協定での米軍撤退を
祥子は台詞で「戦争が終わった」と
言っているのだ。

戦乱戦闘は、まだ75年まで
あと2年間続くのだ。
皆さんも調べてみて下さい。


「そうねー」とシンコ

「シンコ、あなた死んだ兄さんが
 好きだったんじゃない?それで
 誰を見ても似ているような気が、、?」

「祥子っ!」シンコ
「へええー!」と公夫
「そーだったのー」

康彦が好きだったと言われ、笑って取り繕うシンコ

井上堯之バンド
♫「マカロニ行動のテーマ スローバージョン」

八百屋で聞き込みの殿下

住宅建設工事現場で聞き込みする男石塚

耳が遠い老婆に団地で聞き込みする淳

街で屯している男たちに聞き込みの山村

「全然無しか?そう、そうか?
 続けてくれ」と電話を切る鬼
誰と話をしていたかは解らない。

見上げると、シンコが自席で
怪訝な顔を見せている。
それを心配そうな顔で見る鬼。

その時、シンコ席の電話が鳴る。

「もしもし。
 はい、あたしです。
 はい、ラウンドレンタカーですか?
 どうも
 はい。」

電話を切るシンコ。
目線をシンコから離す鬼。

シンコは、顔を上げる。
また鬼は顔を伏せ、調書に
目を通す。

藤堂の様子は
いつもの通りだと、部屋を無言で退出する。

時間は午後3時35分過ぎ。

鬼はシンコ席に歩み出て、
机の上に置きっぱなしのスクラップブック。
これを手に取る。そして捲る。

井上堯之バンド♫
「謎は霧の中(テーマ3A)」途中から


「尾沢氏、ベトナムに散る
  死体は発見されず」の新聞記事


場面は代わり、
ラウンドレンタカーのカウンター

「あのう、ちょっとお尋ねします。
 この写真のクルマ、御宅のですか?」

「ええ、確かにうちのクルマですがねー」

「先週の日曜日の借主を知りたいんですが?」

「はああ?」
シンコは警察手帳を見せて
担当者の不信感を拭う。

「こりゃーどうも。ちょっとお待ち下さい」

恐らく、偽名かもしれないが、
先週の日曜日の貸し出し伝票を見たのだろう。


◆このシーンで
何故、次の行動にシンコが移るのかは、
つまり、何故東京ヒルトンホテルに立ち寄るのかは、
とうとう番組では一切説明されない。

視聴者の想像に任すと言う事かな?
それとも46分の放送時間では
足らなくなったのか?

◆重要なシーンなのに。
それでも、筆者の中では
視聴者に想像させる最優秀作です。

筆者の推測では、
シンコがホテルに足を向けたのは、
先の伝票の住所からか、
懐かしい筆跡から、その住所が本物と疑わなかったから?

または、滞在しているのが、
以下のホテルだとした女の確信か?
それとも刑事の勘か?
男には持ち合わせてない女の勘か?
これはシンコのみが知っている。

そして、今シンコは
東京ヒルトンホテル。

そのBARラウンジに足を向ける。

どちらにしても、
🔴見えない女の愛の細い糸が、
  細くなっても千切れない愛の糸が、
   この3年間で彼をシンコに
    手繰り寄せてくれたのか?🔴

◆でも、三年前にはシンコは
高校生やで?少し脚本に無理があるか?
なのに、少年係のシンコが春から
刑事を拝命している事が康彦によくわかったな。
ジャーナリストだけに
そう言う情報網を持っていたか?


外人客がごった返し、
店内ではピアノの軽やかなメロディ。
入り口から中へ進んだシンコの
眼には懐かしいあの人の後ろ姿。

ラウンジカウンターには
なんと、この3年間、
どうしても会いたかった康彦が
一人座っていた。
暗い店内でサングラスを掛けて。

やはり生きていた。
しかと確認するシンコ。

シンコは康彦の隣の席に
そっと座る。

「いらっしゃいませ。何を差し上げましょう?」

「ブランデーを」
「はい」

◆シンコはこの時未成年?では。

「まだ。信じられない。
 あなたが生きているなんて。」

「よく分かったな。流石は刑事だ」

「刑事として来たんじゃありません」

そんな康彦はシンコを向いて、、、。

シンコは注がれたブランデーに
口を付け、少し喉を潤す。
※しかし、ウーロン茶かも?中身は。

シンコは隣りの康彦を見て、
その康彦はシンコから眼を逸らす。

康彦は、BARを出ようと席を立つ。


シンコも驚いて、
「康彦さん、、」

シンコは後を追う。


今度は、夜景が見える屋上に。


マンションか、
康彦が滞在しているホテルなのか?

井上堯之バンド♫
あの名曲「冬の黄昏」が流れ来る。

48話で第一回めの間奏。

再会の第一声に表現されている、
シンコの懐かしく、三年振りの
あなたに打ち明けたい愛の響き。
管楽器ならどう演奏されるか。
19-20歳のシンコには精一杯のこの台詞。

「こんな時には、何からお話しを
  伺えばいいの?」
「何を訊ねればいいの?」

康彦は、シンコの縋りを
追い払うように、
「何も話すことはない。」

「国も友人も名前さえも
  捨てなければならなかった生活が
  どんなものか?

  どう話してみても、誰にも
  解りゃしないんだ!」


その時、康彦が
何を今までしてきた、体験してきた事が、

その不穏な事実、事情をシンコには
垣間見えたかのように、しかし
かつて愛した隣の彼をじっと見た。
でも康彦への愛は消え去ってしまったのではない。

「何故なの?
  何故堂々と名乗って出ないの?
  教えて!」

「康彦さん!」

やはり愛する男からは、
シンコが希望した真摯な態度が
昔の康彦らしさが感じられない。

今の康彦が抱える何か重たく辛いものだけは
何となく感じたが、シンコには何をどのように
してあげられるか?
助けの言葉を捜す彼女を拒絶した一言は、
シンコの絶句を益々冗長したものだった。

「私に会ったことは、祥子には
 言わないでくれ。君も忘れるんだ。
 そして君たち警察も団地の殺人事件からは
 いい加減に手を引いたほうが良いんだ」


「事件から?どういう事なんです!?」


事件から?と言われて、
七曲荒くれ野郎たちと一緒に仕事をして
育まれた、女であっても
職業人としての刑事の直感が
これまでの康彦への情愛の一角を
崩したシンコだったのだ。

「帰りたまえ!これ以上話す事は
  何も無いんだ!」

この時のシンコの顔。

数分前の愛した人を懐かしむ顔と、
もう愛せなくなるかもしれない、
遣る瀬無い愛が崩れる寸前の顔のシンコ。

見比べて下さい。
この表現力は、19-20歳の関根恵子の
演技の旨さです。しかも第一話のシンコと

第一話のシンコ

比べると段々と魅力ある女として、
綺麗になっていってます。
この時まだ二十歳ですよ、彼女。
化粧だけでなく、女としての情感が
演技できるいいおんなになって来たのだ。
他の女優では無理、どうかな?


その頃、鬼は
「宗吉」で一人で酒を飲んでいた。

「さあ熱いのついたぜ。」

「さあ一杯いこか」

「ああ、すまんすまん。
 シンコの奴、何処に行っちまったのか?」

「なあ、親父さん。
 尾沢康彦ってキャメラマン知ってるかい?」

「あー知ってるよ!
 生きてりゃ、今頃世界一流だねえ。
 いい男だったよー」と懐かしむ宗吉。

「シンコの奴、惚れてたのかい?」と鬼

「えっ!?」と宗吉
「何か言ってたかい?」

「いや、」と次を抑える鬼

「まあ嫌いじゃなかったんだろうな?
 葬式のあと、朝まで泣いてたからなあ」

「ほーおう」と。


場面は代わり、夜。
誰も居ない捜査一係。

時計は夜10時21分を指している。

そこに、鬼が戻ってきた。

「ボス」と
突然開いたドアにビックリのシンコ。

「おーう、少し呑んだら帰るのが、
 面倒くさくなった。
 今日はここに泊まるぞ。」

やはりシンコはここに居た。
あのスクラップブックの記事と
今再会して来た康彦を見比べたかったのか?

「あたし、帰ります。」

「あーシンコ。
  俺に何か話があるんじゃないか?」

と出て行こうとするシンコを
呼び止める鬼。

「迷った時は喋った方がいい。」

シンコは上司の声ならぬ
優しくそれでいて、
いつもの信頼感を感じて
外に出るシンコの勇気を失わせた。

荒くれ野郎だけでなく、こんな女の自分を
遠目で見てくれるボスを無視して
外に出ることは出来なかったのだ。


鬼は、胸元からタバコを出して
いつものようにマッチで火を付ける。


シンコは、応接テーブルの
椅子に鬼と対面し座る。

暫く時間は話しもせずに流れている。
鬼が吸う本数は5本目。
1本吸うのに3分。続けて吸って4本。
即ち14分は経過したことの
撮影陣、監督の上手い演出である。
シンコの気持ちの落ち着きと、
刑事としての冷静な判断に辿り着くまで、
鬼は次の台詞を控えていたという情景。

「お前は刑事だ」

そう言われても、返事が出来ない。
何故か心の奥底に
もどかしさと躊躇いを感じている自分自身。

やっと「はい」と返答するも、
次の上司の一言にギョッとする。


「自分から事件に関係すると
  喋った奴を何故参考人として
  しょっぴいて来なかった?」


井上堯之バンド
♫「希望のテーマ(M20 2)」ピアノ

いつもなら、山村が妻高子を想う
心のうちを奏でるテーマ曲。
今回は、康彦を想うシンコの心のうちを
柔らかく表現、間奏す。


「お前とその男の間に
 昔何があったかは知らん。」

「何も有りません!」

「だがな、お前のハンドバックの中には
 いつも警察手帳と手錠が入っていること
 だけは忘れるなよ」

そう言われたシンコは、
現実の仕事を心で直視した。

「今度連絡があったら、必ず
 俺に知らせろ。」

しかし、シンコはまたボスから
眼を逸らす。そして俯く。

また鬼は今のシンコに似合う刑事の
もう一つの職務。これを伝授した。

「警察の仕事は逮捕するばかりじゃない。
  保護する力だってあるんだぞ」


それを聞いて、

生命を保護する権限が
女刑事の自分にさえ、あるんだと。
持たされているんだ、と。
それが私の職務だと。
そんな当たり前の事に気付かされたのだ。

やっと内から湧き上がる自信が
顔をもたげたシンコ。

「ボス」

「分かったな」

「はい」

ここまで
次回予告含め 19分50秒。
最初のコマーシャル。

次は
12時50分過ぎ。
皆が揃った。荒くれ野郎たちとシンコ。
シンコは ぽつりと自席に居る。

この後は、
第二ステージに。

10524字


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集