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【時事抄】 難しい判断、欧州中央銀行が利下げ決定

先進国ではスイススウェーデンがいち早く利下げに動き、今月5日にはカナダが誘導目標を5.0%から4.75%への利下げを決めました。そして6日、事前の織り込みどおり、欧州中央銀行も利下げに転じました。インフレ鈍化と見て、景気の浮揚へ軸足を移した形です。この判断、吉と出るか否か

利下げ決定を報じた日本経済新聞の記事を見てみます。

<要約>
欧州中央銀行(ECB)は6日、2019年9月以来の4年9ヶ月ぶりとなる利下げを決めた。主要政策金利を現状の4.5%から4.25%へ、中銀預金金利を現状の4.0%から3.75%に引き下げる。利下げ幅はそれぞれ0.25%とした。

ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、「経済予測の信頼性や確実性に基づいて利下げを決めた」「引き締め度合いを緩めるのが適切」と表明し、「インフレ見通しは大幅に改善してきた」と語ったが、本格的な利下げ局面に入る「可能性は高いがデータ次第」と留保した。

ECBは22年7月にマイナス金利を解除し、10会合連続で利上げを進めた。過去最速のペースで政策金利を4.5%まで引き上げた後、前回4月まで5会合連続で政策金利を据え置いてきた。直近5月のユーロ圏の消費者物価指数の速報値は前年同月比2.6%上昇で、4月の2.4%から加速したものの、22年10月につけた過去最大だった10.6%から大幅に鈍化していた。

堅調な米国経済とは対照的に、欧州経済は個人消費が冷え込み需要回復が遅れている。6日の理事会で取りまとめた四半期に1度の景気・物価見通しでは、ユーロ圏の物価上昇率は24年に2.5%、25年に2.2%で緩やかにインフレ鈍化を想定する。

公表した声明文で2%の物価目標の達成に向け「必要な限り政策金利を高い水準にとどめる」と明記したが、賃上げ圧力は以前高く、サービス業のインフレ粘着性が意識される。ラガルド総裁は会見でインフレ抑制には「今後数ヶ月、デコボコした道を歩む」と一時的な物価の上振れを容認することも示唆した。理事会の「タカ派」メンバーは利下げに警戒感を示し、今後も慎重に判断していく方針だ。次回7月会合での連続利下げは見送る公算が高い。

(原文 1310文字→736文字)


欧州中央銀行(ECB)が利下げに転じ、今後想定通りの物価水準と推移を辿るかどうか、ECBの判断を検証するフェーズに入ります。期待した景気浮揚が実現できるかも注目ですが、日本人としては為替動向が気になります。

日本経済新聞 2024年6月6日記事より

市場の織り込みが進んでいたせいで、ECB発表直後こそ大きく変動していた金利や為替も、一夜明けて落ち着いた状況となっています。今回の判断の是非は今後の「データ次第」ですが、ウクライナ戦争は継続中、中東情勢も怪しく、中国とサプライチェーン見直しといった情勢を鑑みるに、インフレ再燃の火種は燻っています。想定通りに進むと、ECB高官たちに確信があるわけではないでしょう。

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