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【時事抄】 役人体質の抜けない日本郵便のせい?小型荷物が捨てられないクロネコヤマトの裏切り?
先日、我が子の冬季講習の申し込みに、大手学習塾を利用することになり、メルカリを使って株主優待権を割安価格で何枚か購入しました。5人の出展者から同日購入した優待券でしたが、ヤマトの「ネコポス」が先に届き、1~2日後に「ゆうパケットポストmini」の発送物が我が家に到着しました。
ちょうどその直後、ヤマト運輸(株)・日本郵便(株)の協業見直しのニュースを目にしました。見直しを提議したヤマトは、日本郵便に委託する荷物の到着日数が延びているためと説明しています。相変わらず役人体質の抜けない日本郵便だな、と思いましたが、そう単純な事情だけでもないようです。
ライバル社どおしの協業が岐路に立たされた事情も含めて、ニュースを報じた日本経済新聞の記事を要約しました。
<要約>
ヤマト運輸と日本郵政の双方は、小型薄型荷物に関する業務委託契約の見直し協議の存在を認めた。岐路に立つ両社の協業は、23年6月、メール便や小型荷物の配達をヤマトが日本郵便に全量委託する合意から始まる。
ドライバー不足という物流の「2024年問題」を巡る両社の危機感から、長年の競争関係を超えて提携した。ヤマトは低単価の非中核事業を切り離して宅配事業に経営資源を集中させたい、日本郵政はヤマトの荷物を取り込み積載効率を高めたい、という両社の狙いが一致した。
ヤマトは同社の「ネコポス」を24年度末までに終了させて、日本郵便の「クロネコゆうパケット」に全量切替えする計画だった。だがヤマトは11月中旬に翌年以降の「クロネコゆうパケット」での配達委託ゼロを日本郵便に申し入れ、24年度末を期限としていた全量委託の計画も再検討を希望する。
見直しの理由をヤマトは、日本郵便に委託する荷物の到着日数が延びる事態が発生しているためと説明する。日本郵政の増田寛也社長は、ヤマト側が主張する配達の遅延について「送達速度に違いが出るのは両社で合意の上のこと」と強く反論している。
両社とも経営状態は厳しい。日本郵政は郵便・物流事業が直近24年3月期で営業損益686億円の赤字を計上、ヤマトからの配達受託で荷物量を確保し積載効率の向上を図るつもりだった。日本郵政には2010年に日本通運の宅配事業「ペリカン便」との統合後、大規模な遅配トラブルが発生し、経営責任にも発展した過去がある。
一方、ヤマトは小型荷物を取り扱う「ネコポス」がフリマアプリの利用増により成長が続き、メール便に比べて取扱単価も高く、手放し難い収益源になりつつある。ただ、ヤマトが小型荷物の配達を続けたくとも、配達を委託する個人事業主2.5万人との契約を24年1月末までに打ち切っており、担い手を増やせる見通しは不透明だ。
人手不足が深刻さを増す中、物流業は一定量以上の荷物を扱わねば利益が出せない。協業路線に回帰するための解決策は見えない。
(原文1760文字→850文字)
配達品の到着日数に両社で差生じるのは仕方のないことのようです。ヤマトが日本郵便へ委託する荷物は、ヤマトから日本郵便に送られたのち日本郵便から届け先へ配達されるという。そりゃ、ヤマトから直接届け先に配達する方が早いに決まっています。当初合意通り、ヤマトが扱う小型荷物の全てが日本郵便の配達となれば両社の差は顕在化せず、冒頭の私の事例では1日遅い日本郵便の配達日数だけとなるわけです。小型荷物の全量が、ヤマト→日本郵便→届け先のルートを辿るわけですから。
人手不足と輸送コスト増加によって、物流業界は配送効率の向上が至上命題になっており、扱う荷物の棲み分けで効率化を進めようとしています。配送車両に多量の荷物を積み、最適ルートで効率よく配送し、量で稼ぐ。赤字に悩む日本郵政の生産性向上に向けた青写真が崩れてしまい、世紀の協業は迷走し始めました。経済活動の大動脈たる物流機能が経済的にペイできない事態が長期に続けば大問題。イノベーション(変革)が求められています。