
【時事抄】 最強通貨「米ドル」を売りたい人々
トランプ新大統領は自国の輸出に不利なドル高を嫌っているようです。貿易収支悪化、貿易赤字が拡大することを嫌悪しているからです。とはいえ、米国ファースト政策を掲げて、いますでに絶好調の米経済をさらに強くしようとすれば、米ドル需要が高止まりを続けるのは当然の帰結です。
そんなドル一強のトレンドに逆らうように、例えば日本円のような他国通貨が買われて、円高ドル安が進む場面が見受けられます。トランプ氏が勝利した直後の昨年11月中旬がそうであり、年初明けから今もそうです。
ドル高に伴う自国通貨安は、日本も同様ですが、輸入物価を押し上げインフレを助長することになるため、自国通貨防衛への誘引を実は多くの国が持っています。その辺りの事情の一端をつぶさに見るべく、少々古いですが日本経済新聞が報じたブラジルの通貨防衛の介入の記事を要約しました。
<要約>
新興国がドル売り・自国通貨買いの為替介入の姿勢を強めている。景気や財政といった自国の課題を抱える新興国の通貨は売られやすく、通貨安はインフレ助長を招く。トランプ氏の就任前からドル高が進む中で新興国は自国通貨の防衛を図っている。
新興国経済に詳しい専門家によれば、12月にブラジル中央銀行が実施した大規模なドル売り介入は「見たことのない規模」という。同氏の試算では、12月19日のスポット市場でのドル売り介入規模は80億ドルと1日としては過去最大規模、12月全体でも約200億ドルと月間の過去最大だった。
ブラジル通貨レアルは、12月中旬に1ドル=6.3レアル台にまで下落し、レアルの売り圧力が続く。主因はブラジルの財政悪化だ。26年に大統領選を控え、ブラジルの現職ルラ大統領は自国民に負担を強いる緊縮財政策を取りづらく、財政悪化懸念によるレアル安基調は当分続きそうだ。
ブラジルの11月消費者物価指数は前年同月比4.9%と中銀目標4.5%を2ヶ月連続で上回った。更にレアル安が続けば輸入物価を上昇させ、インフレが加速しかねない。ブラジル中銀は12月までに3会合連続で政策金利を引き上げたが通貨安に歯止めが効かず、介入実施を余儀なくされた。
景気や財政の悪化が通貨安を招き、通貨安が輸入物価を上昇させインフレ圧力を高める、との構図は他の新興国でも見られる。利下げによる景気浮揚策も取れず、景気や財政に重荷になる。インドは5%を上回る物価上昇が続いており、ドル売り介入でルビー安の進行を食い止めている。インドネシア中銀も12月、ルピア相場の急落を抑えるため市場介入に踏みきった。
12月に新興国再建ファンドから12.5億ドルが流出し、10週連続の流出を記録した。トランプ氏の当選で世界の投資家が新興国資産の購入を控えている。それは米利下げによるドル安によって、新興国に資金が向かうとのシナリオの再修正を迫られているからでもある。
(原文1201文字→817文字)
トランプ氏当選後の米ドル円は、素直にドル買いが進まず、魅力の乏しい日本円が買われる状況が続いています。もちろん日米金利差の縮小が予見されていたからですが、日銀の利上げなど実に微々たるものです。
12月の円高基調が謎だったのですが、ブラジルやインドといった新興国が「ドル売り・自国通貨買い」を大規模に仕掛けていたという記事を見て腑に落ちました。為替相場は複雑な思惑が絡み合うので予測が難しいのですが、FXもヤケドを追わない程度の少額で細々続けています。世界情勢とつながる感覚が好みに合うところかなと思っています。