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【時事抄】 倒産増加傾向に。潮が引いて、裸で泳いでいたのが誰か、見えてきた今

コロナ禍での「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保融資)は、外出自粛要請によって意図的に消滅させた内需を税金で肩代わりしたものでした。コロナがなくても経営破綻していた企業すらも一緒くたにして拾い上げることになる、前代未聞の思い切った政策でした。

これで一息ついた中小・零細企業も実は多かったでしょう。コロナ禍が過ぎ去り元の生活が戻りつつある今、経営破綻が増えるのも利の当然です。米国の投資家、ウォーレン・バフェット翁の名言を思い出します。「潮が引いてようやくはじめて、裸で泳いでいたのが誰かが分かる」

中小企業の倒産増加を報じる、日本経済新聞の記事の要約しました。

<要約>
物価上昇によるコスト増を販売価格に添加できず、経営破綻する中堅・中小企業が増えている。今後は金利上昇という追加要因が加わって、倒産が増加する見通しだ。東商リサーチによると、24年度上半期の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は5095件と10年ぶりに5千件を超えた。前年同期比18%増で、中国地区31%増を筆頭に、9地区全てで倒産件数が増加した。

目立つのが物価上昇に起因した倒産だ。コスト上昇を販売価格に転嫁できている企業は、中小企業全体に3割に留まるとの調査結果もある。都内某信用金庫の理事長によれば、「中小企業は原材料費・燃料費の高騰に加え、人材確保のために賃上げを実施せざるを得ない状況だ。だが、コスト増を販売価格に転嫁できずに赤字に陥っている企業は多い」と述べた。

規模の小さい企業ほど価格転嫁を進められてない。24年度上半期の倒産のうち、負債総額1億円未満の倒産が全体の75%を占め、倒産集計の対象外となる負債1000万円未満の倒産も292件と3割増えた。

加えて、コロナ禍で進められた「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保融資)の返済が始まったことも重荷になっている。ゼロゼロ融資による資金調達で急場を凌いだものの、依然として客足が回復せず、原材料高騰の影響も重なり、資金繰りが逼迫。倒産に至るケースが多い。特に飲食業は販売価格を上げると顧客が減少するリスクが高く、コストを販売価格に転嫁できずに倒産に至るケースが多い、と専門家が述べた。

一方、価格転嫁に成功し、賃上げを実現し、業績を伸ばす企業もある。中堅・中小企業の間で価格転嫁ができるか否かで業績が二極化する傾向が強まっている。さらに、日銀が7月に政策金利の引き上げを決めたことで、今後は金利の上昇が見込まれる。企業は借入金の借り換えの際、利払日の負担増加にも直面する。また各都道府県で最低賃金が順次引き上げられており、人件費の増加傾向も続く見通しだ。倒産増加のトレンドは今後も続くと専門家は予測している。

スタートアップなど新設法人の設立数は高水準で推移しており、転職の増加によって成長産業への人員シフトも進みつつある。有望な技術を持つ企業の再生や事業承継も促進し、成長を底上げしていくことが課題になる。


政府の寛大なる「ゼロゼロ融資」で豊富な水位が保たれているうちはよかった。だが、ひとたび水位が下がったときは。パンツを履いてなかったウッカリ者が次々と露見して、今こうしてニュースになっています。

こうしたコロナ禍がもたらした負の遺産を精算していく過程にあります。各社は生き残りをかけて価格転嫁や生産性向上に尽力している一方で、旧態依然としたまま事業を続けているところは自然淘汰されていかざるを得ません。ただ、これはあるべき姿だとも思います。

先の商法改正で会社が設立しやすくなり副業を営む多くの個人事業主を生み出しました。しかし、セーフティーネットの充実など、会社を潰しやすくする制度的・文化的な環境整備については、まだまだ不十分なのが我が国の現状だと思います。今後の課題です。

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