【時事抄】 米連邦準備理事会(FRB)も金融政策転換へ
いよいよ米国も金融政策を転換しました。8月下旬のジャクソン会議で利下げの必要性を強調していたことから実施は確実視され、注目点は利下げ幅でした。通常は0.25%刻みで政策金利を調整しますが、倍速0.5%引き下げもあり得るぞと、ここ数日は金融市場の思惑が錯綜していました。
倍速利上げを決定した今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、言ってみれば、利下げ見送りとした前回7月会合の判断を軌道修正したということでしょう。米国経済は思った以上に悪そうだ。そうした見方が更なる追加利下げの催促を呼んで、米株高、金利差縮小を連想した円高が進みそう。
日本経済新聞が報じた記事を要約しました。
<要約>
米連邦準備理事会(FRB)が4年半ぶりとなる利下げを決め、金融引き締めから政策転換する。利下げ幅は通常の倍0.5%で、インフレ収束に自信を深め、経済を下支えする方向へと舵を切る。
市場参加者の多くが利上げ幅0.25%を予測していたため、0.5%の利下げは驚きを呼び、直後の金融市場は金利低下、ドル安で反応した。円相場は一時1ドル=142円から140円台まで円高が進んだ。
FRBパウエル議長は物価抑制が進展して利下げの環境が整ったことが利下げ決定の背景と会見で述べた。遅すぎた利下げとの批判に対して「時宜を得たものであり、後手に回らないという決意の表れ」とも強調した。
今回の政策転換では05年以来となる理事の反対が出た。ボウマン理事が利下げ幅0.25%を主張して反対票を投じたのだ。会合前に講演したウォーラー理事も大幅利下げには慎重な立場を示唆する。先行きの見通しも、FOMC参加者の間で0から0.75%までと、今後の追加利下げ幅の見解も割れた。
米大統領選挙まで残り2ヶ月。次回FOMCは大統領選挙投開票の直後の開催になる。政治情勢に対する質問に、パウエル議長は「私たちの仕事は米国民のために経済をサポートすること」とだけ答えた。景気下支えとなる利下げ判断をめぐって「政治的」な政策変更とみられるリスクが残る。
(原文1437文字→561文字)
前日に米紙Wall Street JournalのFRBウォッチャーNick Timiraos記者による0.5%利下げ観測の記事が出て、市場での織り込みが進んでいたのでしょう。為替市場は憶測とポジション調整で大きく乱高下しましたが、米国株価はFRB発表でも割と平静でした。ノーサプライズ。
中東情勢の急転によるインフレ再燃のリスクは残るものの、米国経済は底堅さを見せています。従業員の解雇が容易な米国は、企業の業績見通しが悪化すれば従業員解雇という安直な手段で業績回復を図ろうとするため、雇用情勢が経済環境をかなり正確に映し出してくれるのです。その雇用は今のところはまだ堅調さを維持しています。
政策金利5.5%の環境下で堅調って。不思議なほどの米経済の強さです。