【時事抄】 日米の国政選挙だけじゃない、ロシア周辺国の選挙にも注目
ロシアの暗躍を語る、10日ほど前の日本経済新聞に掲載された秋田浩之氏の署名記事を要約しました。記事にはジョージア、モルドバという、あまり馴染みのない国々が出てきます。まずは両国の地理を確認しましょう。
かつてここは「グルジア」と呼ばれていました。2015年4月以降、「ジョージア」へ国名呼称を変更しています。2008年にロシア連邦が軍事侵攻し、その領土の一部を力づくで独立させました。その過程で国名呼称をグルジア(ロシア語)からジョージアに変更したのです。
モルドバはウクライナに接する旧ソ連構成国で、親欧米派が現職大統領として国民の支持を得ている国です。かつてソビエト連邦の属州だった同国ですので、当然ながらロシアは現政権を快く思っていません。
<要約>
ウクライナ侵攻を続けるプーチン大統領の執念とロシアの脅威は、軍事力だけに止まらない。汚職、利権、脅迫、情報操作などを駆使した裏工作を仕掛け、狙いをつけた国家の中枢に浸透して親ロシア国家に染めていく。
◆分水嶺のジョージア
こうしたロシアの「闇の力」を放置すれば民主主義が揺らぐ。分水嶺となるのが、ロシア隣国ジョージアで10月26日の行われる議会選挙だ。同国は08年にロシアから侵攻されて約2割を領土を占拠された。世論は親欧米的で、国民の8割が欧州連合(EU)への加盟を望む。しかし国政は真逆で、政権与党は親ロシアの姿勢を鮮明にする。
強権を強める与党は、選挙で過半数を占めれば野党を事実上禁止にするという信じがたい主張を述べる。08年のロシア軍事介入の端緒となった衝突を招いた「罪」で、当時の政権(現在の野党)指導者を裁判にかけるとも言う。プーチン政権が喝采する内容だが、民意に逆行したこうした主張の裏側にはロシアの影が浮かび上がる。
◆利権と裏人脈
プーチン政権の裏工作によって、ジョージア等の周辺国がロシアの影響下に陥る危険性が、とある国際会議で議論された。ロシアの裏工作と一例が、利権と裏人脈を使った政治への介入だ。
ジョージア現与党を創立し、重要人事や政策を牛耳るのが、「影の権力者」大富豪ビジア・イワニシビリ氏だ。彼はロシアで事業を広げ、ジョージアの国内総生産(GDP)の3割強に相当する富を持つとされる。、12〜13年には首相を務め、クレムリンとの深い関係が指摘されている。
表舞台には姿を見せなかった彼が、4月末の集会で演説し、反欧米・親ロシアの姿勢を明言した。これに呼応するかのように、政権与党の民間への締め付けが強まった。同国幹部の一人は言う。「プーチン政権は腐敗した利権網を使って相手国の権力中枢に潜入し、国家の政策決定を事実上支配する。これが現在のジョージアで起きていることだ」
◆脅迫も駆使
脅迫も政治介入の常套手段だ。同国スパイ機関トップ、対外状況局(SVR)長官の言及もこの一種だ。それは、議会選後のジョージアで政権転覆を企図する情報があるから、与党敗北なら直接介入もあり得る、と警告したのだ。
非公開の調査によれば、与党の支持率は3割程度に留まる。野党幹部は「世論調査を見れば与党が勝つのは難しい。だが彼らは選挙管理局を支配しており、投票結果を操作する恐れがある」と語る。与党が敗北を認めず、これに反した大規模なデモが広がることで、混乱に乗じたロシア軍が軍事介入するとのシナリオが囁かれている。
こうした裏工作によるロシアの脅威が世界で猛威を振るっている。米国務省が22年9月に公表した分析では、14年以降ロシアは20ヶ国以上の政治家、政府高官に秘密工作を進め、投じた資金は3億ドル(約426億円)を超えるという。米国内でも偽情報の拡散の疑いで米国内で活動するロシア国営メディア職員2人を起訴している。
旧ソ連モルドバでも10月20日に大統領選挙がある。ロシアの介入が懸念されるが、民主主義がロシアの「闇の力」に屈してはならない。ジョージアやモルドバの行方が大きな資金石になる。
(原文2117文字→1307文字)
世界が注目する米国大統領選挙の投票日まで1ヶ月を切りました。華々しく選挙戦に躍り出たハリス女史でしたが、子どもを含めた多数の民間人を多数殺傷して憚りないイスラエルを支援する現政権の副大統領として、難しい立場に立たされています。アラブ系米国人たちの支持を失いつつあり、選挙戦は予断を許しません。
日本の政局もいよいよ今月27日に衆院選の投開票と決まりました。権力基盤を固めるべく、また恨み骨髄の旧安倍派(清和会)の粛清するべく、石破首相の大いなる賭けに出ました。しかし、こちらは自民・公明の連立与党の過半数割れ惨敗との結果に至るのではないかと見ています。さてさて。
そんな日米大勝負のなか、ニュース記事では隅っこの扱いになるでしょうが、ロシア周辺国ジョージアの議会選挙(10/26予定)、ウクライナ隣国モルドバでの大統領選挙(10/20予定)の結果にも注目しないと、という気になりました。モルドバでは同日、欧州連合(EU)加盟を国家目標として憲法に明記することの是非を問う国民投票も実施されるそうです。ロシアの影響力と裏工作のほどや如何に。