【時事抄】 上昇する銅価格が意味すること
銅の英語名はCupper(カッパー)。銅の国際価格は、世界経済の先行きを診察するお医者さん、という意味で「Dr. Cupper」(ドクター・カッパー)の異名があります。銅が建設、機械、運送、といった基幹分野で幅広く使われるからです。いま銅価格が上昇を続けています。
今朝の日本経済新聞に記事が出ていましたので見てみましょう。
<要約>
銅の国内価格が上昇を続けている。指標となるJX金属の銅建値は25日現在、1トン156万円をつけ、年初からの上昇率が25%に達する。国際価格の高騰、円安の拍車が要因と見られ、銅地金を加工した製品も価格上昇しており、インフラ関連、家電など幅広い産業のコストを押し上げる。
国際指標であるロンドン金属取引所(LME)価格は、22年4月以来の高値圏である3ヶ月先物で1トン9988ドルへと上昇し、年初からの上昇率は17%になる。今年3月、中国の大手製錬会社による協調原産が報じられ、4月には米英両政府がロシアへの追加制裁として、国内取引所でロシア産の銅、アルミニウム、ニッケルの取引禁止発表した。市場で供給リスクが意識されている。
外為市場ではFRBの早期利下げ観測が後退し、日米金利差を意識した円売り・ドル買いが続く。25日に1ドル=155円台後半をつけ、23年末の140円台から円安が加速し、円建ての建値上昇に拍車をかけた。
銅の関連分野は裾野が広く、銅地金や銅合金を板、棒などに加工した伸銅品の卸値も、建値の上昇を受けて上がっている。銅建値上昇が続けば最終製品の価格にも影響が及ぶ公算が高い。
電線などで銅が大量に使われる建設資材、産業用機械といった基幹産業は「先行投資」として建設、製造される場合が多いことから、銅の国際価格が世界経済の今後の行方を占う「先行指標」として有用性が高い。
経済の良し悪し、いわゆる「景気」は、国内総生産(GDP)の数字で定量化されますが、さまざまな経済活動の成果を集約する必要があるため、3ヶ月に1度の頻度でしか公表されません。銅価格は、景気のありようを示す速報性の高さも有用視されている理由です。
記事には「中国の需要増期待を受けた国際価格の高騰」との記述もありました。中国政府が金利の引き下げ策をとって景気浮揚に動く可能性はあります。ただ一番大きな要因としては、ゴールド(金)価格の上昇が示すように、世界的なインフレの再燃を見越した目端の利いた市場関係者が、先物買いをしているのではないかと見ています。