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【時事抄】 トランプ氏に固唾を吞む世界再び
トランプ氏の4年間が再び始まることになり、世界の注目を一新に集めています。アルコール依存症で若くして死去した実兄を想い、タバコや酒類を一切やらないという以外に真面目な一面もある複雑な性格の持ち主。過去の米国を取り戻すことに執着して、まず移民の排斥から始めようとしています。
これから始まるトランプ氏の政策の帰結を予想し、今から8年前の株価急騰、いわゆるトランプラリーは今回不発に終わりそうだと日本経済新聞の分析記事が出ていましたので要約しました。普通に考えれば記事の通りなのですが、トランプ氏の発言やSNS投稿次第ですぐに状況は変わるでしょう。
<要約>
いよいよトランプ氏が20日に大統領就任式に臨む。前回大統領に就任した17年、株価は就任式時点で8%高をつけた。今回11月大統領選当日比で米ダウ工業株30種平均3%高にとどまっており、前回と対照的な動きとなっている。
背景にあるのは、トランプ氏が掲げる政策への市場の警戒感だ。トランプ氏は自身のSNSで就任初日に大統領令でメキシコ、カナダからの全輸入品に20%の関税を、中国からの輸入品には10%の追加関税を各々課すと投稿している。関税引き上げが招く経済停滞やインフレ再燃リスクなど、トランプ新政権がもたらす「負の側面」に意識が向いている。
減税や関税引き上げ等の新政策はインフレを再燃させかねない。米連邦準備理事会(FRB)は22年3月から累計5.25%まで利上げしてインフレ抑制に努め、24年9月には利下げ開始できるまで状況を落ち着かせた。大手投資銀行は仮に全世界を対象に10%関税を発動した場合、米インフレ率を1ポイント押し上げると試算する。
新大統領就任を前に、長期金利は上昇で反応しており、10年物国債の利回りが一時4.8%に達した。専門家は関税引き上げが貿易戦争の火種となり、需要抑制・物価上昇を同時に招く恐れがあると懸念する。
金利上昇は企業活動への重荷となるだけでなく、米国株にも逆風が吹く。S&P500ベースの株式益回りが長期金利と逆転現象を招いており、株式に投資するより安全性の高い債券に投資する方が高い利回りが得られるという、2001年までのITバブル期以来の現象が起きている。
法人税減税や規制緩和といった米国企業に恩恵をもたらす政策も、金利上昇が打ち消してしまう懸念がある。一方でイーロン・マスク氏が主導する政府外助言機関「政府効率化省(DOGE=ドージ)」や資本規制の緩和の恩恵を受ける企業には追い風が吹くだろう。
こうした「米国第一」主義の政策を、トランプ氏に忠実な身内で側近を固めており、トランプ氏の暴走に歯止めが効かない運営体制となる。これは共和党主流派の閣僚・官僚がトランプ氏と衝突して、ブレーキ役を果たした1期目とは大きく異なる。この点にも市場は身構えており、投資家にとって神経質とならざるをえない状況が続きそうだ。
大統領就任初日から前例を遥かに上回る数の大統領令を発布して前政権の施策をことごとく方針転換するようです。議会も上院下院とも共和党が過半数を占める安定政権と言われていますが、大統領の暴走を食い止める米国のチェック&バランス機能が試されるとも言えるかと思います。
また大統領は4年の任期ですが、そのちょうど「中間」にあたる2年後に全米で連邦議会の上院と下院の議員選挙、州知事選挙があります。中間選挙と言われ、現職の大統領に対する評価の場でもあるとされています。
現在は上下両院で共和党が多数を占めていますが、この2年の結果如何では中間選挙で民主党が議席を奪還する可能性もあります。こうなるとトランプ氏もレームダック状態にならざるを得ませんので、最初の2年は米国内景気に配慮した政策を打つのでないでしょうか。米国株高は2026年後半ごろまでは続くと見ています。