君に代わりがいるのならどうか教えてよ
人の記憶というものは、曖昧である。
よって思い出というものは、時間の経過と共に美化されてしまう傾向がある。
第一話 〜あのときの君を探している〜
(さわやかなオープニング曲♪)
あれは3年前の春。
家族旅行で栃木県の塩原温泉へ向かっていたときのことです。
東京から塩原温泉まで車で約2時間半と長時間のため、途中パーキングエリアで休憩をすることにした。
体を伸ばしがてらふらっと建物内に入ると、”串に刺さったずんだ餅のようなもの”が私の目に飛び込んできた。
当時の写真(食べかけですみません)
当時の私はモチモチした食べ物への執着が異様に強く、もちもちしたものを見るとすぐに
「もちだ!食べる!」
となっていた。だがこの食べ物に関しては一つ引っかかる点があった。
「ずんだって何?」
私はずんだ餅の存在を知らなかったのだ。
おもちは食べたいが、緑色をした未知のずんだが付いている…うーん…
そんなことを考えながらもじもじしていると「食べるかい?」と母がこの”串に刺さったずんだ餅のようなもの”を買ってくれた。
まさしく、このときに食べた”君”のことをずっと忘れられずにいるのだ。
私は時々、君を思い出しては、いろんなお店でずんだ餅やお団子を買って食べる。だけど、なんだかどれも違う。
やっぱり君じゃなきゃだめだったんだ。
この世界で君は唯一無二の存在。代わりなんていなかったんだ。って…。
今になって気づいてもどうしようもないっていうのに、想いはどんどん強くなっていく。
出会った時は、こんなに忘れられなくなるなんて思っていなかったよ。
串に刺さったずんだ餅
…のような
…君。
ああ、移ろいで行く季節の中でも、君のことを思い出してしまう。
桜が咲いたときだって、セミの声が賑やかになってきたときだって、葉が色づいてくる頃だって、雪が降ったときだって、不意に思い出してしまうんだ…。
そんな私は決意した。
インターネットというハイなテクノロジーを駆使し、君を探し出そうと。たとえ君が私のことを忘れていても…
手がかりはたった2枚の写真と
“東京から塩原までのパーキングエリア”という情報。
(建物内の写真を1枚撮っていた。)
「しかし長い戦いになりそうだな…」そう呟いたのも、実は1年前にも君を探そうとしたのだが、結局見つけられなかったからだ。
でもこの想いは止められない。そして今の私にならきっとできる。「よし!」と気合を入れ、早速パーニングエリアを調べはじめた。
すると
「絶対にここじゃん!!」
という外観の”羽生パーキングエリア”が出てきた。なんともあっけない。1年前にはあんなに苦労したのに…。
パーキングエリアを見つけられたらゴールも同然だ。出店している店を1つずつ見ればいいのだから。
さっそくTwitterの検索ワードに「羽生PA」と入力すると、一番上に「船橋屋」というアカウントが出てきた。
中を覗いてみると、「絶対にここじゃん!!」というくず餅の画像が出てきた。
Fin.
こうしてこの戦いは、5分ほどで幕を閉じたのだった。(正解は船橋屋のくず餅でした。くず餅かい。)
非常に早い決着がついた戦いだった。よかったけど。
というか写真に収めておくのってすごく大事だ。
後日、この話を姉にしたら用事ついでに近くの店舗で買ってきてくれて、無事に君と再会することができた。
あの頃と雰囲気が少し違っていたけど(ずんだではなくて、黒蜜ときな粉が付いていた)、中身は全然変わっていなくて、なんか安心したよ。
美化されない思い出っていうものもあるもんだな。なんて思いながら、夢中で、そりゃもう夢中で頬張った。(とても美味い。食感が最高。大満足。)
めでたしめでたし。
いま思ったんだけど
はじめに書いた「あれは3年前の春。家族旅行で栃木県の塩原温泉へ向かっていたときのことです。」
って、”本当にあった怖い話”の導入みたいで、
なんかこわいな〜、やだな〜こわいな〜。