記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『スマホを落としただけなのに最終章』雑感【ネタバレ有】 - 邦画サスペンスと韓国ノワールが混ざった独特な味付けがちょっとおもしろい

まえがき


『スマホを落としただけなのに~最終章~ファイナルハッキングゲーム』を見ました。
取り留めもなく感想を書きます。

『スマホを落としただけなのに~最終章~ファイナルハッキングゲーム』…2024年11月公開。国外逃亡した連続殺人鬼が、その天才的なハッキング技術を駆使し、日本政府へと大規模なサイバーテロを仕掛けるクライム・サスペンス。原作小説は志駕 晃・著。




(⚠️本作、ならびに『スマホを落としただけなのに』シリーズ計3作品のネタバレを含みます)








ネタバレ有り感想

あれ、意外と…


実は全然期待せずに観に行ったんですよ。

久しぶりに映画館行きたいなーと思い…
直近で見た『ベイビーわるきゅーれ』シリーズにハマっていたので、
その主演だった高石あかりさんが出てることもあり、ちょっと見てみようかなと。
ルート29』とどっち見るか迷ってました。こちらも近いうちに観に行きたい。


この映画に対する僕の評価は良くも悪くも『ポップコーンムービー』で。
細かな演出や細部のディテールに凝って見る作品というよりかは、
あまり深読みしすぎず、気軽に楽しんで見るぐらいがちょうどいいイメージ。

なので今回もその期待値低めモードで、粗を含めて楽しもうかなと思ってたんですが、あれ、意外と…
なんか存外、良かったですね、今回。


ちょっとウルッと来るシーンもありましたし。
俺、泣けるんだ…『スマホを落としただけなのに』で…」とちょっとびっくりした。

(失礼な物言いになって恐縮なのですが、そもそも「泣ける要素のある映画」だと思って見に来てなかったので…

『レザボア・ドッグス』とか見る時に俺泣いちゃうかもとか考えないじゃないですか)


『あなたの番です』とかの
センセーショナルかつちょっとコミカルなサスペンスもののTVドラマを見るくらいの気持ちで見ると
思ってた以上に楽しめます。(褒めてるのかコレ?)
でも期待値はできるだけ低い方がいいと思います(たまに笑っちゃうくらい変な部分もあるので)




孤高のダークヒーローかつ、キモいストーカー

今作の主人公は、
母親からの虐待を受け精神を病み、シリアルキラーとなった男・浦野(演・成田凌)。

1作目では終盤までその姿を見せずに暗躍し、クライマックス、度肝を抜く長髪姿でサプライズ登場。
当時、二枚目の俳優としてブレイクしていた成田凌さんのまさかの起用・まさかの怪演が、公開後を中心に大きく話題になってた気がします。


前作彼は悪徳汚職ギャンブル刑事を◯したあと、
神奈川県警のスプリンクラーをハッキングし、署内をビショビショにしながら脱獄
しましたが、

2作目ではあんまり悪いことしてないね、キミ


今作では韓国におり、現地の反政府組織「ムグンファ」に見出され、テロに加担します。


1~2作目の彼は今日日珍しいくらいステレオタイプな「サイコパスキャラ」という印象だったんですが、
今作の浦野はちょっと違う。

彼が、ムグンファの幹部の片腕である女性・スミン(演・クォン=ウンビ)との交流のなかで、
何を感じ、どんな行動をとるのか、
かなり予測不能な状態で物語は進んでいきます。


この時の浦野、めちゃくちゃカッコいい「闇を抱えた孤高のダークヒーロー」と、
キモいストーカーの変態」の間をいったりきたりするので、感情変化が忙しい。



スミンはてっきり今回の第一の犠牲者枠なんじゃないかとも思っていた節があり、
それがここまで心の交流が描かれるというのは、いい意味で予想外でした。



そんなわけなさすぎてちょっと面白い

テロ計画が進行していく中、浦野と、彼と因縁のあるサイバー課の刑事・加賀谷(演・千葉雄大)はほぼ時を同じくして、
ムグンファに情報を流している何者かがいることに気が付きます。

日本政府側にいると思しき謎の内通者『butterfly(バタフライ)』。
その正体を探る加賀谷は疑心暗鬼に陥っていきます。


一瞬まいやん演じる加賀谷の妻・美乃里がバタフライなんじゃないかと疑われるシーンがあるのですが、
(観客からすると)そんなわけなさすぎてちょっと面白い。

バタフライという言葉が似合うのだけは分かる


加賀谷と彼女の病室のシーンは、
直前に2作目『囚われの殺人鬼』を見ていた積み重ねもあり、ちょっと涙腺が緩みかけました。
(全体的にこのシリーズ、クライム・サスペンスを描くよりもハートフルな部分の方が上手な気がする。1作目はだいぶ前に見たので細部は覚えてないんですが…)


現代的な犯罪手法


浦野が仕掛ける犯罪手法はかなり鮮やかに描かれてましたね。


中盤、スミンを虐待する父親から彼女を救った浦野。
成田凌さんの雰囲気ある佇まいも相まってダークヒーローとしてのカッコよさはもうカンストまで上昇するのですが、

1作目の標的だった麻美(演・北川景子)が韓国にやって来るというニセの情報を知ると
一転してキモいストーカーに戻り、テロの仕事もほっぽり出して彼女のホテルに会いにいきます。
(ムグンファの浦野への監視は全体的にちょっと緩すぎる)


ホテルには加賀谷と、前作登場した公安の兵頭(演・井浦新)率いる刑事たちが待機し、厳重警戒状態。
青いジャンパー、青いキャップ。
特徴的な服装でホテルにやってきた浦野は、エレベーターに乗ります。

麻美がいるとされている9階、エレベーターから出てきた青いジャンパーの人物を刑事たちが捕らえますが、
なんとそれはまったくの別人。
1階にいた兵頭たちも同じく青いジャンパーの人物を捕まえますが、やはり浦野ではない。

浦野はあらかじめ、ネット上で「当日指定の服装を着て、ホテルを訪れる」簡単なバイトの募集をかけ、自らのダミーを複数人用意し、それぞれエレベーターの各階に向かわせていたのでした。
追跡に気づいた浦野は警備の薄い中間階でエレベーターを降り、非常階段で悠々と逃げおおせます。


昨今大きな問題になっている所謂「闇バイト」を利用する浦野。
彼の犯罪テクニックがズバ抜けていることを示す、良いシーンだったなと思います。


また、彼を「神」と信奉する協力者たちのひとり・瀬戸千早を演じたのが、

来年の朝ドラヒロインにも内定し、近年話題作への出演が止まらない高石あかりさん。

オドオドしたカフェ店員とクールなブラックハッカー、二面性のある役どころ


全体を通してかなり短い出演時間なのですが、
その中でも強烈なインパクトを残していました。

カフェのシーンではオドオドとした小動物のような振る舞いで、
蚊も殺せなさそうな店員を演じ、


浦野の乗った船を待つシーンでは、
(この時の浦野が往年の映画スターみたいに船に仁王立ちしてて
劇場で声出して笑ってしまった)

自然体ながらも裏社会に馴染む達観した雰囲気が出ていて、
存在感がありました。
(この辺の説得力はやはり『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの殺し屋・ちさと役の経験がめちゃくちゃ大きいんじゃないかと思う)

相方の男性ハッカー(すみません、調べても役名や役者さんの名前が出てこず、誰かご存知の方いればコメントください)ともども、飄々とした雰囲気がすごく良くて、
この2人の物語もちょっと見てみたくなりましたね。



しかしこの辺のキャストをきっちり押さえる謎のセンスはこのシリーズすごいんですよね。
2作目は今田美桜さんとか出てたし。ちょうど上り調子の人をうまいことキャスティングしてる気がする。

シナリオや演出にはちょっと陳腐な部分が悪目立ちする時もあるんですが、
総じて良くも悪くも平均的な邦画って感じなのに、成田凌さんの演技力・表現力・カリスマ性を活かし切っているのと、
題材、キャスティングの現代性・フレッシュさにおいて一歩リードしていて。
だからなんか見れちゃうんですよね。

創作者として、ある種のベンチマークとして見てる節はあるかもしれないです。色んな意味で現代の世相を捉えた映画として。



話が逸れましたが、終盤で浦野は、
日韓首脳会談の会場にドローン攻撃を仕掛けるべく、
なんとオンライン上のフリーゲームを作成・公開します。

ユニティルームのような無料ゲーム投稿サイトに「ミツバチを操作してクマを攻撃するゲーム」を投稿し、テストプレイを募集。
それが全国のゲーマーたちの目に止まります。

(「なんかあんまバズんなそうなゲームだな…」とも思いましたが、まぁその辺は千早たちがうまいことシステムをハックしてランキング上位とか
いろんなサイトの広告に出るよう工作したんでしょう。)


仕掛けは単純、プレイヤーたちの操作するミツバチの動きが爆弾を搭載したドローンと連動し、クマがいる場所は会談の会場。
そうとも知らないプレイヤーたちの操作によって、会場は大量の爆弾ドローンに包囲されてしまいます。

(もうスマホ落としたとか全然関係ないな)


本当にこんな大規模なことが可能なのかは分かりませんが、SteamなどのプラットフォームでPCゲームが大流行し、無料や安価なゲームが増えたいま、
フリーゲームの危険性についてそこまで真剣に考えたことがなかったので、盲点を突かれた感覚がありました。
フリーゲームをDL(落と)しただけなのに犯罪に巻き込まれないよう、用心します。


会場は加賀谷の機転によりなんとか難を逃れるのですが、
あのジャミング銃ってほんとにあるやつなんですか??


あとがき

なんとなく見るつもりが、意外と見るところが多かった本作。
スミン役のクォン・ウンビさん、存じ上げなかったんですが「IZ*ONE」のメンバーだった方なんですね。
上ではあまり描けなかったんですが、かなり体も張った演技をされてて。印象に残りました。

日本パートでは大衆的な邦画サスペンスが展開していくのですが、韓国側は「傷を抱えた男女」「裏切りを許さない犯罪組織」を独特なタッチで描いていて。
あんまり詳しくないんで恐縮なんですけど、なんか韓国ノワールっぽいんですよね。
(『The Witch 魔女』の1作目くらいしかまだ見たことないんですけど)

日本映画と韓国映画の味が同時にし続けるのが、
変な話、今までにない映画体験で、ちょっと面白かったです。

ネタバレありといいつつ確信部分は避けたつもりで感想を書いたので、
成田凌さん、クォン・ウンビさん、高石あかりさん、いずれかにご興味がある方、
またご自身で何か創作をされている方は、
もしかすると劇場に足を運ぶことでなにか得るものがあるかもしれません。


あと主題歌はクッソ良かったです。
Imaseさん最高!
劇場の音響で『Dried Flower』を聴けるのが一番うれしいかもしんないです。ちょっとアレンジ入ってたし。


あー。キンパ食べたいな。

いいなと思ったら応援しよう!