「適職とは?」対話カフェそもそも レポート#17
【開催日時】
2023年7月8日(土)
12:45~14:45
@池袋会場
第17回のテーマは「適職とは?」です。
適職……自分の性格や能力に合った仕事。
どんな仕事が自分の適職なのか、気になる人は多いようです。
適職を知りたい。
そんなニーズは強く、適職診断というサービスもあります。
でも、診断された適職が、自分のやりたくない仕事だったら?
適職じゃないと幸せになれない?
自分に合った仕事ってそもそも何のこと?
「適職」について対話したレポートです。
はじめの問い
まずはテーマについて、抱いている問いを挙げていただきました。
「適職の定義とは何か?」
「万人に通じる適職の条件はあるか?」
「適職に就くのは良いことか?」
「経験を積んだり、年を取っていくと適職は変わるのか?」
「適職とは、誰の視点なのか?」
これらの問いが挙がりました。
辞書を見れば定義は載っていますが、参加者の皆様が感じている定義をまず列挙するのが良さそうだと考えて、次の問いを立てました。
あなたが思う適職の定義とは?
「何かと都合が良い」
「経験や能力に合っている」
「相性が良い」
「その人が持つ属性に合っている」
「自分にとって苦痛かどうか、苦痛であれば適職とは言えない」
「やりがいを感じられる」
「楽しいと思える」
「適職と判断するには、他の仕事を経験してないとわからないのかどうか? 比較して初めて適職がわかる?」
「社会に出てからずっと同じところで働いていても、適職だと思える人はいそうな気がします」
「伝統ある家業を継いでいる人とか、適職って思えているのか、ってことですね」
「そうなると、アイデンティティに結びついているか?が大切になってきそう」
「やっぱり、誰の視点からの適職なのか?で、結構違ってくる気がします」
「誰の視点、となると、どんな視点がありますか?」
「本人の視点と、会社の視点かな」
「切り分けて考えた方が良さそう」
まずは雇用する側、会社視点からの適職を考えてみることにしました。
会社視点での適職とは?
「その人が、より高いパフォーマンスや成果をあげられる仕事」
「会社にとって都合の良い業務」
「人を中心に考えてるのではなくて、まず仕事があって、それに合わせた人を置くわけですね」
「本人の意向って、一応のヒアリングはあるけど、どれだけ反映するかは業界や業種によりますね」
「公務員はあまり反映されないイメージ。その分、待遇が手厚いことでバランスが取れているんでしょうけど」
「本人希望はある程度、汲み上げないといけない。完全に無視すると、本人にとっては楽しくないので、結果的に損失につながる。仕事のパフォーマンスが下がるし、最悪辞めてしまうかもしれない」
「会社視点だと、利益や効率が基準になるので、まあまあわかりやすいですね」
続いて、自分視点の適職を考えてみます。
自分視点での適職とは?
「やりがいや、楽しさが重視される」
「自分視点でも、より高いパフォーマンスがあげられるか?は共通していると思います」
「高いパフォーマンスをあげることで、その人にどんなメリットがあるんでしょうか? 会社視点であれば、売上が上がるとかでわかりやすいのですが、個人の場合は?」
「活躍できている、役に立っている……という実感、かな」
「普通に、待遇が良くなるメリットがありますよね」
「確かに給与が増えて嫌な人はあまりいない」
「自己評価が上がる」
「この場合の自己評価について、もう少し詳しく説明していただいてもいいですか?」
「『自分はこの仕事をしてもいいんだ』『向いているんだ』と、自分で自分をそう思えること、です」
「それは、どういったときに感じられるのでしょうか?」
「周りがうまくできていないことを自分はうまくできているとか、活躍できていると思えたとき」
「その先に『適職だ!』という実感があるのかも?」
「パフォーマンスの話に戻りますが、成果をあげられると、承認欲求が満たされるのかもしれない」
「あと、適職の条件として、他人には苦痛だけど自分には苦痛ではない、とかもある。例えば、メジャーリーグの大谷選手は、飲み会を断ってトレーニングしていたりする。あそこまでストイックにはなかなかできない。トレーニングってそれなりにつらいはずだけれど、本人にとってはつらくなさそう」
「自分には苦痛じゃない、という事実は、活躍しているんだ!という実感や、その人のアイデンティティにもつながりそうですね」
「そう考えていくと、『あなたじゃなきゃダメ』が浮き彫りになったら、適職であると感じられるのかも」
自分視点の場合は、利益よりも、活躍している実感、自分じゃなきゃダメなんだという実感が大切……?
ここで、序盤にあがった問いをピックアップしてみます。
他職の経験がなくても適職と思える?
「これはどんなケースが考えられそうでしょうか」
「同期入社の中で、自分の評価が高いとき。同期が比較対象になりますね」
「さきほども少し出ましたが、伝統のある家業を継ぐケース。何代も続く酒蔵とか、歌舞伎役者とか……」
「そうか、それはすでに「あなたじゃなきゃダメ』が強いわけですね。その家に生まれた時点で、後継者として祝福されている」
「『あなたじゃなきゃダメ』はもうちょっと違う言葉に置き換えられそうですか?」
「属人性が強い、とか?」
「『あなたじゃなきゃダメ」を言い換えると、社会から自分自身を承認される、ということかな。社会との繋がりができて、自分自身の社会的価値を実感できる」
「前回の対話(生きている価値とは?)に通じるところがありますね」
「なるほど。いわゆる『やりがい搾取』と言われる仕事は、そこを突いてくるわけですね。承認される、社会的価値を実感できる、その代わり給与安いですよ、と」
「やりがい搾取が起きやすい業界はありますよね。福祉とか、教育サービスとか……」
「その仕事が自分に向いているかどうかって、結局は自分のアイデンティティで判断しているように思います」
「社会から見て「あなたじゃなきゃダメ』というニーズがあるけど、本人がやりたくない場合は……?」
「それはやっぱり適職じゃない、ってことになりますよね」
「伝統芸能の長男として生まれたけど、継ぎたくない!というパターンですね」
「昔見たベン図を思い出したのですが、『得意・やりたいこと・社会からのニーズ』の3つの円があり、すべて重なるところに『適職』がある」
「社会や周りの人から必要とされる、っていうのは大きな要素みたいですね」
「得意とかやりたいことが、経験や、年齢を重ねて変化したら、自然と適職も変わりそう」
では、最初に挙げた問いを改めて考えてみます。
適職に就くのは良いこと?
「良いこと、と一言で言いたくなりますが、そこをあえて意地悪に考えてみて……良くないケースはありそうでしょうか」
「その人の適職が、倫理に反している場合はどうなんでしょうか。詐欺とか、闇バイトとか、反社的なものとか」
「詐欺グループの元締めとかは、たくさんの人をまとめあげているから、そういった才覚を発揮していることは間違いないですよね」
「自分の能力を発揮できる仕事が、倫理に反するとき、簡単に抗えるのか、難しいのか?」
「倫理vs承認欲求、みたいな対決構図になりますね」
「例えばハッカーの場合、ハッキングの技術を熟知しているから、それを活かしてハッキングから守る側の仕事もできますよね。ハッキングの恐れがあるものを作るとき、作る側もハッキングのことは学んでいないといけないですし」
「悪いことの手口を熟知しているというのは、社会で役に立てる可能性があるのかも」
「さっきの『自分にしかできないこと』が、犯罪行為だった場合とか……悩ましいことになりますね」
「本人が公言しづらい仕事が適職って、幸せなんでしょうか?」
「例えば、どんな?」
「性風俗産業とか、公言できる人は気にならないのかもしれませんが、実際は公言できない人は多いと思うんです」
「家族や友人に言えない仕事、でもそれが適職だと感じている場合、本人は幸せなのかな、って思いました」
「公言すると差別的な目を向けられる仕事はありますものね。それでなくても、職業によっては偏見が強かったり」
「差別を受けやすいとか、社会から低く見られがちな仕事は、確かにありますね」
「職業差別が良くないことはもちろんわかるのですが、現実的にはやむを得ないこともあります」
「差別を受けやすい仕事が適職だった場合は幸せなんでしょうか?」
「身内とか、近い人が理解してくれるかどうかは大きいと思います」
「差別は少なくても、顧客から辛い目に遭いやすい職業が適職な場合はどうでしょうか? 鉄道関係とか、通常業務がすごく大変なのに、何かあると一部の人から強く責められたりしますよね」
「サービス業とか、行政関係とかもそうですね」
この流れをまとめて、新たな問いを立ててみます。
適職と幸福が相反する場合は?
「ありえますよね」
「まず、その人の幸福が損なわれる仕事は、適職と言えるんでしょうか? 能力も適性もあって、その人しかできないというニーズもあるけど、本人が幸福ではない」
「適職の要件に『本人の幸福』が含まれるか?ってことですね」
「本人の幸福も含むなら、それは適職というより、『天職』なんだと思います」
「では、さっきのベン図で考えて、得意でやりたいことだけど、社会からのニーズだけがない仕事は適職と言えるのでしょうか? 例えば、音楽系のアーティストとか、芸人とか」
「芸人とかは、ウケなくてニーズが場合、それはそもそも得意なのか、って疑問も湧きます」
「本人が感じているやりがいと、ストレスを、天秤にかけてみるしかない。それで本人がどちらを選ぶか」
このあたりで時間いっぱいとなりました。
ファシリテーターの思うこと
適職とは何か?を突き詰めていくなかで、
「あなたじゃなきゃダメ」
「社会からのニーズ」
といった言葉が印象に残りました。
能力や適性に合った仕事というだけでは適職とは言えず、「私という個人が、社会の役に立っている」という実感が大切なのだ、と思い至りました。
後半では、適職と倫理が相反するケースを考えましたが、思いのほか盛り上がりました。
「職業」そのものが、とても幅広い話題であるからこそ、様々な論点が生まれるのだと再確認できました。
「対話カフェそもそも」も、社会のニーズに応えられるイベントになるよう励んでまいります。
参加してくださった皆様、ありがとうございました!
次回の開催案内
次回は2023年7月29日(土)開催。
テーマはまだ未定です!
✅この記事が気に入ったら、スキを押して、こちらからフォローしてくださると嬉しいです!
✅対話カフェそもそもに興味を持った方は公式サイトへどうぞ!
✅開催案内は、TwitterまたはInstagramでも告知しています!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?