「自己開示とは?」対話カフェそもそも レポート#10
【開催日時】
2023年3月19日(日)
12:45~14:45
@池袋会場
第10回のテーマは「自己開示とは?」です。
一般的な定義によれば、自己開示とは
「自分のプライベートな情報を、他人に打ち明けること」。
自己開示をすることで、人との信頼関係が深まる、互いの距離が縮まる、とされています。
ビジネススキルや、コミュニケーションスキルのひとつとして推奨されることが多いのですが……。
自分のことを話すのは苦手、抵抗がある、という声も多いようです。
おすすめされるけど、なんだかやりづらいコミュニケーションスキル、自己開示。
今回の対話のレポートをまとめました。
まず対話の前に、自己開示の一般的な情報を参加者で共有しました。
自己開示の定義。
有効とされる理由。
自己開示のポイント。
自己開示の深さレベル。
自己開示、自己提示、自己顕示の違い。
これらの資料を見てから、対話を始めています。
自己開示の印象は?
資料を見た上で、自己開示についての率直な印象や感想を聞いてみました。
「怖い」
「できる人に憧れる」
「馴染みがない」
「最近よく聞くようになった」
「振り返ると、自分は無意識で自己開示をしていたと気づきました」
「SNSでインフルエンサーがよくやっているイメージ」
インフルエンサーの自己開示ってどんな内容?という掘り下げに対して……
「昔の失敗体験や、仕事が楽しくなかったとか、収入が低かった頃などのエピソードが多いかな? そこから、今の自分はこれだけ変わった、という話に繋げていく印象」
さらに、自己開示についての印象は続きます。
「その後のメリットを意識しているから、人間関係での『先行投資』みたいに思えました」
「先行投資と聞くと、自分も近い印象があって、とても打算的な印象がある。悪い言い方をすると、下心というか……」
下心。わかります。
「自己表現とは違うものなんでしょうか?」
「自己表現と自己開示は、かなり違うものだと思います。関係を深めること狙ってカミングアウトするのが自己開示かな、と」
自己開示と自己表現については、後で再び話題に上がります。
「自己開示力が高いと、周りから評価されやすいと思います。でも、大人と子どもでは評価が違う。大人は自己開示できることが評価されるけど、子どものうちは『何言ってんの?』って逆効果になることも多そうだな、って」
「人間関係って、その中で優劣を決めているみたいなところがあると思っていて。自己開示は、その優劣のバランス調整に使われているんじゃないでしょうか」
「バランス調整とはどんな感じか、具体的に説明してもらえますか?」
「例えば、『数学のテスト15点だった』と打ち明けることで、あえて自分の評価を下げようとする、とか。それと、15点を打ち明けることで、『私は30点だったんだ』とか、周りがテストの点数を打ち明けやすくなる効果もあるな、と」
優劣のバランス調整。
自己開示というワードを知らなくても、自然とやっている人は多そう……。
自己開示が下手な人とは?
「自己開示が下手な人ってどんな感じなんでしょうか?」
「さっきの例で言えば、自分を下げ続けてしまうんじゃないかな? または、自己開示を全くしない、とか」
「自分の下げ合いって、大人になってもよくあります」
「独身vs子持ち、とか。お互いに大変さをアピールして自分を下げて、『私の方がしんどい』を競い合う、みたいなやつですね」
しんどいを競い合う。
逆マウント勝負のようなコミュニケーションは確かに存在します。
老年期だと持病自慢などがあると聞きますね。
印象を語り合う中で、『自己開示力』というワードが出てきました。
自己開示力が高いと評価される、では高い低いはどうやって決まるのでしょう?
自己開示力の高さとは?
自己開示力が高い人ってどんな人でしょうか?
「そのときの関係性に、適切な話題を選べるとか?」
「さっきの前提共有のときに、自己開示の深さレベルとかありましたよね。あれをきちんと選択できる、ってことかな」
「自己開示って、ステップアップみたいな要素があると思います。例えば、まず出身地、次に家族構成、次に詳しい経歴、すごい先にはつらい体験、みたいな。逆に、つらい体験から始めてしまうと、引かれてしまう。ステップアップの順序をきちんと踏まえられる人が、評価されると思います」
自己開示のステップアップを上手に進めるのがポイントでしょうか。
確かに初対面なら、出身地などのあたりさわりないところから始めるのが無難ですね。
インフルエンサーの自己開示は難しい?
「インフルエンサーは自己開示が上手いという話がありました。でも、SNSでの自己開示って難しくないですか?」
「難しい、についてもう少し具体的に教えていただけますか?」
「SNSって、不特定多数に向けて発信してるわけだから、相手との距離感が無数にあるわけで、その中で最適な話題を選ぶって難しいように思うんです。平均値?みたいなことになるんでしょうか?」
「おそらく、インフルエンサーは、ターゲット層をあらかじめ絞って自己開示をしていると思います」
「ターゲット層について、もう少し説明してもらってもいいですか?」
「インフルエンサーは、ただ人気を集めるのが目的ではなくて、フォロワーを増やして何かを宣伝するのが目的だと思うんです。だから、例えば美容系インフルエンサーだったら、20代30代女性を想定した自己開示をしているのでは?」
「将来の顧客をあらかじめ絞り込んでいて、そこを意識した自己開示の内容になる、ということですね」
インフルエンサーの目的を考えると、確かに納得します。
数人のグループでの自己開示、どうする?
「では、1対1ではなくて、数人のグループでの自己開示はどうしたらいいんでしょうか? どこに適切な自己開示の基準が置かれるんでしょうか?」
「うーん」
皆で少し考えます。
「あたりさわりのないところから始まる、のかな。出身地とか趣味とか。それを一通り話したら、次に兄弟は?とか、だんだんと深くなっていく」
「さっきのステップアップ、の話ですね」
「つまり、基準を探って、その基準に合わせた話題を狙い撃ちするのは現実的じゃないというか。あたりさわりのないところから始めて、徐々に基準を引き上げていくのがリアルなところだと思います」
狙い撃ちではなく、無難なところから始めてステップアップ。
振り返れば、初対面同士のグループではそういった流れが自然発生していたように思います。
「または、もう会わないかもってグループだったら、その場をしのぐためだけの話題だけで話を繋げることもあるかな」
「最初にどうでもいい話題から始めて、自己開示するかどうか、関係性を探ったりすることもあるかも」
相手を救うための自己開示?
「打算的という話がありましたが、相手を救うための自己開示もあると思います。このあいだ見た『リエゾン』というドラマで、拒食症に悩む友達が話しやすくなるよう、自分の体のアザを打ち明けるシーンが印象的でした」
「それは、打算的ではあるけど、良い打算ってことになるのでしょうか?」
「そうだと思います」
自己開示させる秘訣?
「相手に自己開示をさせる秘訣、みたいなものはあるのでしょうか?」
「どうだろう……」
「積極的に相手に求めるものではないと思うけれど、やはりこちらが自己開示をするのが唯一の秘訣みたいなもの?になるのかな」
自己開示は、いつでもするべき?
「前に、自分が質問を投げかけてしまうコミュニケーションをしてしまったことがあって。1時間、ずっと私が聞きたいことを聞いていたんです。それって良かったのかな、自己開示したほうがよかったのかな思って、気になりました」
そのときの詳しい状況を説明してもらい……。
「その場合は、インタビューや取材に近いコミュニケーションなので、自己開示する必要はないと思います。すべてのコミュニケーションで自己開示したほうがいい、ということではなくて、使うと便利なときに使うものだと思います」
コミュニケーションにはたくさんの種類があります。
あらゆるコミュニケーションで自己開示すべき、というわけではなさそうですね。
自己開示、得意? 苦手?
「自己開示が得意か苦手か、皆さんに聞いてみたいです」との意見をいただき、挙手をしてもらいました。
得意だと思う人……1名
苦手だと思う人……0名
得意と答えた1名以外は手が上がりません。
理由を聞いてみると、
「正直よくわからない」
「評価しづらい」
とのこと。
では、得意と答えた方の理由は?
「私はあまり自分のことを話すのに抵抗が無いというか、あまり恥ずかしいと思わないので、得意かな、と」
「私もそこまで抵抗はないんですが、『これを話すと相手にとって重いんじゃ?』と思って、話すのをやめてしまうことが結構あります」
SNSでの不満告白は自己開示?
「SNSで、夫婦関係とかの苦労や不満をたくさん投稿している人、あれも自己開示なんでしょうか?」
「自己開示って、自分の顔とか素性がある程度晒されている前提があると思うんです。匿名で、素性を伏せているのであれば、ただの愚痴か、共感のコメントを求めての投稿じゃないかな? 自己開示よりは自己顕示に近いような?」
「SNSではそういう人、よく見ます」
自己表現は自己開示?
「自己表現は、自己開示になるのでしょうか?」
「自己表現って、具体的にどんなことですか?」
「小説とか絵画とか音楽とか、創作活動です」
「例えば、太宰治の人間失格は自己開示か?ってことですね」
「創作は作家によって目的が違いそう」
「推測になってしまうけど、自己開示ってことはあまりなくて、自己顕示が多いのかな?」
「自分の描きたい世界を、世の中に広めるのは、とりあえず自己開示ではなさそうな気がします」
創作は自己開示か? 興味深い問いです。
健全な自己開示とは?
「これまでの話で、自己開示にも健全なものと不健全なものがあるように感じていて……」
「不健全というのは、邪な気持ちが含まれているか、みたいなことですか」
「そうです。自己開示を悪い方に使うというか」
「関係を深めて『この人から儲けること』を目的にした自己開示は不健全だと思います」
「何かしらの目標があったら不健全?」
「目標の有無ではなくて、目標の内容かな。自分の利益だけが目当てだと、不健全な感じが」
「少しずれるかもしれませんが、『ただ語りたいだけ』で話したことも、あまり健全な自己開示ではないかも」
「キャッチボールではなく、一方的にボールを投げ続けているようなら、内容が告白でも自己開示って感じはしない」
自己開示は、偽りの自分を演じること?
「自己開示に限った話ではないのですが、こういうコミュニケーションスキルを意識して使うときって、普段の自分ではなくて、どこか演じてる部分があると思うんです。本当の素の自分じゃなくなるというか。自己開示を使うことは、偽りの自分になるってことなんでしょうか?」
「語る事実の扱い方、のように思います。本人にとって事実なら、偽っていることにならないと思います」
「『私はコミュ障です』は、絶対の真実ではない。相対評価だから、人によって見え方が違う。『身長150cmなんです』も、聞く人によって意味が変わりますよね」
「人は多面的な存在。真実と偽りの2面だけじゃない。いろいろな側面が集まってできている。何が偽りかも相対的だと思う」
真実の自分か? 偽りの自分か? と、簡単に2つに割り振れるものではない、ということですね。
コミュニケーション術、使いたいですか?
「そもそも、こういうコミュニケーションテクニックみたいなもの、使いたいと思いますか?」
「恋愛テクニックとかも、ネットとかでたくさん見かけますよね。『こういうリアクションをすると男性が喜ぶ!』みたいな」
「そうです、そういうの、身につけたいですか?」
「私は、便利なものは使いたいなと思います。最初は演じてる言葉かもしれないけど、使っているうちに自分のものになれば、それは本当の自分の言葉になる」
「知ることができるなら、知っておきたい。自分が使うためではなく、相手がテクニックで自分を陥れようとしたときに、気付けるように」
「防衛としての使い方、ですね」
自分を守るためにも、知ることは大切、ですね!
開示できない、その理由とは?
「自己開示をしていく中で、どうしても言いたくないことってあると思うんです。内容は人それぞれ違うとは思うんですが……。言えない理由って、例えば何ですか?」
「それを伝えることで、相手に低く見られたくない、悪い評価をされたくない、とかかな……」
「私は、エピソードが重すぎて相手が困りそうだから、言いにくい」
「変な人って思われたくない」
自己開示が苦手、という人も近しい理由なのでしょうか?
対話で自己開示すべき?
「今、私たちは対話をしていますが、対話でも自己開示をしたほうがいいんでしょうか?」
「対話は、探究が目的なので、自己開示の必要はないと思います」
「でも、話の流れで何かを打ち明けることもあるので、自己開示してもいい」
「コミュニケーションって、ひとつの層から成っているのではなく、複数の層が重なっていると思います。対話は、対話だけではなく、普通の会話の層と、対話の層が重なっているコミュニケーションだと思うんです。対話の層で考えると自己開示の必要はない。普通の会話の層で考えたら自己開示してもいい、って感じです」
コミュニケーションは、いくつかの層が重なっている、という捉え方。
終盤に生まれた問い
残り時間の少なくなってきたので、とりあえずどんどん問いを上げていきました。
羅列していきます。
・自己開示は自分のため? 相手のため?
・打算的なコミュニケーションってどう思う?
・自己開示は、その場の規範を設定しているのでは?
・無意識な自己開示でも打算的なのか?
・自己開示は、悩む人には救いとなるか?
・自己開示が有用な場面はどんな場面か?
・自己開示できたほうがいいのか?
問いは尽きませんが、ここで時間いっぱいとなりました。
ファシリテーターの思うこと
自己開示というテーマを扱った今回の対話。
このケースは自己開示なのか?という問いや、
自己開示の取り扱い方についての問いが多く生まれました。
様々な角度から考えたことで、
前よりも上手く、
自己開示と付き合っていけそうな気がしています。
スキルは使い方次第。
手段ではなく目的が大切。
健全かどうかは自分が決める。
……これらは自己開示に限らず、
いろいろなスキルにも言えることかもしれません。
また、コミュニケーションそのものについても、
多くの気づきがありました。
人は多面的であり、真偽の二面だけでは語れないこと。
コミュニケーションは多層的であること。
対話を通して発見できました。
明日から、コミュニケーションの見え方が少し変わりそうです!
参加してくださった皆様、ありがとうございました!
次回の開催案内
次回は2023年4月8日(土)開催。
テーマは「やりたい仕事とは?」です。
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