チョコレートかミントか歯磨き粉か
チョコミントは人の食べるものではない、と言う人がいる。そうした方々のご意見としては、歯磨き粉の味がして食べる気がしない、と言うのを聞くことが多い気がする。他にも理由は色々あるだろうが、まず真っ先に聞くのがこの理由だと思う。
かく言う私はチョコミントが大好物だ。世の中にはチョコミン党と言う政治とは無関係の党派があり、私もそこに所属している党員の一人である。そして仮にチョコミン党を更に細かく派閥分けするとしたら、ミント過激派に分類されると思う。ミントそのものもかなり好きなのである。あのスースー感が私を虜にして止まない。これについては、政党を超え信仰とすら呼べるレベルで好きだ。歯磨き粉が食用だったら多分毎日食べてる。
さて、歯磨き粉といえば、台湾で一つ、有名な歯磨き粉がある。「黑人牙膏」と言う歯磨き粉だ。元は中国で創業した会社なので、生粋の台湾産というわけでもないのだろうが、まぁ台湾の歯磨き粉といえば……と言うとあれを思い浮かべる方も多いと思う。
私はといえば、元は別の歯磨き粉を使っていたが、最近偶然にも台湾で知り合った同じ高校の先輩が、初めて会った時に「お近づきの印に……」と言ってなぜか黑人牙膏を二本もくださったので、今はそれを使っている。チューブがデカすぎてなかなか使い終わらないので、この先1年ほどは同じ歯磨き粉を使うことになるのではないかと思っている。
さて、チョコミントの話から初めて、なんで歯磨き粉の話なんかしているのかと言うと、今回お話したいのがこの二つに関係することであるからだ。台湾のスーパーマーケットチェーン・全聯が、この黑人牙膏とコラボして、6月5日からチョコミント味のスイーツを販売し始めた。しかもパッケージのデザインはガッツリ黑人牙膏に寄せると言う徹底ぶりである。
多分チョコミント好きでない人がチョコミントに抱くイメージというのはどこの国でも大体同じなんではないかと思うのだが、敢えてそのど真ん中を突いたパッケージデザインを作成したというのは、称賛に値すると思う。なんというセンスに溢れた諧謔。くだらなさ(褒めてる)も行き着くところまで行けば、いっそ芸術の域に到達するということか。
今までチョコミントに興味のなかった人もこのパッケージに興味をひかれ、商品を購入、結果チョコミン党に入党という敬意を辿る人も一定数出てくるに違いない。そしてチョコミン党は台湾でもあっという間に一大勢力を形成し、阿中部長がピンクのマスクをつけてピンクブームを巻き起こしたが如く、台湾全体でチョコミントが一大ブームになる日もそう遠くはないはずだ(妄想です)。
すでにチョコミン党に所属している党員としては、もちろんこの潮流に乗り遅れるわけには行かない。というわけで私も発売当日に早速全聯へと走り、新発売の4種のチョコミントスイーツを買ってきたのであった。
We Sweet 清涼一夏
全聯で販売しているチョコミントスイーツは、全部で4種類。6月5日から18日まで、2週間の期間限定販売となっている。「黑人牙膏」と「全聯」という二つの単語で検索をかけると、結構な数のウェブニュースが検索結果として上がってくるが、「獵奇(猟奇的)」とか「超狂(クレイジー)」などのタイトルが付けられているものもあったりして、このコラボが台湾でも異色の試みであるということがよく伝わってくる。
せっかくなので、各商品のレビュー的なものを記載してみようと思う。以下を読むにあたっては、これがあくまで私個人の感想であり、食後の感想は個々人の好みによって異なることをご理解いただいた上でお読みいただければ幸いである。
薄荷巧克力可麗餅
黄色いクレープの薄皮にチョコレートケーキとミント風味の生クリームが包まれているにくいやつ。一口齧ると、甘さと共に口の中にほど良く調整されたミントの香りが広がる。
モチモチでプリプリしたクレープと、内部のチョコレートシフォンケーキの食感の対比もいい感じ。このチョコレートシフォンケーキが甘さ控えめで、クレープの皮の甘さとうまい具合にバランスが取れており、絶妙な味わいを醸し出している。甘い皮を被っているが、実はクールなチョコミントというのが意外性があって良かった。クレープで包んであるから仕方ないけど、見た目にチョコミント感が全然ないのだけちょっと残念。
チョコ度 ★★
ミント度 ★★☆
歯磨き粉度 ☆
チョコミント度 ★★★
視覚的チョコミント度 ☆
後を引く清涼感 ☆
全体的なバランス ★★★★☆
薄荷巧克蛋糕捲
いわゆるチョコレートよりスポンジが黒っぽいのは、竹炭チョコレートが使われているため。そうした甘さ控えめのスポンジに、甘くてスースーするクリームがぎっしり詰まっている。一回で口に入るクリームの量が多いが、ミント感は大体「薄荷巧克力可麗餅」と同じくらい。視覚的チョコミント度はこちらも低めだが、味的にはしっかりチョコミントケーキなので満足。
そういえば、食べていると時々歯にザリっとした感触が残って、それがまるでチューブから出したばかりの歯磨き粉を口に入れたような感じだった。多分クリームに奶油霜(バタークリーム)が使われているからなんだろうけど、狙って作っているのだとしたら本当にすごいと思う。ただ、私も朝歯を磨いてから朝食がわりにこのロールケーキを食べたので、単に本物の歯磨き粉の食感だったかもしれない。
チョコ度 ★★★
ミント度 ★★☆
歯磨き粉度 ★★☆
チョコミント度 ★★★☆
視覚的チョコミント度 ☆
後を引く清涼感 ☆
全体的なバランス ★★★★☆
薄荷巧克黑爵士
クリームが少なめなので、ミント感はやや弱め。スポンジにはロールケーキと同じく竹炭チョコレートが使われており、甘さもかなり控えめである。そんな甘くないスポンジケーキに清涼感のあるチョコミントのクリームがちょっとだけ挟まれているということで、味の比率としては、甘み1.5:ミント1.5:苦味7と言った具合。結論としては、歯磨き粉の味に非常に近かった。台湾のデザートやお菓子は総じて日本のものより砂糖控えめの味に作られていることが多いが、それにしてもこんな甘くないケーキを食べたのは初めてだと思う。
ちなみに私が買いに行った時は、こちらの「薄荷巧克黑爵士」と下でご紹介する「薄荷巧克力蛋糕」はそれぞれ最後の一本しか残っていなかったのだが、次回行ったら「薄荷巧克黑爵士」の方は多分だいぶ売れ残っているような気がする。
チョコ度 ★
ミント度 ★
竹炭度 ★★★★
歯磨き粉度 ★★★★☆
チョコミント度 ★
視覚的チョコミント度 ★☆
後を引く清涼感 ☆
全体的なバランス ★
薄荷巧克力蛋糕
見た目、味ともに文句なしのチョコミントケーキだったのが、この「薄荷巧克力蛋糕」。こちらのケーキは二層にから成り立っており、上のミント色の部分はミント風味のレアチーズムースにチョコミントシロップを塗ったもの、下の部分はカカオ72%のチョコレートを使用したチョコレートスポンジケーキとなっている。口に含むとひんやりしたムースとコクのあるチョコレートスポンジが絶妙にマリアージュしているのがよく分かる。平たく言うと超美味しいチョコミントケーキ。
食べた後に喉の奥にスッとミントの清涼感がするのも、ミント至上主義者には大変嬉しい。全聯のウェイブサイトに「喜愛薄荷巧克力的朋友千萬別錯過!(チョコミント好きは絶対見逃さないように!)」と自信ありげに書かれていたのも頷ける。凍らせてアイス風にしても美味しくいただけるのではないかと思うので、もう一本買ってきて実験してみようと思う。絶対別の美味しさがあるはず。
チョコ度 ★★★★
ミント度 ★★★★
歯磨き粉度 ☆
チョコミント度 ★★★★★
視覚的チョコミント度 ★★★★★
後を引く清涼感 ★★★
全体的なバランス ★★★★★
本当は昨年日本でチョコミント製品を片っ端から買い漁った時にこう言った形でデータベースを作成したかったのだが、途中まで作って結局挫折してしまった。台湾のチョコミント製品はあまり多くないが、また何かチョコミント製品を見かけたら、今度はきちんとデータベースを作ってみようと思う。
(2020.6.6)