子供の言語発達過程の特徴(バイリンガル育成の適齢期)
バイリンガル育成の適齢期
バイリンガルで重要なのは母語と母文化をしっかりと育てる事。母語は次に覚える言葉の基礎となるためだからである。逆にいうと母語がしっかりと育たない状況では、バイリンガルの力を育てることは難しい。
幼児から中学の初めぐらいまでが、「バイリンガル育成の適齢期」。以下に年齢ごとの特徴を挙げる。
0〜2歳「ゆりかご時代」
親が愛情を持って赤ちゃんに話しかける事が何よりも大事。日本では「英語教育は幼児から」という声かけとともに、生まれたときから英語で話しかける熱心なお母さんもいるようだが、母語である日本語を習得する大事な機会を奪うことになるので、要注意である。
2〜4歳「子供部屋時代」
この時代は「話し合い」、つまり双方向のインターアクションが大事である。親が家庭の中で子供にどのように対応し、どのように積極的にことばを使い、「話し合い」をしているかということが、学校に入ってからの学校の成績と非常に関係がある。量よりも質が大事である。
4〜6歳「遊び友達時代」
文字に対する興味も出てくるので、本の読み聞かせを毎日の日課にしていると、自分で本を読みたがるようになる。読み聞かせは、モノリンガルの母語の発達の上でも非常に大切であるが、バイリンガルを育てる上では欠かせないものである。毎日15分でも30分でもまず母語で、もし余裕があれば、次に外国語で、本の読み聞かせをしていれば、そのおつりは将来何倍にもなって返ってくる。
6〜9歳「学校友達時代前半」
だんだん親よりも友達や遊び仲間の方が大事になるが、まだ親子の話し合い、交流が大切。この時代に海外に出た場合は、この時期に日本語でのコミュニケーションを通して親との絆をしっかりつくっておかないと、現地のことばの習得が進むにつれて、日本語が消えてしまう危険性がある。
9〜15歳「学校友達時代後半」
ことばのコントロールや分析力が急速に伸びる。この時期は「具体的事象に基づいてのみならず、仮説や命題を立てて、論証を組み立てる事ができるようになる」と言われ、文化の差に対する理解や比較などもできるようになる。
本の読み聞かせの重要性
本の読み聞かせは貴重なチャンスを与えてくれる。
①日常生活を通して子供が触れることのできない読みことばをふんだんに与えてくれる
②語彙だけでなく、文法や文章でも、より複雑で高度なものに触れる事ができる
初めは親の独擅場であるが、だんだんに子供も参加して部分読みをするようになり、ゆくゆくは子供が全部読んで親が聞き役になる。
子供とバイリンガル教育の問題点
子供の母語がその国で劣勢な場合、子供は覚えた母語を捨ててしまう。子供はことばを覚えるのも早いが、忘れるのも早い。早期から漢字や外国語などの訓練を試みた場合には、子供がそれを習得したからといって安心せずに、長期にわたって常に刺激を絶やさぬように続けていく事が肝要である。2言語、2文化を習得したとしても7、8歳くらいまでの子供には、その維持は極めて難しい。9歳以降だと2言語、2文化が保持されやすい。
ここで改めて母語の重要な役割を確認すると、
①親子のコミュニケーションの道具、親子の絆となることば
②ことばで感情や意思を伝えること、ことばを使って考えることを学ぶ
③行動のルール、価値判断を学んで親の文化の担い手になる
④言語経験がもっとも豊かであるため文字習得に最適な言語
これら重要な役目のある母語は使わないと後退・喪失し、子供に深い傷・喪失感を残すことになる。
参考文献
中島和子『完全改訂版 バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること』アルク 第1章〜第2章より
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