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台湾の資産運用①定期預金事情について。利率はどのくらいなのか?

前回まで、3回に分けて台湾の出産・育児にまつわるお金のことについて解説してきました。

台湾でも日本と同様に出産育児一時金、育児休業給付金、児童手当の制度があります。そして、特に学齢前の子どもに限って言えば、日本よりも充実した給付が受けられる、ということを見てきました。

さて、受給した各種手当の使途は自由ですが、家計に余裕のある人であれば、将来の教育費に備えて貯蓄をしておこうという人もいるかもしれません。

そこで、今回の記事では台湾の定期預金事情について解説していこうと思います。

※なお、日本人が台湾に銀行口座を開設する場合、通常は居留証が必要です。また、定期預金の設定可能期間は居留証の有効期限に縛られます。

各銀行の定期預金利率

定期預金の利率はもちろん銀行によって違うのですが、最も代表的なのは、郵便局の定期預金利率です。

郵便局の定期預金利率は、さまざまな社会制度の運用においても参照されており、指標性の高い利率になっています。(※例えば確定拠出型の公的退職金制度である「勞工退休金」の最低保証運用利率設定や、国民年金保険料納付延滞時の課徴金の計算などにも、郵便貯金の定期預金利率が使われています。)

そんな郵便局の定期預金利率ですが、2022年6月現在、1年定期で1.07%となっています。日本の場合、メガバンクの定期預金利率が0.002%ほどですので、それと比べると随分高い水準です。

実は郵便局の預金利率は今年の3月までは0.78%でした。そんな中、台湾の中央銀行が利上げを打ち出したことに伴って、一気に0.3%程度も上昇して現在の利率になりました。

それでは、郵便局以外の利率はどうなっているのでしょうか。

台湾には「五大銀行」と呼ばれる大手銀行があります。これらの銀行の定期預金利率についても確認してみましたが、どの銀行も郵便局の定期預金とほぼ横並びとなっていて、1年定期で1%を少し上回る程度の利率設定になっているようです。

さて、最近の動きとしては、2020年以降、楽天国際銀行・LINE銀行などのネット銀行が次々と開業していることです。ネット銀行は実店舗を持たない分、人件費が削減されており、預金利率は従来の銀行より高めに設定されています。

楽天国際銀行は1年定期の利率が1.1%、LINE銀行もキャンペーン利率として、1年定期1.35%・2年定期1.45%などの高利率を提供しています。

ネット銀行の金利も、中央銀行の利上げに伴って引き上げられています。楽天国際銀行の1年定期の利率は今年の3月までと比べて+0.1%、LINE銀行では+0.25%となっています(それまでは楽天国際銀行は1年定期1%、LINE銀行は1年定期1.1%でした)。

預金者にとってみると、随分お得な利率設定であると感じます。

台湾の定期預金の利息計算と、利息にかかる税金

台湾の定期預金の特徴ですが、利息の計算において1ヶ月複利を適用している例が多く見受けられます。つまり、毎月利息分が本金に算入されていくので、単利計算の場合と比べて利息が多く付きます。

例えば仮に 25万TWD を1年定期、年利 1%(1ヶ月複利)で預金を組んだ場合、1年後までに得られる利息の合計額は2,511TWDとなり、1年単利計算の場合の利息額 (25万TWD × 1% = 2,500TWD) を上回ります。

また、台湾では利息にかかる税金が日本より少なくなっています。

台湾では定期預金の場合、利息額が20,010TWDを超えると10%の税金が発生します。しかし、そもそも利息額が20,010TWDを超えるほどの定期預金を組むことは少ないでしょうから、ほとんどの人は課税対象外となります。

仮にお金持ちの人で、利息額が本当に20,010TWDを超えそうになった場合でも、複数口に分けることで課税を回避することも可能となっています。

どういうことかというと、課税が1口座単位となっているため、個々の定期預金口座につく利息額が20,010TWDを下回るように、口座の金額を分ければよいのです。

銀行が倒産した場合などに備える預金者保護制度についても整備されています。台湾では、預金300万TWDとその利息分までが(外貨預金も含めて!)保護されています。

以上を踏まえると、台湾の定期預金は、文字通りほぼ「ノーリスクで」「1%強のリターンを」「非課税で」得られることになります。

一方、翻って日本の定期預金利率は、ほとんどの場合0.1%にも届きません。また、利息収入のうち20.315%は源泉分離課税で強制的に国庫におさめられてしまいます。預金者保護の上限も1,000万円となっており、台湾を下回ります。

そんな日本と比較すると台湾の定期預金は夢のようですが、忘れてはならないのは台湾では日本と違って物価が上昇していることです。

台湾における2021年の消費者物価指数上昇率は2.62%でした。台湾では預金利率が日本より高い一方、物価上昇率が定期預金の利率を上回ります。

このため、台湾では定期預金にお金を入れると、その実質的な価値は確実に目減りしてしまうというのも、また事実です。

お金の実質的な価値まで増やそうと思うと、定期預金とは別の手段が必要となってきますが、それについてはまた次回以降、記事を書いてみようと思います。

今回の記事の参考資料

(1)郵便局の預金利率引上げのニュース

(2)郵便局における利率計算方法(1年以上の定期預金で、1ヶ月複利)

(3)五大銀行の平均定期預金利率

(4)台湾における預金者保護制度(外貨預金含め300万TWDまで)


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