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台湾の出産育児一時金について解説します

出産の際には、入院にともなって多額の費用がかかります。また、出産前後の健診費用をはじめ、そのほかにも様々な経済的負担があります。

こうした負担の軽減を図るため、日本では出産後に「出産育児一時金」と呼ばれる一時金が支給されます。支給額は一律42万円(産科医療補償制度対象外の場合は40.8万円)で、所属する健康保険組合から支給されます。

さて、それでは台湾では、このような出産に伴う一時金が用意されているのでしょうか。

以下に詳しく解説していきます。

国民年金、労工保険から支給される一時金

台湾の場合、出産に伴ってもらえる一時金の支給元は日本と異なります。

日本の場合は健康保険組合などからの支給ですが、台湾の場合は国民年金や労工保険(=おおむね日本の厚生年金、労災保険等を包摂する制度)などから「生育給付」という名前で支給されます。

例えば自営業者などで国民年金に加入している人が出産した場合、生育給付の受給額は一律で 18,282 × 2 =36,564 TWD となります。

「18,282ってどういう数字なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、参考までに少し解説すると、これは国民年金保険料の計算に利用される基礎額のような位置づけの数字です。出産の際には、この基礎額の2ヶ月分が支給される、というイメージになります。

次に、会社員として働いている人が出産した場合ですが、労工保険から月投保月額(おおむね日本の標準報酬月額に相当)の2ヶ月分が支給されます。

台湾では最低賃金は月25,200TWDとなっていますので、2ヶ月分となると、おおむね最低でも5万TWD以上は支給されることになります。

月投保月額は収入に応じて上昇しますので、収入が多いほど受給額が多くなります。ただし、計算に使われる月投保月額には上限(=45,800TWD)が設けられています。このため、労工保険の生育給付の受給上限額は 45,800 × 2 で 91,600 TWD で頭打ちとなります。

各自治体から支給される一時金

台湾では、年金制度の枠組みで支給される一時金のほかに、各地方自治体によって発給される出産奨励金のような一時金があります。

こうした一時金は「生育獎勵金」、「生育津貼」といった名前で呼ばれています。

支給額や支給元は戸籍地に応じて異なります。

【直轄市の場合】
台湾には6つの直轄市(台北市、新北市、桃園市、台中市、高雄市、台南市)があり、これらの自治体ではそれぞれの市から支給されます。

例えば台北市では出産1人につき2万TWD、桃園市では3万TWDといった金額になっています。

【直轄市以外の場合】
台湾の直轄市を除いた地域では、行政単位が「県」の下に「市」「鎮」「郷」という行政単位に分かれていて、奨励金もそれぞれの単位において支給されます。

注意が必要なのは、この「県」と「市」「鎮」「郷」の奨励金は重複して受給できることです。

例えば「宜蘭県頭城郷」に戸籍がある場合、「宜蘭県」からの奨励金(=11,000TWD)も、「頭城郷」からの奨励金(=1人目10,000TWD、2人目20,000TWD...)も受け取ることができます。

同様に、「宜蘭県宜蘭市」に戸籍がある場合は、「宜蘭県」からの奨励金(=11,000TWD)も、「宜蘭市」からの奨励金(=10,000TWD)も受け取ることができます。

まとめ

日本では妊娠から出産までの過程で多額の費用がかかります。出産育児一時金は42万円もらえるとはいえ、トータルで見た時に赤字になるケースがほとんどです。

一方、台湾の出産費用・妊婦検診費用は、健康保険が適用され公的支援も手厚いため、日本よりかなり低額におさまるケースが多いです。一時金も年金からの生育給付のほかに、自治体による生育津貼が加わりますので、トータルで黒字になるケースもかなり多そうです。

もちろん、育児は出産した時が終わりではなく、始まりにすぎません。

子育て支援をトータルで見た時、日本の方が充実している部分が多くあるのもまた事実です。

そのような日台比較の記事は、今後また出していければと思っています。

 【参考資料】

(1)国民年金加入者の生育給付受給資格、給付額

(2)労工保険の生育給付の給付額

(3)各自治体の出産奨励金(生育津貼)一覧
※地図上に直轄市・県単位での奨励金の金額が一覧で掲載されています。ただし、「県」の下の単位である「市」「鎮」「郷」から発給される奨励金について、情報が載っていない点は注意が必要です。



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