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台湾の資産運用②貯蓄型保険商品について

台湾で貯蓄ができた場合、どのようにして運用すると最も大きなリターンを期待できるのしょうか。前回は定期預金事情について紹介しましたので、続いて2回目の今回は貯蓄型保険商品について紹介してみようと思います。

台湾の保険会社との出会い

私は以前、インバウンド関連の仕事をしていました。
その際によく聞いたのが、巨大な規模で挙行されるインセンティブ旅行(褒賞旅行)の情報でした。

インセンティブ旅行というのは、営業職のモチベーションを上げるため、成績優良社員を褒賞として旅行に連れていくことです。業界によっては盛んに行われており、特に生命保険、自動車、製薬、ネットワークビジネスなどの業界に多い印象です。

私が働いていた当時、台湾発のインセンティブ旅行で圧倒的な存在感を持っていたのは生命保険業界でした。大手生命保険会社が数千人規模のインセンティブ旅行を挙行していて、日本にやって来ることもありました。

旅程の中では、札幌ドームの野球観戦が取り入れられていることもありました。当時は台湾出身の陽岱鋼が、北海道を本拠地とする日本ハムに所属していました。「台湾の選手を応援しよう」ということで、球場の一角が台湾の団体に埋め尽くされたので、インパクトがありました。

「それにしても数千人規模で日本への褒賞旅行を催行するなんて、台湾の生命保険会社はずいぶん儲かっているんだなぁ」

と思ったのをよく覚えています。

台湾の貯蓄型保険商品「儲蓄險」

さて、それでは台湾の生命保険市場は実際にどの程度大きいのでしょうか。

ある国・地域における保険の浸透度をはかる指標として、「保険浸透率」が挙げられます。これはGDPに占める保険料収入の割合を表したものです。保険料収入のうち、生命保険はその大きな部分を占めていますので、保険浸透率が高いということは、多くの場合、即ち生命保険の浸透率が高いということでもあります。

さて、台湾の保険浸透率ですが、2008年~2020年の13年間にわたって世界1位となっていました。

ちなみに、我が国・日本も世界屈指の保険大国です。日本国内における生命保険の世帯加入率は9割。一世帯あたりの平均支払金額は年間約40万円で、市場規模にすると40兆円に及ぶと言われています。

そんな日本も、保険浸透率で比べると台湾には遥かに及びません。

台湾が人口の割に、とても大きな生命保険の市場規模を持っていることがわかります。

さて、台湾で生命保険市場が大きな理由ですが、それは「死亡保障のついた貯蓄」として、貯蓄型保険商品が広く利用されているからです。台湾では、これを「儲蓄險」と呼びます。

前回の記事で、台湾の定期預金事情について紹介しましたが、定期預金以外のお金の置き場として、この「儲蓄險」は台湾で大きな存在感を持っています。

「儲蓄險」は、契約後はじめの数年間で解約すると元本割れしてしまいますが、数年たった後は順調に解約返戻金が増えていき、銀行の定期預金と比べると高いリターンを得ることができます。保険会社各社が、高い返戻率を売りにした商品を打ち出していった結果、市場規模がどんどん拡大していき、いつの間にか世界的に見ても特異な保険市場が出来上がった、というのが台湾の状況です。

KPMGのレポートによると、台湾では1人あたり平均して2.5個の保険契約を持っているそうです。個人的な印象ですが、「儲蓄險」に限らず、台湾では消費者の間で「保険=儲けるもの」という考えがかなり強いように感じています。

保険市場の改革の流れ

「儲蓄險」は、文字通り「貯蓄」を主眼においた商品です。しかし、本来の保険の目的である保障はそこそこに、お金を増やすことを主眼においた商品が市場を跋扈することは、保険市場の発展形態としては必ずしも健全とはいえません。

保険会社では高返戻率を実現するために海外投資割合を増やし、現在では7割にのぼっていますが、高リターンを狙った投資は高リスクでもあります。いつかしっぺ返しを食らうと経営が傾くこともあるわけです。

こうした事情もあってか、政府は2020年に、生命保険商品の最低死亡保障金額の引き上げ、過度に高返戻率をうたった保険商品の販売禁止、などの規制を打ち出しています。要は本来の「もしもの時の保障」という目的に沿った保険商品を売っていこうよ、ということだと思います。

規制の影響が出てくるのはこれからですが、資産運用を主目的にした貯蓄型保険商品は、今後徐々に減少していくかもしれません。

私達は契約しませんでした

さて、私達夫婦も一度義母に「儲蓄險」を勧められたことがあります。ただ、最近の多くの若者にありがちな考え方として(?)保険は保険、資産運用は資産運用と分けたい意向が強く、結局「儲蓄險」の契約は行いませんでした。

もちろん、「定期預金よりも高いリターンが欲しいが、投資商品を買うのは難しそう」という人にとって、台湾生命保険会社の「儲蓄險」が今でも一つの有力な選択肢であることは間違いないでしょう。

<参考資料>

①工商時報の記事
台湾の保険浸透度を簡単に記事で紹介しています。

②台湾の保険市場改革の流れを説明する記事
台湾における保険規制の導入が、国際的なトレンドを軌を一にしていることが説明されています。

③KPMGの台湾保険業に関するレポート

https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/tw/pdf/2020/08/tw-kpmg-taiwan-insurance-report.pdf

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