台湾では日本と比べて女性の社会進出が進んでいるのでしょうか
台湾で生活していると、日本と比べて女性の社会における存在感が強いと感じることが多いです。今回の記事では、具体的な数字を交えながら、そのイメージを裏付けてみようと思います。
指導的地位にある女性の割合
台湾の労働部では「Women's Share in Legislators, Senior Officials and Managers」と題して、主要国の指導的地位にある女性の割合を表にまとめています。
このデータによると、日本の指導的地位にある女性の割合は15%を下回っています。
一時期、日本では「指導的地位の女性割合を30%程度にする」という目標をよく耳にしました。政府が2020年をめどにして目標を掲げたものですが、結局達成にはほど遠く、いつの間にかフェイドアウトしてしまった印象です。
一方、台湾ではこの割合が年々増加して、ちょうど2020年に3割を超えています。他の先進国と比べると、3割は決して高い数字ではないのですが、台湾では一貫して増加トレンドにあるのが特徴的です。
日本政府が立てた目標に日本自身は全くたどり着かなかったのに対し、台湾は着々と数字を積み重ねて軽々と達成してしまったことになります。
女性政治家の割合
それでは続けて、具体的に見ていきましょう。
女性が社会で指導的地位にあるかどうかを測るうえで、女性政治家の割合は象徴的な意味を持っています。台湾の政界における女性の割合はどの程度なのでしょうか。
皆さんもよくご存知かと思いますが、2016年から総統を務めている蔡英文は女性です。そして、台湾の国会にあたる立法院では、女性の政治家の割合が4割を超えています。また、台湾では立法院の議員に若い女性の割合が多い、という特徴があるように感じます。「自分達の住む社会をもっと良くしたい」という思いを、年齢に関わらず行動に移す女性が多いことの表れかもしれません。
一方の日本ですが、これまでに女性首相が誕生したことはありません。そして立法府においては衆議院議員に占める女性の割合が約1割で、参議院議員でも2割程度にとどまります。女性活躍のかけ声はいつも尻すぼみになってしまう印象で、昨年の衆議院議員選挙の後、女性議員の割合は増えるどころか減少してしまいました。
女性比率の低さの根源はどこにあるのか?
それでは、指導的地位にある男女の比率の差は、就職後や社会人になった後になってはじめて決定されるのでしょうか。
そうとも限らないというのが私の見方です。
例えば、良いか悪いかの価値判断は置いておいても、学歴はその後の社会的地位に一定程度の影響を与える一つの要素です。大学の時点で男女比に歪みがある場合、その後の社会で指導的地位に立つ男女の割合の歪みにもつながってしまうかもしれません。
そこで、次に、「最高学府」と呼ばれる東京大学(=東大)と国立台湾大学(=台大)の男女比を比較してみます。以下にリンクを貼ったウェブサイトでは、台湾各地の大学の男女比率を学科ごとに調べることができます。こちらのデータによると、台大では女子学生の割合が全体の43.7%となっています。特に人文科学系、社会科学系の多くの学科では女性の数が男性を上回っています。
「東大は特殊な例ではないか」という反論も聞こえてきそうですが、京都大学でも女性比率は25%を切っていますし、その他の大学でも大きな差があるのが現状です。例えば文系学部が強いイメージのある台湾の国立政治大学の女性比率は約60%ほどですが、一方の早稲田大学の女性比率は約38%ほどにとどまります。
このように見ていくと、日本で指導的地位にある女性の割合の低さというのは、もしかすると就職以前の大学、あるいはそれ以前から形成されている根深い問題なのかもしれません。
まとめ
これまで政界における男女比、大学における男女比を例に、日本と台湾の女性の地位について比較してきました。
日本と台湾でここまで差が開いている原因はどこにあるのでしょうか。そして、どのようにしてこの差を埋めていけば良いのでしょうか。結論はすぐには出ないかもしれませんが、そんな議論が日本で活発化しても良いのではないかな、と思うこの頃です。