2024CPBLドラフト指名選手リスト 富邦+台鋼
富邦(指名8名)
①張育成(ジャン・ユーチェン) レイズ 185cm 81kg 29歳 右右 SS/2B/3B/1B
〇パワー 内野全ポジション △緩急
主要国際大会経歴(高校以降) 11年:IBAFワールドカップ 23年:WBC
チームの攻守の穴を埋めるにふさわしい元メジャーリーガー。高校卒業後渡米し19~23年までMLB通算235試合 打率.204 20HR OPS.624。昨年はWBCで台湾代表の4番・1Bとして2HR 8打点の活躍を見せプールAのMVP、ベストナインを獲得。シーズンでも39試合で6HR。今季はレイズとマイナー契約、オープン戦で腹斜筋の肉離れを起こし出遅れるも、3Aで14試合 打率.293 2HR 7打点 OPS.944。打棒は示していたが、6月18日にCPBLドラフト参加を表明。長打力不足、SSの絶対的なレギュラーが固まっていない富邦には格好の補強となった。MLBでは内野のユーティリティーとしての起用も、CPBLでは強打のSSとしてリーグを支配する活躍が期待される。緩急に弱い打撃も変化球の質が落ちるCPBLでは問題にならないだろう。
②張奕(ジャン・イー) 埼玉西武 182cm 86kg 30歳 右右 RHP
〇経験 △故障歴
主要国際大会経歴(高校以降) 19年:プレミア12
起用法が注目される右腕。16年育成ドラフト1位で入団、18年に投手転向、19年に支配下登録され同年のプレミア12で好投。昨年はFAでオリックスに移籍した森友哉の人的補償で西武入りも、右肩炎症によりWBCへの出場を辞退。シーズンでも一軍5試合に登板に終わり戦力外に。その後はアジアウインターリーグに台鋼の一員として参加。今年は開幕から台鋼で自行培訓選手(練習生に相当)としてプレーも、11試合(6先発) 2勝1敗 44.1IP ERA4.47と今一つ。右肩炎症の影響により球速は低下しており、先発としてはストレートが140~145km前後。球種はリリーフではフォーク中心だったが、先発起用で再びスライダーやカーブを増やしている。先発で支配的な投球を期待するのは難しいが、リリーフは登板過多による故障の懸念が残り難しいところ。富邦はまずリリーフで起用する予定だが、先発起用の可能性も示唆している。
③陳鐿中(チェン・イージョン) 南華大学 182cm 86kg 22歳 右左 RHP
〇ストレート 投球フォーム △球速差
主要国際大会経歴(高校以降) なし
予想外の上位指名を勝ち取った右腕。両親はバレーボール選手で小さい頃からバレーボールをプレーも、母のアドバイスもあり中学から野球に転向。普門中学から系列校の南華大学に進学し、大学野球リーグでチームの2年連続準優勝に貢献した。目標としているウォーカー・ビューラー(ドジャース)を参考にしたオーバースローから投じる角度のあるストレートは先発時は平均140km前後、リリーフでは145km前後をマークし球速以上のノビを感じさせる。変化球は大きく縦に落ちるスライダー、シンカー、カーブ、チェンジアップが持ち球。1年時はコントロールが安定せず出場機会が少なかったが、直近2年の大学野球リーグ預賽では35IP/29K/10BBと改善。現在の投球スタイルでは球速差をつけにくく、攻めが単調になる点は気をつけたい。先発とリリーフの両方をこなすが、変化球のレベルを高めプロでは先発で大きく育てたい。
④陳品宏(チェン・ピンホン) 台北市立大学 181cm 77kg 19歳 左右 LHP
〇クロスファイヤー スライダー △コントロール リリーフ向き
主要国際大会経歴(高校以降) なし
小気味良く内角を突ける左腕。高校では1年からエースとなり、将来を期待されるも2年以降は伸びず、3年では故障によるスランプに陥り球速が伸び悩んだ。高卒時にドラフト参加も指名は無く、大学進学。大学ではレベルアップを見せ、今年のU23トレーニングチーム入り。大学野球リーグでは預賽、複賽、決賽で合計48.1IP/47Kと高い奪三振能力が光った。ストレートは130km台後半と速くないが、特に右打者の内角を突くクロスファイヤーを上手く活用した投球術が光る。主な変化球は横に大きく曲がる120km台後半のスライダーで、左打者に効果を発揮する。課題はコントロールで、いきなりボールが暴れだす場面が見られる。また球威も不足しており、打者に粘られることも多い。プロでは球威と球種の少なさから先発としては厳しいとみられ、将来像は左のリリーフか。
⑤盧柏華(ル・ボーホァ) 国立台湾体育運動大学 176cm 83kg 21歳 右右 C
〇パワー フレーミング △コンタクト ブロッキング
主要国際大会経歴(高校以降) なし
パンチ力ある打撃が魅力のチームの正捕手。高校時代からフレーミングに定評。2年で初出場となった今年の大学野球リーグで預賽、複賽でそれぞれ1本HRを放ち、その後の春季リーグでは打率.484、長打率.677とアピール。唯一の大学生捕手として、U-23トレーニングチーム入りを果たした。打撃は粗さは残るものの、浅いカウントではフルスイングで長打を狙う姿勢を見せる。守備では前述のフレーミングに長け、捕手としての基本がしっかりとできているが、ブロッキングを改善したい。富邦としては22年11巡目の豊暐以来の捕手指名となったが、攻守のバランスに長けた捕手としてここからの突き上げに期待したい。
⑥楊閔貽(ヤン・ミンイ) 国立台湾体育運動大学 175cm 74kg 22歳 右右 2B/SS
〇守備範囲 △パワー
主要国際大会経歴(高校以降) なし
ダイナミックな守備が光る内野手。大学では2年時からキャプテンを任され、近年のチームの躍進に貢献。中学まではSSも、17年のU-15アジア選手権で馬傑森(樂天桃猿)、高校で同期に鄭宗哲(パイレーツ)、大学では永田颯太郎(東北楽天)がいたため2B中心に。しかし4年になり再びSSで出場する機会が増えた。俊敏な動きを見せる守備が特長で、逆シングルも軽々と捌く。打撃は大学野球リーグでは通算OPSが預賽.610、複賽.539と課題も、今年は春季リーグで打率.400、10安打中4本が二塁打とアピール。富邦は同年代の2B、SSが多いだけに打力の向上が必須となるだろう。
⑦黃英奇(ホァン・インチ) 平鎮高中 176cm 75kg 19歳 右右 RHP
〇運動能力 ストレート △体格 リリーフ向き
主要国際大会経歴(高校以降) なし
強豪校で磨かれた右腕。平鎮では3年間登板機会が少なく、大学進学も考えたが、今年の王貞治杯で9.0IP/14Kと好投しドラフト参加を決めた。強豪校で有望な選手が多いため話題に挙がることは少ないものの、スムーズな投球フォームから最速146km、平均約142kmのノビのあるストレート、スライダー、フォークを組み合わせ、プロでもリリーフとして戦力になる可能性を秘めている。上背はないものの力強いストレートを軸に奪三振を量産するという点で、チームの先輩である曾峻岳を目指したい。
⑧潘瑋祥(パン・ウェイシャン) 新北市 188cm 70kg 22歳 右左 OF
〇パワー △コンタクト
主要国際大会経歴(高校以降) なし
3年越しにプロ入りの夢を叶えた外野手。高校卒業後の21年にもドラフトに参加したが指名は無し。当時ドラフトに参加した高校生外野手の中で最もパワーがあるとの声もあった。卒業後は社会人の新北市でプレー。昨年のアジアウインターリーグではU23アマ選抜に入り17試合 打率.222 0HR 3打点 OPS.600で、OFの他に1Bも守っていた。細身の体格は今も変わっておらず、打撃に粗さは残るものの爆発力あるスイングが持ち味。守備はコーナーOFだけに、富邦の外野陣において長打力でどこまでアピールできるか。
台鋼(指名6名)
①吳念庭(ウ・ニェンティン) 全越運動 175cm 80kg 31歳 右左 3B/2B/1B
〇アプローチ 経験 △春季キャンプなし 年齢
主要国際大会経歴(高校以降) 17年:アジアプロ野球チャンピオンシップ 23年:WBC、アジア大会
台湾では中軸に入り活躍を見せたい、得点圏の鬼。西武では16~23年までプレーし通算382試合 打率.224 16HR 108打点 OPS.626。昨年オフに台湾でのプレーを目指し退団、今年3月からは台湾の社会人チームである全越運動に入団。3Bとして預賽で.459/.533/.595と打棒を発揮。張育成のドラフト参加により全体ドラ1とはならずも、全体2位指名で台鋼入り。前期最終戦から早速公式戦に出場している。NPBでの経験、アプローチの良さを活かした打撃は野手陣の層が薄い台鋼にとっては大きな存在。懸念は海外リーグからCPBLでのプレーを決めた選手は春季キャンプに参加していないことが影響してか、1年目のパフォーマンスが優れないケースがあること。台鋼では3B、2Bを中心として打順は5、6番あたりに入りそうか。
②黃子豪(ホァン・ズーハオ) 中国文化大学 186cm 75kg 20歳 右右 RHP
〇奪三振 投球フォーム △スタミナ コントロール
主要国際大会経歴(高校以降) なし
大学でレベルアップし上位指名を勝ち取った右腕。三民高中では同じ高身長右腕の周彥農(統一)と並び「ツインタワー」と呼ばれチームを牽引。昨年はドラフト参加せず中国文化大学へ進学。大学ではストレートの球速をアップさせ、奪三振能力が向上。大学野球リーグでは預賽と複賽で36.2IPを投げ46K。スムーズなオーバースローから投げ下ろすボールは角度があり、先発では145km前後のストレートをコーナーに投げられ、130km前後のスライダー、空振りを奪える125km前後のチェンジアップ、今年から投げ始めた120km前後のカーブをカウント球として投じる。課題はスタミナでイニング後半になると球速が落ちる傾向あり。また無駄なボール球や失投が多いのも要改善。細身の身体をより強化し、メンタル面が鍛えられれば一軍での先発ローテ定着が狙えるだろう。
③宋柏翰(ソン・ボーハン) 穀保家商 189cm 88kg 19歳 右左 1B
〇バットコントロール コンタクト △走力 1B専
主要国際大会経歴(高校以降) なし
立派な体躯から器用な打撃を見せる1B。宋嘉翔(樂天桃猿)の弟は中学では二刀流、高1でも投手での登板があったが、高2からは打撃を活かすため1Bに。高3からは4番を任され強豪・穀保の打線を引っ張る存在となった。打撃はノーステップ打法からのスイングがスムーズで、バットコントロールに長ける。パワーも高2からウエイトトレーニングを本格的に行い向上しているものの、速いストレートには単打が多くなる傾向。体躯を考えればもう少し長打が欲しい。走塁と守備の動きは平均以下の1B専ゆえ、打力一本で勝負することになるが、1Bの層が薄い台鋼では大きく育てば将来のレギュラー候補になれる存在だ。
④曾昱磬(ツェン・ユーチン) 開南大学 180cm 86kg 22歳 右左 SS/2B
〇パワー △守備範囲
主要国際大会経歴(高校以降) なし
日本の野球を経験した打てる内野手。高校から日本に留学し、高知中央高では2Bとして高い打撃技術を披露。卒業後は立正大学に進学も2年時に家族の健康問題により台湾への帰国を決め、開南大学に進学。4番・SSとして大学野球リーグでは2年連続で預賽の打率3割以上、通算OPS.954、複賽では今年打率.500(22-11)と持ち味の打撃でアピール。昨年のドラフトでは指名が無かったが、2度目の挑戦で指名となった。守備は範囲が広くないためSSは厳しいと見る向きが多く、プロでは2Bメインになりそうか。台鋼は吳念庭、曾子祐に続く打てる二遊間の選手が少ないため、打撃でアピールしたい。
⑤陳重光(チェン・チョングァン) 南華大学 184cm 88kg 22歳 左左 LHP
〇コントロール △球速
主要国際大会経歴(高校以降) なし
迫力あるフォームが特徴の左腕。高2の黑豹旗では5勝を挙げ投手賞、ベストナインを獲得。ただ当時は球速が130km前後と遅く、高校卒業後にドラフト参加も指名は無かった。大学進学後は球速をアップさせ、今年に入り大学野球リーグでは複賽と決賽で14.2IP/15K ERA0.00、春季リーグでも預賽と複賽で20IPを無失点と完璧な投球を披露。ストレートの球速は130km台後半が多いが、ややトルネード気味に体を捻り投げ下ろすフォームにより球速以上の球威を感じさせる。変化球は縦に落ちるカーブとフォーク。フォームに似合わずコントロールにも優れるのも評価できる。ただプロでは球威不足でゾーンに入ったところを打ち込まれる懸念があり、球速アップに努めたい。
⑥方郁淮(ファン・ユーホァイ) 国立体育大学 186cm 80kg 21歳 右右 RHP
〇アップサイド △ウイニングショット
主要国際大会経歴(高校以降) なし
伸びしろに期待の長身右腕。本格的に専門クラスで野球をプレーしたのは中学2年からと遅く、中学卒業後に今ドラフトで中信兄弟から11巡目指名の先輩、黃霆衫の推薦により台南の中学からは珍しく、東部の高校である東大体中に進学。高校では球速が140kmを超えレベルアップ。大学入学後に調子を落とし、2年から状態を戻したが、昨年ドラフト参加も指名は無かった。先発とリリーフ両方をこなし、スリークォーターからリリーフで平均130km後半~140km台前半、最速146kmをマークするストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップを投じるが武器になる勝負球が欲しい。恵まれた体格と柔軟性を持ち合わせているため、今後の伸びしろに期待。
参考:
Taiwan Baseball Notes
https://taiwanbaseballnotes.wordpress.com/
沙拉
https://www.sportsv.net/authors/salada/articles