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台湾の古いものたち/「オールド大同」のたのしみ(大同磁器の食器)
台湾の大手食器メーカー「大同磁器」はご存知だろうか。鼎泰豊をはじめ台湾の様々なレストランで使われているシンプルな白い食器は、大同磁器のものであることが多い。何にでも合わせやすく、業務用で使われるだけあって丈夫。私も日々愛用しているけれど、そんな白無地の食器以外に好きで集めているのが、すでに廃盤となった大同磁器の柄物の器。これを現行品と区別して勝手に「オールド大同」と名づけて呼んでいる。
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台湾に住むことになった時、できるだけ物を持たずに来ようと食器は厳選して少しだけ持ってきたものの、台湾の古い食器の魅力にはまり、今では家にお店かのように大量の器がある。きっかけはおそらく大同の食器だった。廃盤になったデザインの数々に惹かれた。集めて数年経ってもまだ見たことのない柄が見つかり、バリエーションは底なしに思える。
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昔の大同磁器の定番である厚手のマグカップを「ぽってりマグカップ」と勝手に呼んで集めているのだけど、そのマグカップひとつ取っても一体何種類の絵柄があるのかまだ分かっていない。探せば探すほど見たことのない絵柄が見つかる。
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色々なバリエーションの花柄、昭和レトロとも通じるようなデザイン、昔の台湾のものとは思えないようなどこかヨーロッパや北欧を思わせるようなものまで。一体デザインの基となったのはなんだったのか。色々分からないことが多くて想像をふくらませるのも楽しい。
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昔の台湾のものとは思えないデザイン
さて、そういった器はどこで手に入るかといえば「五金行」や蚤の市など。台湾には個人で経営する生活雑貨店 五金行 という商店がある。日本でいうと昔ながらの荒物屋さん、今ならホームセンターの個人版とでもいうのだろうか。ネジや釘、建材、水道、電気に関するものばかり扱うお店もあれば、食器など生活用品ばかりを扱うお店もある。
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五金行は年配の方が経営されていることが多く、継ぐこともないのか徐々に減っていっている印象がある。あちこちの五金行を訪れているけれど、看板はあるもののすでに閉店してしまっているお店も見かける。その五金行でも今は取り扱いのメインは現代の食器。大同もそれ以外でも、いわばどこにでもあるような器が多い。
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そんな中ごくたまに昔からずっと売れずに残っていたデッドストックが見つかる場合もある。多くのお店ではもう古いものは置いてないよ、と言われることがほとんどだけど、なんとか探し出せばホコリをかぶってたくさん積まれた器の下の方から掘り出せることがある。特に運がよければ、昔の器がまだ山積みになっているお店に辿り着くこともあるけど、ごくごく稀な話。
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またオールド大同は、週末などに各地で開催されている蚤の市でも見つけることができる。台北なら福和橋蚤の市や重新橋蚤の市。ただ、こういった食器はある一定の年代以上の台湾人にとっては“昔うちにもあったわ”程度の認識で、全くもって骨董などというには遥か及ばないどころか生活雑器扱いをされているように見受けられる。
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蚤の市では新品同様のものは少なく、家庭の不用品のような食器がごちゃごちゃとある中から掘り出すことがほとんど。(なので趣味として集めてはいるけれど衛生面でも、実際に使用するのは五金行のデッドストックであることが多い)
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そもそも台湾自体が歴史はまだそんなに長くなく、大同が磁器の生産を始めたのは1960年代。それ以前、台湾では磁器生産の材料や技術がなく陶器が作られていた。なので、私がオールド大同と呼んで集めているようなものは古くても50年前くらいのもの。大同磁器では昔も今も、食器を縄で梱包しているそう。台北にある通称 大同倉庫 へ行くとそんな縄で結ばれた食器がたくさんある。
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日本でも最近大同のごく一部の絵柄に限り台湾ビンテージとして人気が出てきてはいるものの、まだまだ他に知られていない柄は山ほどある。台湾でも一般的には特に価値を見出されておらず、更には五金行自体もどんどん減っていく中、このまま救出しなくてはこういった器も徐々に減っていくのではないかという勝手に危惧している。
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上の写真は全てオールド大同。レストランなんかだと汁物の取り皿のような感じで使われたりしているような小さなお椀。ここに並べた5種類のデザインは、あまり出回っていなくて、中でも真ん中の淡いピンクの花のものはこれまでにまだ数個しか見つけたことがない。
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日本のテレビで紹介されたり、台湾雑貨のセレクトショップで取り上げている限られた絵柄のみが高値で取り引きされたりしているけれど、実はそんなデザインよりもこちらの方が希少性があったりする。
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さて、大同食器は豊富なデザインを楽しむのみならず、ややマニアックになってくると器の裏のロゴを見比べる楽しみというのもある。上で紹介した小さいお椀も同じ大同なのにそれぞれロゴマークが違う。
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大同磁器のロゴマークは時代によって変わっており、同じマークでもランクを色分けしていて、ロゴのデザインは同じで色違いのものが存在する。ただ、ヨーロッパの有名メーカーの食器のようにコレクションされたり研究されたりしていないので、いつの時代にどのロゴかなど詳しいことまでは分かっていない。五金行のオーナーさんや宜蘭にある食器博物館(台灣碗盤博物館)の方などから聞いた情報を元に、以下に手持ちのものをロゴ違いで並べて紹介していく。
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同じデザインのマークで色が違う場合は赤が一番ランクが上だそうで、他に青とグレーがあり、おそらくグレーが一番下。(ランクというのが、品質がよいのかデザイン上のものかはまだ不明)
左上の「TC」はもっと古い時代のものだと思われ、Tは Tatung大同 の頭文字だけど、Cは大同磁器の磁器の頭文字なのかなと思っている。
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上の写真の、左上の楕円皿は「微波爐適用」(電子レンジ使用可)とあるのでかなり現代に近いもの。それ以前のものには金縁や銀縁が施されていてレンジは使えなかった。右下の楕円皿は白無地の現行品のロゴ。ふたつの小皿も色でランク分けされているが、四角の中に「大同磁器」の漢字で、前述のロゴとはまたマークが違う。
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上の写真の左3つは前述の通り。下の小皿のロゴはとある五金行オーナー曰く輸出用につけられたロゴとか。made in TAIWAN / REP OF CHINA と記されている。そう言われてみるとこのマークの付いたものはどことなく西洋受けするデザインが多い気もする。右上の茶色いマークは滅多に見ない。
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また昔の食器には企業ロゴ入りのものがよく見られ、販促品として使われていたのではないかと思われるけど、かなりデザインとのバランスを無視した主張するロゴなのがまたおもしろい。
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また、企業ロゴだけでなく何かの記念に配られたり誕生日のお祝いに贈られたり、そういった文字入りのものもよくある。年月日が入っていたりして、いつのものか思いを馳せられるところがおもしろい。古道具屋のオーナーさんに聞いたところでは文字入りものだけを集めている人もいるのだとか。
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ちなみに台湾の家庭には一家に一台以上あるといわれる定番の家電「大同電鍋」の大同公司と、食器の大同磁器とは別の会社。少しおもしろいものとして、大同公司が販促品として作ったと思われるものでマスコットキャラクターの大同坊や(大同寶寶)と共に両方の「大同」のロゴの入ったこんなぽってりマグカップもある。
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大同の食器のデザインのバリエーションや時代によるロゴの変遷などが知りたくて、一度大同磁器の会社を訪れたことがあるのだけど、そういったカタログや資料などはないようで、詳しいことは分からなかった。
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どなたかご存知のことがあれば些細なことでも教えて頂けたら幸いです。
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カラーの花のデザイン
“台湾の古いものたち”をテーマに、食器をメインに集めてきたものをインスタグラムでカタログ的に並べたアカウントを作っているので、ご興味ありましたらご覧ください。→→→ @taiwan5gold
※この内容は エキサイトblog 台湾での日々を綴る「そこはかノート」の記事を加筆修正したものです。
文中に出てきた 食器の博物館や蚤の市についてもblog 「そこはかノート」に記しています。