鑑賞ゲリラ Vol.48『光芒を探し求めて』レポート(2) 2024/8/10開催
開催情報
【開催日】2024年8月10日(土)
【会場】アートラボあいち
【展覧会】Beyond A and Z(愛知県立芸術大学)
会期:2024年7月12日(金)~8月12日(月・祝)
【出品作家】
川西 りな、林 可奈葉、林 玲翔、東本 伊代、
村瀬 ひより、安田 夭、横山 奈美
内容
作品
村瀬 ひより
《さかいめ②》2024年 木炭、木炭紙 約1000x1950mm
鑑賞内容
ファシリテーター(以下 F):まずは作品をよくご覧ください。場所を変えて、近くから、遠くから見てみてください。
F:ご覧いただけましたか?この作品ではどんなことが起こっていますか?
▶最初みたときは東日本大震災の後みたいな、何もなくなってしまったところに残っている人みたいな印象。
F:それはどこから連想されましたか?
▶背景に何もなくて海のようで、手前が残った建物なのかな。
F:津波で流されてしまった後のような感じですか?
▶そうです。
▶湾のようになっていて、穏やかな瀬戸内の海のような感じ。
▶作品左側の2人の人物が何かを抱っこしている。夫婦なのかな。
▶左の人は性別が分からない。髪型は男性っぽいが、服装は女性っぽい。年齢は若い感じがする。
F:若いのはどこから感じましたか?
▶髪型とかが中学生くらいのイメージ。
F:そうすると2人は夫婦ではないということ?
▶そうですね。
▶作品右端の2人が何をしているか気になる。
▶左の人は足に力が入っているように見え、右の人は少し足が浮いているか。見方によっては左の人が右の人を殺しているようにもみえる。
▶側に何かぬいぐるみのようなものが落ちている。
F:仮に攻撃しているとしたら、それはどんな場面だと思いますか?
▶左の人は人間ではなく、海から出てきた亡霊のよう。
▶作品左側の2人と右側の2人は同じ人物なのでは。左側では抱いている赤ちゃんが、右側では側に落ちているのでは。
F:同じ人物ということは、時間が違うということですか?
▶時間は同じで、どちらかが現実でもう一方が魂みたいなもの。
▶服装から、ここは病院なのではないか。
▶建物が不気味な印象。窓にガラスがなく、こんな建物あるのか。だから手前が非現実の世界で、向こうが現実の世界なのかな。
▶でも右側では髪の長い人の方が背が高いが、左側では身長が逆転している。だから必ずしも同じ人物ではないような気がする。関係性はよくわからない。
F:ここまで情景のこと、2人の人物の関係性とか、何を抱いているか、作品左側と右側の2人の関係性などが出ました。他にも何かありますか?
▶先ほどの時間が同じなのかということを受けて改めてみると、左2つの額縁と右端の額縁の間にあるのが単純に柱だと思っていたが、そこで時間がわかれているのかも。
▶額物がわざわざ3つに分かれているのに何か意味があるような気がする。▶冒頭の津波の話を受けて見方が変わってきて、建物の中の2人(作品左側の2人)が助かった人たちで、向こうの人たちが助からなかった人たちなのかもしれない。
▶右側の2人には手前側に影がある。でも左側の2人には影がないのでやはり時間は違うのではないか。
(最後に作品情報を少し提供して一つ目の鑑賞終了)
鑑賞が進むにつれて作品の深い部分に踏み込んだり、他者の発言を受けて見え方が変わったりと、対話型鑑賞ならではの醍醐味を味わっていただけたのではないか。建物の中と外の「さかいめ」や、3つに分かれた額縁の「さかいめ」に話が及んだのはよかった。
【ファシリテーター・レポート】藤田尚之
【鑑賞時間】22分