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リバース:1999の世界観、ゲーム性、話題性を語る
7月18日に突如としてカウントダウンが始まり、特設サイト解禁の翌日には公式生放送が配信。そこから2週間と経たずにクローズドβテスト(以下、CBT)が実施されるなど、破竹の勢いで日本へ上陸した『リバース:1999(以下、リバース1999)』は中国で先行配信されているソシャゲの一つだ。CBTに参加した一人として、リバース1999に関する情報を改めて整理したい。
神秘学者(アルカニスト)と呼ばれる異能者が存在する、2000年を迎えることのできなかった世界。時間を逆行させる現象「ストーム」によって全てが過去へと巻き戻る中、その影響を唯一受けない「タイムキーパー」ヴェルティの視点で物語は進行する。
中国で先行して公開されたPVでは、字幕付き英語ボイスで世界観が語られており、秒針の音と共に映し出される20世紀西洋の街並みは映画のワンシーンのような印象を与えた。メインシナリオ序章は20世紀の時代を舞台としており、ロック黄金時代の1966年イギリスから世界恐慌の発生した1929年アメリカへと主人公たちは時間跳躍する。
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昨今のソシャゲは主人公の性別を選択できるか曖昧にする傾向にあるが、本作は女性主人公として明確に打ち出している。ゲーム内にてプレイヤー名を入力する場面こそあるものの、主人公の基本的な呼び名は「タイムキーパー」もしくは「ヴェルティ」で固定。ヴェルティも積極的に会話へ参加する他、主人公以外の目線で物語が進行することも多く、プレイヤーの投影ではなく物語に登場するキャラクターの一人として独立した存在である。
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リバース1999のメインシナリオはフルボイスで実装されているが、洋画のような空気感を持つ本作は英語ボイスで楽しみたい趣がある。PVが日本語ボイスで公開された際、その楽しみが半減してしまうのではないかという懸念があった。しかしながらCBTの設定には日本語・中国語・英語を選択できる項目が存在するため、英語ボイスを聴きながら日本語字幕でシナリオをプレイするという楽しみ方ができる。
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勿論、日本語ボイスなりの魅力もある。聞き心地の良い落ち着いた声で世界の真相へと迫っていくヴェルティ(CV:高森奈津美氏)、陽気な声で序盤のシナリオにメリハリをつけるレグルス(CV:山本希望氏)、妖艶で絡みつくような声で囁くシュナイダー(CV:悠木碧氏)と、実力派声優たちによって登場人物たちの魅力が引き立てられる。
大陸版をプレイした筆者としては、戦闘ボイスでイタリアの詩の一節を諳んじる本作の看板キャラ、ソネットの英語ボイスが気に入っている。そのため、CBTでも英語ボイスで楽しもうと意気込んでいたが、日本版ソネット演じる内田秀氏はオーストラリア・シドニー出身で英単語学習アプリのボイスも務めており、違和感の無い魅力的な発音で英語とイタリア語を操っていたため、二度美味しい思いでシナリオを愉しむことができた。
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続いてゲーム性について言及したい。リバース1999はターン制コマンドカードバトルを採用している。アタック、バフ、デバフ、カウンター、回復…といったターンごとに配られる手札「スペル」を駆使し、プレイヤーは戦闘をこなしていくことになる。
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キャラクターの頭上に表示されている星マークはMP(モキシーポイント)と呼ばれ、スペルを行使することで蓄積していく。このMPが最大まで溜まると「アルティメット」と呼ばれる必殺技を行使することができ、戦況を大きく変えることができる。
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また、本作が採用するゲーム性の一つに、スペルの融合システムがある。スペル上部に表示される星マークは「ランク」と呼ばれ、★1~3の三段階存在する。同種類、かつ同ランクのスペルが隣り合うとカードが融合し、より強力な攻撃や特殊効果を発揮することができる。
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スペルの移動にも行動回数を消費するため、融合するか攻撃するかの判断はプレイヤーに委ねられ、状況に応じてスペルを構築し、その時々で戦略を立てることが求められる。
キャラクターの役割は純粋な火力役のメインアタッカー、攻撃を加えつつ補助効果で戦況を有利にするためのサブアタッカー、回復やバフを駆使して味方を強化するサポーターに大別される。また、各キャラクターと敵には「本源」と呼ばれる相性関係が存在するため、各本源ごとにそれぞれの役割を持つキャラクターを育成することで戦闘を有利に進めることができる。
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他にも、一定ポイント溜まるごとにプレイヤーが戦闘へと介入できるシステムがあり、行動回数を消費せずにカード移動したり、特定カードのランクを上げるなどの選択を取ることができる。
育成面においては「洞察」と呼ばれる昇格システムが存在し、一定レベルがカンストごとに必要素材を消費することで、キャラクターを強化することができる。
当然、素材を回収するために特定ステージを回る”周回”が発生することになるが、倍速で自動で周回する機能が存在する他、一度にスタミナを4倍消費することで素材も4倍獲得する仕様がある。そのため、周回にかかるストレスは比較的少ないと言えるだろう。
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ターン制コマンドカードバトルは、ソシャゲのシステムとして非常にオーソドックスなものであるため、戦闘の進行は慣れてしまえばそこまで苦労しない印象だ。
裏を返せば、ゲームシステム面で革新性があるジャンルとは言い難く、既に有名な先駆者のソシャゲがある環境で、いかにしてゲームとしての魅力を引き立てるのか、運営開発の実力が試されることになる。
中国では2023年4月中旬に重返未来1999(中国版リバース1999)の三测(ユーザーテスト)が行われ、5月末に正式リリースとなった。日本のリバース1999 X(Twitter)公式アカウントが8月4日に投稿した内容によると、2023年中にリリースが決定している。大陸版と同じスケジュール感で推し量るならば、大きなトラブルがなければ今年秋ごろにはサービス開始が期待できるだろうか。
日本のCBT実施に前後してリバース1999の各メディアにおける露出は増しており、『ブルアカ』や『原神』、『アークナイツ』を例に挙げて、その注目度を主張する記事の投稿が見受けられる。
【超注目】520万回再生を突破した中国産RPG『リバース:1999』のPVがカッコ良すぎるhttps://t.co/wFAq64aH6E
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) August 15, 2023
リアルかつレトロな背景と映画のような重厚な音作り。「1999年最後の日にストームが起き時代が巻き戻った世界」という異色の設定が魅力で、中国では今や『ブルアカ』『原神』と並ぶ注目作に pic.twitter.com/wLB0xEss7e
筆者は、リバース1999について紹介された複数の記事を読んでふと、中国における話題性はどの程度あるのか疑問に感じた。
何をもって注目・話題とするのかは曖昧になりがちだが、ビジネスモデル観点で語るならば、スマホゲームアプリは広告やインフルエンサーからの紹介、ゲームメディアPR記事などによって認知された後
①検索
②ダウンロード
③課金
という順序で開発会社へ収益がもたらされることから、それらを指標として定点観測することで傾向を掴むことができる。
そこで、中国においてメジャーなソシャゲ作品となっている『原神』や『アークナイツ』を比較対象として各指標のデータを明らかにしてみたい。
世界的に有名な検索エンジンと言えばGoogleであるが、中国においては百度(バイドゥ)が最も使用されている。百度における検索は「百度指数」にて、キーワードの検索量が統計的に重みづけされており、その情報(以下、指数)を用いてソシャゲの”流行り”を読み解くことができる。
基本的にソシャゲはリリース日前後で最も検索され、そこからゲームをプレイするユーザー数に応じて指数が前後する傾向にある。そこで、まずはリリース日に着目したい。
▼各ソシャゲの中国におけるリリース日
・明日方舟(大陸版アークナイツ):2019年5月1日
・原神(各国同時リリース):2020年9月28日
・重返未来1999(大陸版リバース1999):2023年5月31日
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グラフでは原神の指数が突出しており、リリース日の2週間前にあたる2020/9/14週に指数28万もの値を叩き出していることが分かる。指数はその後低下するものの、指数10万を超える値を継続的に生み出していることから、いかに原神が話題性において異例の作品であるかが読み取れる。故に、よほど爆発的な注目を浴びない限りは、比較対象として原神を引き合いに出すのは不適切と言えるだろうか。
明日方舟については、リリース日を含む2019/5/13週に約6万4千の値となっているが、その後も断続的に検索されており2023/1/16週(春節イベント「登臨意」開催前後)に指数約7万千と、リリース後も勢いが劣らず注目され続けていることが窺える。
対して、大陸版リバース1999については指数約4万5千と、明日方舟と比較するとリリース時の注目度はやや控えめであると言える。
ソシャゲにおいて、リリース直後の売上は重要視されており、その数値から短期的にビジネスとして成功したか否かにあたりをつけることができる。「ダウンロード数」と順番は前後してしまうが、先に『原神』と『アークナイツ』を比較対象としてリリース直後の売上について触れたい。
iOSのアプリ売上については、Data.ai(旧App Annie)やSensor Towerといったモバイルアプリ分析ツールによって、ダウンロード数やアプリの課金額が分かる。bilibili動画投稿アカウント「国产二次元手游观察」がスマホゲームについて、アプリ分析ツールのデータを元にiOSAndroidの売上を毎月集計しているため、そちらを参考に明日方舟・原神・重返未来1999についてリリース直後の売上をまとめてみた。
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原神については、上表に加えてPCとPS4の売上(推定80,000-120,000万RMB)が加算される。わずか2週間で開発費110億円を回収したことで原神は話題になっていたが、比較してみるとその数値の異様さが際立つ。
原神ほどではないにせよ、明日方舟もわずか1ヶ月で59,139万人民元(約120億円)の売上を出していることから、出だしとして大成功と言える。
百度指数やリリース後の売上数値を踏まえるに、今時点での大陸版リバース1999の話題性をアークナイツ・原神に例えるのは、やや誇張しているきらいがある。しかし、リバース1999単体として見ると売上21,552万人民元(約43億円)はリリース直後の数値として成功の部類に入るだろう。
リリース日の年度が3-4年も開いているとソシャゲ市況は大きく変化する。そこで、同じく2023年に中国でリリースされた『崩壊:スターレイル』や大陸版『ブルーアーカイブ』と比較することで、大陸版リバース1999の話題性を捉えてみたい。
・崩坏星穹铁道(崩壊スターレイル):2023年4月26日
・重返未来1999(大陸版リバース1999):2023年5月31日
・蔚蓝档案(大陸版ブルーアーカイブ):2023年8月3日
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やはり崩壊3rdや原神を生み出したmiHoYoの集客力は凄まじく、その話題性は他の追随を許さない。リバース1999については、最近リリースされた大陸版ブルアカを上回る指数となっており、同期間でリリースされたソシャゲの中ではその注目度の高さが窺える。
続いて、中国のAndroid端末配信プラットフォームであるbilibiliとTapTapのダウンロード数を示す。App Storeでのダウンロード数データの閲覧にはアプリ分析ツールの使用料が発生するため、割愛させてほしい。
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大陸版ブルアカは8月の売上数値も判明していないが、リリース後2週間で双方のプラットフォームにて100万以上のDL数となっている。
リバース1999の話題性について結論付けるならば、miHoYo作品には及ばないものの、大陸版ブルアカと同程度と位置づけることができるだろうか。
運営会社のBLUEPOCHは2020年に設立されたばかりの企業で、リバース1999は会社として初めて制作する作品だ。中国の企業データベース「天眼查」の開示情報によると、HypergryphやYostarも出資会社として名を連ねている。会社の歴史こそ浅いものの、BLUEPOCHの公式HPによると創業メンバーは二次元ゲーム分野での開発経験を持つという。
中国産のソシャゲが日本へ展開する上で大きなハードルの一つとなるのがローカライズ…翻訳の精度だ。CBTにてシナリオを読んだ限りでは、日本語に違和感を感じる場面はあまり無く、重厚な世界観に没頭することができた。
崩壊シリーズの下地があったmiHoYoやアズレンの運営経験を持つYostarのような日本展開を行うマーケティング上の成功経験を、BLUEPOCHはまだ持ち合わせていない。
何もかもが手探りの状況下であるBLUEPOCHであるが、少なからず公式discordから伝わってくるユーザーとの距離感からは真摯な姿勢が見受けられる。
競合がひしめき合う日本のソシャゲ市場において、ヒットの道のりは決して平坦なものではないが、リバース1999に期待を寄せるユーザーの一人として彼らを応援したい。
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