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文化を発信し続けることが大事。発信しないと忘れられちゃいますから。┃㈱金井畳店さん インタビュー
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明治44年創業、今年111年目を迎える(株)金井畳店の四代目として先代たちが築き上げてきた「技術」や「三惚れ精神」を引き継ぎ、畳という文化を今・未来に向けて発信していく。
事業団の助成事業や相談事業の活用に加え、台東区の海外展開事業にも協力し、販路開拓のためタイへ渡航するなど、以前より事業団とも関わりの深い金井 功さんにインタビューさせていただきました。
四代目になる
ー四代目になると決めたのはいつ頃でしたか?
父親の働く姿やお店の職人さんの畳を縫う姿がとても格好良くて、子供の頃から「四代目になる」というのが目標でした。家族にその目標を伝えると凄く喜んでくれましたし。
そのため、高校卒業後は埼玉の全寮制の職業訓練校で3年間畳の作り方を学び、その後 (株)金井畳店に入社し末弟子となりました。
そこから、父と私は「父と息子」ではなく「師匠と弟子」という関係になりました。
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新潟の実家が畳屋になり、修行の後、初代・三蔵氏は単身新潟より上京。
浅草橋の地に金井畳店の看板を掲げ創業する。
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(株)金井畳店を設立。生え抜きの江戸っ子であり、『三惚れ精神』を説く。
職人を多く雇い入れお店を法人化し、金井畳店を大きくする。
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修業時代、京都の名店『池内宇一郎商店』で修業し、
京都御所や桂離宮など重要文化財の畳工事に携わる
※三代目の修業時代のエピソードはこちらから
修業時代の話
―職人の世界は修業時代が大変なイメージがあります。修業時代の話を聞かせてください。
父との関係性が変わっただけでなく、生活環境も変わりましたね。
まず、家族と一緒に食事を食べることができなくなりました。
そして自分だけの部屋はなくなり兄弟子たちと相部屋。
さらに自宅のお風呂も使わせてもらえないという生活が8年ほど続きました。銭湯に行くお金がもったいなくて、雨で体を洗い、洗濯機の中を浴槽替わり使ったこともありましたね。笑
ー結構ハードな修業時代を過ごされたんですね。笑
逃げ出したくなることはなかったんですか?
実家だから逃げ出すこともできませんでした。笑
そんな生活だったので、とりあえず早く環境を変えたくて頑張ってましたね。
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よく見ると「金井」の文字が彫られている。
職人ということもあり、僕の時代は仕事のやり方は見て学ぶしかない。兄弟子が何人もいたんで、仕事を振ってもらうこと自体がほとんどありませんでした。しかも、たまに振られる仕事をこなすことができないと「コイツはダメだな」と次振ってもらえなくなる。周りが仕事を上がったあとによく一人で練習をしていました。
10年くらい経ってからですかね。周りから認めてもらえて仕事を任されるようになったのは。
仕事を任されるようになってから
ー仕事を任されるようになってから変わったことはありますか?
仕事を任されるようになってからは経営のことを考え始めるようになりましたね。とある12月頃に「すごい暇だなぁ」と、ふと思ったんです。
なんでだろうと調べてみたら、うちのお店の取引先の割合は会社や不動産が8割で残りの2割が一般のお客さんだったんです。少しずつ周りで廃業する畳屋さんが出てきたので、今後のことを考えると今のお得意先だけでなく、新規のお客さんを取り込む必要があると思いました。
社長(父)に「一般のお客さんを増やすためにホームページを作りたい」と相談すると、猛反対を受けましたね。何度相談しても前々理解してもらえなくて。
―その後ホームページはどうされたんですか?
反対を受けながらも、そこに関してはこっちも折れることはできず、自分でパソコン買って本屋に参考書買いに行って、独学で1からホームページを作りました。そうしたら徐々に問い合わせが増えてきて、一般のお客さんだけで3,000万円の売上が出る年もありました。
あんなに反対してた父も「今の時代はインターネットがないとダメだな」なんて言い始めちゃって。笑 本当調子良いですよね。笑
「今まで頼んでた畳屋さんが廃業しちゃって」など、どこに頼めばよいか分からないお客さんも引き込むことができて、今では一般のお客さんが7割ぐらいになりました。
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商品を見れるだけでなく、畳についても詳しくなれる
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(公財)台東区産業振興事業団について
ー(公財)台東区産業振興事業団はどのように知ったのですか?
畳屋も新しいことをしていかなきゃいけないと思っていて、近くの革屋さんのイベントに合わせてお店でバーゲンをしたんです。そしたら事業団の専門コーディネーターさんがお店まで来てくれたんです。
そこで「今新規事業を始めようと思っていて設備の導入を検討している」という相談をした際に「ものづくり補助金」を紹介してもらったんです。補助金で支援を受けることができればもっと前向きに取り組めると。
今まで補助金なんてやったこともなかったので、事業団の無料相談を利用させていただきました。
繰り返し書き方について相談に乗っていただいたことで、無事ものづくり補助金は採択。そのおかげで機械を導入し、今までできなかった「薄い畳」を作れるようになりました。
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開発から発売に至るまでに3年かけたこだわりの畳。
詳細はここをクリック
―その相談経験は今でも役には立っていますか?
ものづくり補助金で苦労した甲斐もあり、補助金へのハードルも下がり、その後、小規模事業者持続化補助金などにも採択してもらうことができました。補助がもらえるとその分資金面に余裕ができるので、より前向きに取り組むことができるようになりますね。
―台東区の海外展開支援事業も長く関わっていただいてますね。
2017年の9月から関わらせていただいていて、タイの「FOOD&HOTEL THAILAND」という展示会に3回出展し、ワークショップを開催、現地のバイヤーと商談、勉強会への参加など色々と経験させていただきました。実際に現地に足を運ぶことで、自分なりの課題も見つけられたり、海外でのビジネスで成功する難しさなどたくさん感じることがありました。
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いつもは温厚な金井さんの迫力ある手縫いの動きに、多くの来場者が見入っていました。
コロナ禍の取り組み
―コロナ禍で新しく取り組まれたことは何かありますか?
ECサイトを立ち上げました。福島から長野や福岡など全国からお問い合わせがあり、畳を入れさせていただきました。
今後は越境ECにも挑戦したいですね。そしてただ越境ECを始めるだけでなく、ちゃんとマーケティングをやらなきゃダメだと思ってます。良い商品を並べれば売れるとは限らないので。「やわらかい畳」を推してみたりとか、相手がどういうモノを求めているかを考えながら販売したいですね。
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また、「たくさんの人に畳を知ってもらい、畳の可能性を広げたい。そして、『畳』を後世へ残したい。」という想いから「kanai」というブランドを立ち上げました。「kanai」では畳の良さを残しながらも、お客さまの暮らしを彩るだけではなく、どれだけ寄り添えるかを考えた商品を提供していきます。畳を通してお客様の生活がおもしろくなってくれると嬉しいですね。
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そして、『畳』を後世へ残したい。」という想いから生まれた。
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犬・猫などのペットを飼っている方におすすめ
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―他にもクラウドファンディングに取り組まれたと聞きました。
はい。実は畳に使用されるイ草は、十分な長さがないと正規品として用いることが難しく畳になれないんです。そのため、収穫されるイ草の3割ほどしか正規品としては利用されず、約7割が焼却されたり肥料になってしまいます。
「捨てられてしまうイ草をなんとかできないか」「イ草農家さんのために何かできないか」という想いを持っていたところ、日頃よりお世話になっているJAPANMADEさんにお声掛けを頂き、非正規品や廃材予定だったイ草を利用した畳のアップサイクルマットをクラウドファンディングにて販売するというプロジェクトに至りました。
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様々なシーンで使えるマルチマットの製作に挑戦。
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プロジェクトの支援総額は668,000円と大きく注目を集めた。
お陰様で多くのご支援をいただくことができました。いただいたご縁に感謝しながら、いち早くお届けできるように精一杯頑張って手作業で作っていきます。
今後もこのような活動を続けながら、産地とお使いになるお客様の橋渡しが出来たら嬉しいですね。
SNSについて
ーSNSも活用されてます。工夫されていることはありますか?
InstagramやTwitterも活用してますし、YouTubeにもいくつか動画を上げています。SNSは気軽に自分たちで情報発信を始められるのが良いですよね。
1つ思うことは、他の畳屋さんがインスタグラムを使うと畳だけの写真を挙げちゃうんですよ。商品に自信があるから。
でも、クリエイターなどプロの人がやると畳だけじゃなく、その畳が置かれてる部屋・空間の写真を載せるんです。実際にその商品がどのように使われているかが分かる写真を見た方がイメージが湧くので、手に取りやすくなる。
やっぱり表現はプロに任せるべきだなと思います。
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新しいツールも積極的に使っている
クリエイターやデザイナーの方と仕事をする機会を増やしていきたいですね。刺激もありますし、今後も協力して発信していきたい。
今後について
ー今後について教えてください。
畳は機械で製作することが多くなっていますが、金井畳店では手縫いの畳製作にもこだわっています。畳という文化を守るためには、やはり技術を磨いていかないといけない。そして、新しい文化とミックスさせていくことも必要だと思います。
あとは「文化を発信し続けることが大事。発信しないと忘れられちゃいますから。」
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編集後記
金井さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。インタビュー中の一言一言から金井さんの人柄の良さが溢れ出てており、さらには畳という文化を継承することへの使命感・責任感などの熱き想いが伝わってきました。
また、金井家には、先代に似せる「師似せ」を目指し、代々続く「三惚精神」があるとのことで、それは
1.畳に惚れ込む
代々、代を守る者にとって畳とは「惚れ抜く仕事」
2.町に惚れ込む
地域を愛し、色濃く根付く下町の心意気を次の世代へつなぐ
3.妻(家内)に惚れ込む
仕事だけではなく、自身の周りにいる人も大切にする
愛に溢れる(株)金井畳店様だからこそ、お客さんからも愛され続けているのだと思います。
職人として良い畳を作り続けることにこだわりながらも、経営者として先を見据え、常に新しいものを取り入れていく姿勢は、今後も台東区で今までの文化が継承されていくことや、新しい文化が生まれることを期待させてくれます。
なお、(株)金井畳店様は10月13,14日に開催される「台東区産業フェア」にも出展されますので、ご興味ある方は是非、会場でご覧ください。
この記事は台東区産業振興事業団 商工相談担当 額田が担当いたしました。
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