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季節の佃煮 柳ばし小松屋の「生のり佃煮」づくり取材レポート&インタビュー

知る人ぞ知る 台東区柳橋の 老舗佃煮屋「柳ばし小松屋」さん。
毎年1月から3月限定で販売される「生のり佃煮」を作る様子を見せていただきましたので、レポートしていきます!

「生のり佃煮づくり」取材レポート


小松屋さんのお店はJR浅草橋駅より徒歩5分、神田川沿いの「柳橋」のたもとにあります。 

風情ある佇まいの小松屋さん

とても風情ある佇まいの小松屋さん。
その趣ある雰囲気や店頭に並んでいるおいしそうな佃煮に引き寄せられ、
散歩中に立ち寄ってくださる方も多いんだそうです。

おいしそうな佃煮が並んでいます(#^.^#)
四代目 秋元治さんが迎えてくださりました

小松屋さんの歴史とこだわりの佃煮づくりの紹介

創業明治14年。明治から昭和の初め、花柳界としてにぎわった柳橋。

小松屋は、料亭から旦那衆が芸者衆を乗せ隅田川を行き交う「涼み船」や、投網で採れた魚を天ぷらや刺身にして客に出す「船宿」を営んでいました。

柳橋の料亭のおみやげとして、鮒のすずめ焼きや、江戸前の佃煮を売り出したところ、やがて評判となり、現在も柳橋のたもとで4代目が昔と変わらぬ製法で少しずつ作り続けています。

柳ばし小松屋公式サイトより一部引用

小松屋の佃煮は、冬は「かき佃煮」や浜名湖の「生のり佃煮」など 季節ごとに旬の材料を厳選し、美味しい時期だけ作ります。春から旬の「江戸前穴子」も東京湾の活きた脂の乗ったものだけを厳選して使います。
タレは、醤油、さとう、みりん、だけの昔と変わらぬシンプルなもの。
本来、佃煮は冷蔵庫や真空包装のない時代に考えられた保存食です。
小松屋の佃煮は今も、常温でも1カ月ほど日持ちするよう作っています。
しっかりとした甘くない味付けで作ってご飯にも酒の肴にも合う佃煮です。

柳ばし小松屋公式サイトより一部引用

生のり佃煮に使用されている「青のり」について

「1回食べれば違いがわかる」と言われる小松屋さんの生のり佃煮。
販売時期が来るのを毎年心待ちにしているファンもたくさんいらっしゃる逸品です。

小松屋さんが生のり佃煮に用いるのは 香りや風味が格別という浜名湖産の青のりです。しかも とれたて できたての「新物」のみが使用されます。

海水と淡水が入り交じる浜名湖は栄養、日当たりなど青のりに最適な場所。そんな豊かな浜名湖で育った とれたての青のりをそのまま佃煮に。。。
想像するだけでおいしそうです(#^.^#)

浜名湖

こちらが小松屋さんで使用されている「新物」の浜名湖産青のりです。
冷凍保存すると本来の海苔の香りを損ねてしまうため、仕入れるのはその日に使用する分だけ。
見せていただいた青のりも、朝お店に届いたばかりのものなんだそうです。 

新物の青のり

もうこの時点で 海苔のい~い香りがします!

4月以降に出回る青のりは冬にとれた青のりを冷凍したものになるため、「新物」が仕入れられるのは1月から3月のみ。小松屋さんの「生のり佃煮」が1月から3月限定の販売である理由がここにありました。

四代目 秋元治さんによる生のり佃煮づくり

佃煮づくりはまずは 青のりに含まれているわずかな砂を取り除くところから始まります。
「漁師さんも注意してくれているけど細かい砂が残っているときがあるんだよね」と冷たい水を物ともせず 丁寧に青のりを洗っていく秋元さん。

その凛とした姿勢から冷たい水での作業であることを忘れてしまう程 

流水で洗った後は、青のりの余分な水分を絞っていきます。

 水の出具合で青のりの状態を見極める。佃煮の出来上がりを左右する大切な作業

「水分を絞った時の水の出具合で、その日の青のりの状態を見極め、煮上げるタレの分量を決めている」のだそうです。
水分が出る様子と手の感覚で見極める。すごい!

タレは本醸造のしょうゆとみりん 

生のり佃煮のタレは、創業当時から変わらず 本醸造の醤油、みりん だけというとてもシンプルなもの。分量はその日の青のりの状態に併せて決まります。

そして煮上げに用いるのは なんと ご飯を炊くあの「お釜」。

他の佃煮は鍋で煮上げていますが、生のり佃煮だけはお釜で煮上げます。
「お釜で煮上げると 青のりとタレがよりよく対流しておいしく仕上がる」
このことに三代目の時に気が付き、それ以降はお釜で煮上げているのだそうです。

このような秋元さんや先代たちの試行錯誤があったからこそ、私たちはおいしい佃煮を食べられるんだなぁと しみじみと思いました。

タレの沸騰してきたところを見定めて 青のりをお釜に入れていきます。

入れた青のりによりタレの温度が下がる、タレの温度が上がってきたら、また少しずつ青のりを入れていく・・・が繰り返されます。
さらに青のりの状態により、絶妙に火加減に変化をつけながら、生のりを煮上げていく秋元さん。

生のりが全部お釜の中に入ったら 煮上がりまで弱火でじっくり1時間半

どんどん海苔のい~い香りに包まれていきます。

この日は煮上がっていく様子を撮影させていただきました。貴重な動画はInstagram「たいとう産業ナビ」で掲載していますのでぜひご覧ください。

煮上がった生のり佃煮がこちらです。この時の海苔の香りのよさときたら!

この日取材でお伺いした職員一同 「この香りでご飯が食べたい!」と思わず悶えました・・・。
このいい香りも含めて、皆様にもお伝えできらたどんなによいか!
(画面越しでも香りが伝えられる方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、どうか教えてください!)

しかし「まだ出来上がりではないんです。佃煮は1日寝かしておいしくなる」ということで 完成するのを次の日まで待ちます。待ち遠しい!

翌日1日寝かした佃煮を見に 改めてお店を訪ねました。
お店に入った瞬間から、海苔のい~い香りに包まれます!幸せ!(#^.^#)

1日前の状態に比べ、粘り気が強くなっているのがわかりました。
前日よりも味が馴染み、益々おいしくなった生のり佃煮の完成です!

この日に完成した生のり佃煮は、大皿4皿分。
おいしく作れる分だけを しっかり作る。
小松屋さんの佃煮、こんなに丁寧につくられていたんですねo(><;)oo

わっぱ入り生のり佃煮 
こちらはご家庭用にぴったりのサイズ

完成した生のり佃煮は翌日から店頭で販売されるとのこと。

皆さん、小松屋さんの店頭に並んでいる商品のすべてが こんな風に一つ一つ丁寧にお店の中で作られている佃煮なんです! おいしいわけです!
しかも佃煮づくりのタイミングでお店を訪れたのなら 佃煮のいい香りも楽しめます(#^.^#)

生のり佃煮のおいしい食べ方紹介

最後に 秋元さんに美味しい生のり佃煮の食べ方を教えていただきましたのでご紹介いたします。

皆様にこのおいしさをお伝えしたいと思い、実際に作ってみました。
使わせていただいたのは、まさに取材中に作られた生のり佃煮です(^^♪
(作っているところを見させていただいたので、ありがたさがはひとしお! 噛みしめていただきました!)

まずは 基本の ごはんのお供

もちろん相性抜群です!おいしい!ごはんがどんどん進みます♪

次は 一押し!たまごかけごはん

こちらはTKG好きの方には一度は召し上がっていただきたい逸品です!
生のり佃煮をしょうゆ替わりに♬
いつもの卵かけご飯に 海苔とかつおの香りと旨味が加わり、アクセントにときどき松の実。 本当に絶品です。

ご飯のお供だけではありません。パンにも!

バターの甘味にのりの旨みとチーズのコク 合います!
ごはんとはまた違ったおいしさです!

他にもパスタやディップなど、教えてくださったいろいろな食べ方でいただきました!どれも海苔の香りと旨みを楽しめる食べ方です(^^♪
「たいとう産業ナビ」のInstagramにそのほかの食べ方の写真を掲載していますので、ぜひご覧ください。
小松屋さんの佃煮は味がしっかりついていますので少量で十分おいしくいただけます。生のり佃煮の分量は写真を参考にしてみてください!

四代目 秋元治氏インタビュー


小松屋さんの四代目 秋元治氏が佃煮づくりにかける思いなど お話をお伺いしました。

インタビュー内容の前に、秋元さんのエピソードをご紹介させていただきます。

昨年12月に開催されたイベント「江戸まち食通マーケット」にご出店された小松屋さん。4日間の朝10時から夜の9時までのイベント中、秋元さんご自身が 店頭に立ち続けお客様のご対応をされていました。
おいしそうな佃煮や 貫禄も親しみやすさも併せ持つ秋元さんの魅力に引き寄せられ 小松屋さんのお店の前にはいつもたくさんのお客様が。

印象的だったのは、より多くのお客様に商品を手に取っていただけるよう 試行を凝らして接客されている秋元さんの姿でした。 
お客様の声に素直に耳を傾け、よく様子を観察し、すぐに商品の陳列やディスプレイに反映されていたんです。
「その方がよいと思ったらすぐやる!やってみる。」とお話された秋元さんの様子から たくさんのことを教えていただいた思いでした。 

このような秋元さんの様子も踏まえて今回はインタビューさせていただきました。

お客様の声を聴き、反映できることはすぐやるという姿勢はいつ頃から?

改めて考えると、自然と身についたかなぁと思います。

小松屋はもともと 明治のころ創業当時は漁や舟宿を営んでいました。漁でとった海苔は、乾燥させ干して、商品にしていました。当然天候に左右される。雨がふったら台無し。どうすればよいかと試行錯誤の結果、煮上げて常温でも保存がきく「佃煮にしよう」と生のり佃煮づくりが始まりました。
また、鍋で煮上げると、タレの温度上昇とともに跳ねて、せっかく旨味が染みこんだ生のりが沢山飛び散ってしまう。どうすればよいかと考えた結果 今のお釜で煮上げる方法にたどり着きました。

「こちらの方がよいと思ったらやってみる。」「できることはすぐやる。」というのは代々ずっとその姿勢だったように思います。

臨機応変にすぐやってみる。
イベント中もその思いでした。たまたま大船渡の漁師さんが店頭に来てくれた日がありました。商品の中の『カキの佃煮』を見て「これどこのカキ使ってるの?」と尋ねられました。産地を伝えると「それを書いといた方がいいよ!その産地に想いがある人が見てくれるから!」とアドバイスをくれたんです。「なるほどな」と思い早速、佃煮の材料の産地を書いた紙をディスプレイに加えました。 すると「私ここの出身なんですよ~」というお客様がうれしそうに商品を買っていってくれて。

イベント中は、いつもとは違ったお客様にたくさん出会うことができました。お客様からいろいろなお話を聞いたり、また反応を見ることができてとても楽しかったし、学びもありました。

四代目になることはいつ頃決められたんでしょうか?

小さいころから 学校の先生などから「おまえは四代目になるんだよね~」と言われたりして そのような環境だったので四代目になることに抵抗はありませんでした。自然に思っていったと思います。
ただ一度は外に出たいと思っていました。先代は「すぐ家に入れ」という意見だったので衝突もありましたが、まちの人たちが「一度は外に行かせた方が絶対いいよ」と言ってくれたことにより そこからは意見を変えてくれました。
どこで修行するのがよいか といろいろ模索した末に 佃煮づくりの環境が似ている大阪で修行をすることになりました。

その経験があったからこそ、外に出たことによりうちがとても恵まれていることにも気が付きました。なぜ今のスタイルで佃煮づくりができているのか 小松屋を取り巻く環境 取引してくださっているところに対してのありがたさについて いろいろと考えることができました。

柳橋に戻ったころ、デパートでの催事の話をいただきました。人も必要、経験もないと不安なところもありましたが 「やってみよう」と挑戦してみることを決めて 今があります。
デパートに来るお客様の対応も初めからうまくいったわけではありません。
少しずつうまくなっていきました。
お客様の目線を見て、何を思っているかなと考えながらお声かけする。そうするとお客様が求めていることを言ってくれるようになり、ご希望にあった商品をお買い求めいただけるようにどんどんなっていきました。「売らなければいけない」というプレッシャー等から一方通行の接客になるようことがないよう心がけています。

最後に「佃煮づくりにかける思い」を教えてください。

佃煮を食べて「こんなにおいしいのか!」とびっくりしてもらいたいと思いながら作っています。
お客様が「佃煮ってこんなものか」とがっかりされないように。 
手作りだからこそ 毎日が勝負です。常に「これがベストかわからない。」という気持ちで 毎日「よりよく」を追い求めながら佃煮づくりをしています。

また柳橋のお店に来ていただける方には、はじめての方もいらっしゃいます。再び足を運んでいただけるよう、その時の出会いを大切にご対応させていただいています。

編集後記


秋元さんのお話から「よりよい佃煮」を追及する熱い気持ちがひしひしと伝わってきました。
よりよいものを追及する姿勢をずっと持ち続けることや、また「できることはすぐやる」を実践するところなど、取材を通し秋元さんからたくさんのことを学ばせていただきました。
秋元さん、この度は生のり佃煮の様子の取材というとても貴重な機会をいたき、本当にありがとうございました。

店舗概要


改めて柳ばし小松屋さんのお店概要をご案内いたします。
毎日様々な佃煮づくりも行われている柳橋のお店では、タイミングが合えば佃煮のい~い香りも楽しめますので、ぜひ柳橋のお店に一度いかれてみてください!
※小松屋さんの生のり佃煮はオンラインショップや日本橋三越でも購入することもできます。今回ご紹介した生のり佃煮は1月から3月の限定販売です。

柳ばし 小松屋(有限会社柳橋小松屋)
111-0052 東京都 台東区 柳橋 1-2-1
JR浅草橋駅より徒歩5分
お問い合わせ・ご注文    tel:03-3851-2783

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🚩Instagram 季節の佃煮 柳ばし小松屋(@komatsuya2783) • Instagram写真と動画


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この記事は台東区産業振興事業団 金子が担当いたしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!