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幽霊とマッチングしちゃった話

月末の金曜日、21:30。
溜まった仕事を片付けながら、男はデスクで大きくため息をついた。

「華金」「プレミアムフライデー」と言われていたあの頃はどこへやら、男にとっての働き方改革なんて起こるはずもなかった。

一体いつになったら抜け出せるのか、このタスク地獄。
あーーー、もうダメだ。やってらんねえ。

――と、男は内心で叫びながら、ヤケクソになって転職サイトを開く。

「プロジェクトマネージャー募集! 月収XX万円」
「新規サービス開発者募集! 年俸XXX万円」

やたら聞こえのいい仕事が並んでいるけれど、俺には関係なかった。
いくら応募してみたって返事すらない。
新卒就活の「お祈りメール」がかわいいもんだ。いまや無視だもんな。

それだけ、俺が眼中にないってことなんだろう。
35歳、独身。この会社とはずるずる干支1周分もやってきた。
気づけば、どこにもいけない籠の中の鳥。

はあぁーーーー…………

ピコン。

大きなため息の終わりと同時に、なにかが鳴った。
たぶんスマートフォンの通知だ。
またしょうもないニュース記事かな。
聞き慣れない音だけど……

デスクワークで疲れ切った目の痛みを堪えながら、小さな画面に視線を移す。

縺ゅ″縺ェ さんと、マッチングが成立しました!

は……?

いつだったかインストールしたまま忘れていた、マッチングアプリからだった。

(つづく)

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尾崎 太祐
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