諸葛亮兵書 心書 察情
守屋洋訳 諸葛孔明の兵法 {徳間書店} より
{察情}
敵の状況を見破る法
両軍対峙のとき、敵が鳴りをひそめているのは、堅固な守りを恃みとしているのである。
しきりに戦いを挑発してくるのは、こちらの進攻を誘おうとしているのである。
風もないのに樹々が揺れ動いているのは、兵車が進攻して来るのである。
土ぼこりが低くあがっているのは、徒士が攻め寄せてくるのである。
使者に強気の口上を述べさせ、強行突破の構えを見せるのは、退却に転じているしるしである。
進攻するでもなく、後退するでもない構えをとっているのは、誘いの隙をみせているのである。
杖をついて行軍しているのは、飢餓に悩まされている証拠である。
明らかに有利な状態にあるのに、あえて進攻しないのは、疲労困憊しているしるしである。
敵陣に鳥が群れているのは、すでに陣を引きはらったしるしである。
夜、大声で呼びかわしているのは、恐怖感にとらわれている証拠である。
軍に統制が欠けているのは、将帥に権威がなく、部下から軽んじられているしるしである。
旌旗が揺れ動いているのは、混乱に陥っているしるしである。
幹部将校が部下に八つ当たりするのは、長期の遠征につかれているのである。
賞賜を濫発するのは、窮地に立たされている証拠である。
刑罰をを濫用するのは、どうにもならない状況に追い込まれている証拠である。
使者をよこしてわびをいれてくるのは、軍に休養をあたようとしているのである。
たくさんの贈物を持参し、ご機嫌をとり結んでくるのは、味方につけようとしているのである。