善将 心書
守屋洋訳 諸葛孔明の兵法 {徳間書店} より
{善将}
すぐれた将帥と凡庸な将帥
むかしのすぐれた将帥は部下に臨むにあたってつぎの四つの基本原則を守った。
1・進撃、後退いずれにさいしても、適切な指示を下した。部下が「禁を知る」、すなわち命令違反を犯さなかったのはそのためである。
2・仁義に則って行動すべきことを教えた。部下が「礼を知る」、すなわちモラルを守ったのはそのためである。
3・人材の登用に能力主義を貫いた。部下が「勧を知る」、すなわち奮いたったのそのためである。
4・信賞必罰をもって臨んだ。部下が「信を知る」、すなわち将帥のことばにウソいつわりのないことを知ったのはそのためである。
禁、礼、勧、信 この四項目こそまさに軍の根幹をなすものである。大綱さえきちんと確立していれば、細目はおのずから正される。だから戦えばかならず勝ち、攻めればかならず取ることができたのだ。
凡庸な将帥はこれとは逆である。
後退するときは、総くずれとなって踏みとどまることができず、進撃するときはただやみくもに進むだけだから、壊滅を免れない。
賞罰の基準がでたらめであるから、部下は将帥を信頼せず、みずから奮いたち、みずからいましめることを知らない。また、有能な人材が退けられ、へつらい者が幅をきかせるということになるのである。だから、戦えばかならず敗れるのだ。