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cakesの「ホームレス記事問題」の原因は、全メディア人が抱える「職業上の特性」にある※ブーメラン注意

cakesクリエイターコンテスト2020の優秀賞を取った、ホームレスの方への取材記事が、賛否両論を巻き込んで話題です。

※記事(賛否両論あるように、気分が悪くなる可能性があるので閲覧はご注意ください)

※編集部コメント

複雑な問題が絡み合っています。純粋に記事の内容だけが問われているわけではありません。cakes運営元のnote株式会社の体制が問われていたタイミングでもあります。10月27日に掲載記事に関するお詫びと再発防止策が出たばかりでした。

ただ、この問題はcakes編集部、note株式会社だけの問題ではありません。「メディアに関わるすべてのひと」が抱える「職業上の問題」です。私もメディアの編集長ですし、インタビュアーも務めることがあるので、明日にでも自分が起こしてもおかしくない問題です。

主語も述語も大きいので、具体的にしていきます。

まず「メディアに関わるすべてのひと」は、特に以下の職種名で働いているひとを指します。

●編集者

●ライター

●記者

●インタビュアー

こういった「メディアに関わるすべてのひと」が抱える「職業上の問題」とは何かと問われれば「取材対象を人間扱いしない」です。

確かに人権侵害と呼ばれるほど酷いケースは少ないですが、取材対象者を「そのひとだけの人生も考えも人格もあるかけがえのないひとりの人間」として見なすよりも、「この取材対象者を使ってどれだけ広く社会にコンテンツを届けられるか」という考えが優先される環境で働いています。

つまり、「取材対象者である人間」は手段で、目的は「広くコンテンツを届ける」です。これはメディア人が仕事をする上で客観性などを保つ上で必要な特性でもあるから、簡単には手放せない図式なのです。でも、それはときに大きな暴力になります。今回のcakesホームレス記事問題の最大の原因には「メディア人が持つ職業上の特性」の暴力の側面があります。

繰り返しますが、これは記事を書いたライターの方やそれを選んだcakes編集部だけの問題ではありません。すべてのメディア人が抱える「職業上の問題」です。

私も含めたすべてのメディア人は問われています。

仕事をする上で「広くコンテンツを届ける優秀なメディア人」であるべきか、「目の前の人間を手段にしてはならないと考える真っ当な人間」であるべきか。

今回もネット上で賛否両論が起きているので、「優秀なメディア人」として考えれば成功になってしまうのです。でも「真っ当な人間」としては失敗とも考えられます。

ではcakes、note株式会社はどう考えれば良いのか。ここからは私のリクエストになりますが、願わくば「優秀なメディア人」よりも「真っ当な人間」であることを優先していただきたいです。なぜならcakesは、note株式会社は作品を生み出したいすべてのひとにとってのプラットフォームだからです。いわば広く社会全体の利益をつくれる公共の存在だからです。

メディア界隈と狭く括っても、「人間を人間ではなくコンテンツの材料扱いする姿勢」の前例を作ってしまったと言えます。すべてのメディア人が持つ仕事上の特性が「取材対象者を人間扱いしないこと」と表裏一体であるように、ときにメディア人は暴走します。悲しいことに、仕事熱心なひとほど暴走します。

だから、cakesとnote株式会社には「自分たちのメディア姿勢が他メディアの指針になる。広くネットコンテンツの信用に関わる」という基準を、まだ入っていなければ編集方針に加えていただければと思います。入っていれば編集方針が徹底される体制を構築していただければと思います。「努めます」といった精神論は機能しません。今回の件を問題として捉えるならば、メディア人としての仕事を完遂した結果として起きたことですから、メディア人が質の高い仕事をつくるように努めれば努めるほど、また起きますから。

cakesもnote株式会社も、もう規模が「自社の利益だけを考えればいい」を超えています。


・・・私もメディア人なので、ここに書いたすべてがブーメランになります。メディア人であるのか、人間であるのか。この二つは対立してしまうことも多いのですが、両立の道を模索していきます。

Webメディアも「守りの編集」を見直すフェーズに入ったように思います。

特に「人間関係」を主軸に抱えるメディアを運営しているので、世間の目以上に厳しい目を持ってまいります。

人間でいることって難しいんですよね、、、仕事は麻薬。仕事人であることの弊害も見直される時期なのかもしれません。

少しずつ読んでいただけているようです。

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