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人事異動~予防業務との出会い

私は現在、地方の消防士として働いていますが、社会人3年目までは首都圏の消防士として働いていました。

2年目までは警防課という主に火災での現場対応を行う部署に所属しており、いわゆる「火消し隊」でした。
ここでは、交代制の勤務で職場の方々と24時間寝食を共にする、部活動の合宿のような生活をしていました。

これが、私には合いませんでした。
人に合わせて行動することや、自分のペースが乱されることにストレスを感じる私はこの職場環境がどうしても耐え難かったのです。

そして、社会人2年目の終わりに人事異動を経験しました。
これが、私の消防人生の大きなターニングポイントとなりました。

今回は人事異動と予防業務との出会いについて触れていこうと思います。


課長との雑談がきっかけで

警防課での仕事に疲れ果てて「このままこんな感じで働いていくのかな」と意気消沈していた時期に当時の警防課の課長と2人で話す機会がありました。

この課長は民間からの転職組で良い意味で消防士っぽくない雰囲気をお持ちの方でした。
課長との話の中で今後の消防人生についてどう考えているのかを問われました。

「今は正直先が見えません。消防という仕事自体は素晴らしい仕事でやりがいがあるものだと感じています。でも、組織の雰囲気が自分には合っていない気がしていて、向いていないのかなと感じています。」 私は正直に答えました。

すると、課長は「おれもそうだったよ。入った当時は転職だったこともあって、年齢的には若くはなかった。でも、年下の先輩にどやされたりしてな。やりきれない気持ちがあったよ。でも、予防に行ってからは違ったな。」
こうおっしゃられました。

当時は火災や救急・救助といった現場活動が消防の仕事とばかり思っていて、この予防というについてはあまり知りませんでした。

課長曰く、予防の雰囲気は民間企業に近いらしく、消防っぽさはあまりないとのことでした。

さらに、予防は個人事業主の集まりみたいな所だから、日々勉強して実力をつけないと存在意義がなくなってしまうと伝えてくれました。

「〇〇は割と向いてると思うよ。」私のどのあたりを見てそう言ってくれたのかはわかりませんが、私は嬉しくなり、
「以前から予防に興味はありました。」などと調子のいいことを喋っていました。

それから、数か月が経ち人事異動の時期を迎えました。
さすがに、3年目で異動はないかと勘ぐっていました。

すると、警防課の編成表をみても私の名前がありません。恐る恐る予防課の編成表に目を移したら、一番下に自分の名前がありました。

あれだけ、警防課での現場業務に嫌気がさしていたのに、異動を突き付けられると「現場経験わずか2年で日勤ってどうなの」とか「おれは現場をクビになったんだ。」とかネガティブな感情が押し寄せてきて、何とも言えない気持ちになりました。

こんな、ぐちゃぐちゃな感情のまま佇んでいると、課長が近づいてきて、
「予防課の課長に予防をやりたいやる気のある奴がいる。って前言っといたんだよ。がんばれ。」こう言われました。

あの時の雑談がきっかけだったのかと思うと正直驚きました。
でも、課長が向いているといってくれた言葉を信じて前向きにやってみようと決意しました。

予防業務との出会い

予防課に来てまず驚いたのは、決められた自分だけの仕事があるということです。

一般的な会社にいる方には理解できない感覚だと思うのですが、消防の現場対応を行う部署の仕事は誰に代わってもできなければならない仕事です。

当たり前といえば当たり前なのですが、火災や救急事案で「今日は担当の者がいないので、対応できません。」なんてことはありえません。

このような環境下にいたので、自分だけの仕事やノルマがあるといった感覚が新鮮でした。また、自分だけの仕事を貰えて裁量を持って取り組めるということが何より嬉しかったです。

人と同じことを同じようにすることへの違和感
人と同じことが同じようにできない自分への苛立ち

これらの悩みが圧倒的に軽減しました。

また、課長が言っていた民間企業に近い雰囲気というものもすぐに感じました。例えば、警防課では若手職員は毎朝先輩たちのコーヒーを入れて準備しておくといった慣習がありました。
予防課でこれは一切ありませんでした。自分のコーヒーは自分で準備するスタイルです。
こうしたちょっとした違いからでも何となく雰囲気の違いを感じることが出来ました。

そして、この予防課でどういった仕事をすることになったかというと広報活動や防災訓練・イベントの企画運営といった仕事を担当させてもらうことになりました。
ざっくりいうと、人前で喋って防災について伝えることが私の仕事でした。
これが、抜群に楽しかったです。
人に何かを伝えてプラスの価値を与えることが出来ることに心からやりがいを感じました。

この人事異動で職種が変わったことにより、あれだけ悩んでいた消防の仕事への向き合い方が圧倒的に変わりました。

同じ消防の仕事でも「現場の仕事」から「伝える仕事」に畑を変えたことで、仕事への向き合い方が180度変わってしまった。
これから消防士を目指している方、現役消防士で自分の仕事に悩みを抱えている方に伝えたいです。

消防士の仕事は現場活動だけではない。
多様な人材が消防には必要だということ。
咲く場所を変えるだけで消防人生は変わっていくものだということ。

あの日の課長との雑談がきっかけで私の消防人生は変わっていきました。
多分あのまま現場に残っていたら、私は消防士をやめていたと思います。

変わるきっかけを与えてくれた課長には感謝しかありません。

たとえ今再び現場に戻っても、自分には向いていないと割り切るのではなく、自分が予防で得たスキルで何かしら力になれればと考えています。

同一性を求めて、マイノリティを排除するのでなく
何か自分の強味を見つけて、それぞれが個性を発揮することが出来る組織に今後なってほしいですし、自分もその一助となりたいと考えています。







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