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【即興小説・30分】からくり×あり

<企画概要>
・30分の間に即興で、「お題ガチャ~執筆」までして行こうかと思います!
・お題は、ランダムに「単語がちゃ」してくれるサイトを利用してます。
それでは、よ~い、どん!
・30分時点のものをそのまま載せるので、誤字脱字はご容赦ください。(笑)

<お題>
①からくり
②アリ

<小説>
からくりのアリを手に入れた。

これがあれば、会いたい人の場所まで行けるらしい。

家の近くにある妙な雑貨店で手に入れたアリなので、
正直、疑う気持ちもあるけれど、
それしか、もう大好きな「由美ちゃん」に会える手段がなかったのだ。

だって僕は小学校に入学したばかりで、自転車も乗りこなせない。(そもそも自転車を持っちゃいない)

だけど由美ちゃんの引っ越しの先は、「とても遠くのどこか」らしい。

引っ越し先の住所も聞き出せなかった僕が、
由美ちゃんに会いに行くには、この妙なアリを頼るしかない。

手に入れたアリは十匹いて、
それぞれのアリは、僕の子供の手にも乗る大きさだ。

その背中には、小さなぜんまいがついていて、
ぜんまいを回転させると、会いたい人の方に向かって行くという。

僕は早速、家にあるありったけのお菓子をリュックに詰めて、
お気に入りのスニーカーに履き替える。

そして、アリを十匹、家の前の道に放して、ぜんまいを回した。

すると、アリは一斉に歩き出した。

僕はアリについて行く。

アリの向かう先には、由美ちゃんがいるのだ。

由美ちゃんは、お母さんの妹で、
いつもきれいで、いつも優しかった。

お母さんが付き合ってくれないような、
サッカーや鬼ごっこで日が暮れるまで遊んでくれて、
おまけにゲームもとても強い。

ちなみに、僕の「ムカついたときに使う言葉」(つまり、うるせえババア、とか、うんちやろう、とかだ)は全部由美ちゃんから教わった。

一緒にお母さんに叱られたこともあったけれど、
由美ちゃんは僕の憧れそのものだった。

由美ちゃんが引っ越す日は、
僕はいつまでも駄々を捏ねて泣いていた。

そのせいで、由美ちゃんとさよならをすることも出来なかった。

由美ちゃんに会ったら、「戻ってきて」って絶対に言うんだ。

アリはずんずんと道を歩いた。

由美ちゃんと遊んだ公園を通って、

クラスメイトの家を過ぎて、

来たことのない河川敷まで辿り着いた。

知らない土地に来るほどに不安になってきたけれど、
僕はアリについて行く。

途中で、アリが九匹しかいないことに気が付いた。

来た道を振り返ると、アリの一匹が、道に果てていた。

たくさん歩いたせいで、充電が切れてしまったのだ。

ぜんまいを撒き直しても、アリはもううんともすんとも言わなくなってしまった。

進むほどに、アリは一匹ずつ減っていく。

その度に僕は嘆きの声を上げた。

まだ、隣の市にだって辿り着けていない。

だけど、僕の足も疲れでぼろぼろだった。

朝一番で家を出たのに、もう空は夕日に染まっていた。

どうして、由美ちゃんともう会えないのか、僕には分からない。

由美ちゃんの引っ越しの理由を僕は知らない。

それは、きっと僕が子供だからだ。

通り過ぎた散歩中の大型犬に、

思いっきり吠えつけられてびくつき、そして涙が流れてきた。

お腹は空いていて、足は重く疲れて限界だった。

靴を脱げば、靴擦れで皮が剥がれている。

由美ちゃんの行ってしまった場所は、僕にはとても遠い。

隣の市でも、県でも、海外だろうと。

子供の僕の足では歩けないくらい、遠いところ。

そんな場所に由美ちゃんが行ってしまったのだと考えると、涙はもう止まらなかった。

僕はその日、自分のちっぽけさに気が付いた。

十匹のアリを掌に集めて、

ただ早く大人になりたいと、祈るだけだった。

(了)

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